田中靖が語るビハインドゲームでの心構え
3月20日に開幕予定だったプロ野球は、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、開幕が無期延期となった。本来であれば、プロ野球が開幕し、多くのファンが球場で熱戦を楽しんでいたことだろう。取材も自粛となるなか、過去のメモを振り返りつつ、気になったことを書いていきたいと思う。今回はマリーンズの“中継ぎ投手”について。
中継ぎ投手には、ロングリリーフ、ビハインドゲーム、ワンポイント、クローザー、そこに繋ぐセットアッパーなど、様々な役割があり、各々が最善の結果を目指して日々奮闘している。
昨季、リードを許した中での登板機会が多かった田中靖洋は、「まずはストライク先行を意識して、守備のリズムを作れる意識で投げています。球数というよりも、テンポを気にしています」と、ビハインドゲームを投げる上での心構えを語ってくれた。
昨季6月16日の中日戦では2-7の9回から登板し、1イニングをテンポよく12球で片付けると、その裏に打線が爆発。一挙6点を奪いサヨナラ勝ちを収めたということもあった。
昨季後半ロングリリーフを務めた中村稔
2年目の中村稔弥は新人だった昨季、夏場以降は主にロングリリーフの役割を担った。今年の練習試合、オープン戦でも、7試合中5試合が複数イニングの登板となっている。
中村稔はロングリリーフを務めるうえで「テンポよく無失点に抑えることを考えています」と、前述の田中靖同様にテンポを重視している。中村稔は、リリーフとしての心構えなどを、ロングリリーフを中心に昨季自己最多の44試合に登板したチェン・グァンユウに学んでいることも大きいだろう。
中村稔としては先発もロングも、基本的に「気持ちは変わらない」とのこと。ロングリリーフの場合、先発が打ち込まれて早いイニングで降板したときなどに出番がやってくる。当然、相手の攻撃に火がついた状況でマウンドに上ることも多いため、「向こうのペースだったら難しいなということはある」ものの、そういった状況でも流れを呼び込むため、相手打線に立ち向かっていく。
様々な局面で投げる松永
7年連続40試合以上登板し、昨季はチームトップの25ホールドをマークした松永昂大は、勝ちパターンのリリーフで登板することもあれば、左のワンポイント、走者を背負った場面でマウンドにあがり、そのままイニングまたぎをするなど、様々な局面で登板する中継ぎのスペシャリストだ。
その松永を18年に取材したとき、ピンチでマウンドにあがったときは「1球目にストライクをとること。ランナーを返さないこと」を強く意識すると話していた。1球目にストライクをとることについて、「相手バッターを探る意味ではボールよりもストライクで入った方がいい。ただ、初球を打たれるのももったいないので、その辺は難しいです」と語り、主導権を握るための駆け引きに腐心していた。
また、イニング跨ぎの際には「1回スイッチを切っています。中継ぎなので、オンとオフはすぐに入れ替えられる」と語っていた。イニング頭、イニング途中でマウンドにあがっても、精神的な疲労、肉体的な疲労は「どっちも一緒。先発と違って中継ぎは、イニング頭からいっても途中からいっても精神的には変わらない」という。
登板に備えて肩を作りながらも、登板しないケースもある。そういった難しいポジションの中で、チームを勝利に導くため、クローザーにバトンを繋ぐため、リリーフ陣はそれぞれの役割を全うしている。
取材・文=岩下雄太