闘病中の北別府氏は球団最後の20勝投手
現役を引退したプロ野球OBたちが生の声を発信する機会が増え、それがいまでは普通のことになってきたように感じる。「YouTube」「Twitter」「Instagram」など様々な手法があるなかで、広島のレジェンドである北別府学氏は、ブログで情報発信を行っている。
その北別府氏のブログは2011年8月に開設され、今年で10年目に突入した。更新頻度も非常に多く、4月に入ってからもほぼ毎日のように投稿を行っている。すでに公表している白血病の闘病についてだけでなく、家族の近況や野球界のことまで、扱う内容は幅広い。
そんな北別府氏は、1975年のドラフト1位で指名を受け広島に入団。3年目に10勝をマークすると、そこから11年連続で2ケタ勝利を達成している。
1982年の活躍はとくに素晴らしく、チームは59勝58敗13分でセ・リーグ4位と奮わなかったが、チームの3分の1以上の勝ち星となる20勝をマーク。防御率2.43の成績で、沢村賞、最優秀投手、最多勝、ベストナインのタイトルを獲得し、球界を代表する選手として認知された。
この1982年は、北別府にとってのベストシーズンでもある。リーグ最多の267.1回を投げ、WHIP(1回に何人の走者を出すかを表した指標)は「1.00」とキャリア最高の数字だった。
その他にも、タイトルとは関係ないが「11連勝」「7連続完投勝利」「月間5完投勝利」をこの年に記録。これらは現在でも破られていない球団記録でもある。また、この年の北別府氏を最後に、広島から20勝投手は誕生していない。
その後も昭和後期から平成初期の広島を引っ張り、1994年の現役引退までに「213」の白星を積み上げた大エースだった。
佐々岡監督が期待する候補生たち
北別府氏の引退以降、広島における高卒のエースクラスは前田健太(現ツインズ)しか育っていないという実情がある。
黒田博樹氏、野村祐輔、大瀬良大地とチームを支えてきたタイトルホルダーたちは、いずれもドラフトで上位指名された大卒の即戦力選手。現在のローテーション候補を見ても、大瀬良にジョンソン、床田寛樹や野村祐輔、昨年のドラフト1位である森下暢仁も、名前が挙がる日本人投手はいずれも大卒の投手だ。
そんななか、佐々岡真司新監督が目をかけているのが、山口翔や遠藤淳志といった高卒の投手たち。春季キャンプでも期待しているからこその苦言、そして注文が多かった。
山口と遠藤はともに2017年のドラフトで指名されており、今シーズンが高卒3年目となる。北別府氏が初めて2ケタ勝利を記録し、前田が初めて規定投球回に到達したのも高卒3年目だった。
遠藤や山口もキッカケさえつかむことができれば、ブレイクするポテンシャルは十分に秘めている。遠藤はストレートとカーブのコンビネーション、一方の山口は150キロを超えるストレートが大きな武器。磨けば光る素材であることは疑いようのない事実だ。
このふたりが、北別府氏や前田に続く高卒のエース格へ成長することで、先発ローテーションがより強固なものとなり、チームの底上げになることは間違いない。
佐々岡監督が投手コーチ時代から熱心に指導してきた山口と遠藤の飛躍はあるのか――。シーズンの開幕と共に彼らの飛躍にも大きな期待を寄せたいところだ。
▼ 北別府学・プロフィール
ポジション:投手
投 打:右投右打
生年月日:1957年7月12日(62歳)
経歴:都城農高-広島75年・1位)
[通算成績] 515試(3113回) 213勝141敗5S 防御率3.67
[主なタイトル・表彰]
沢村賞2回、最優秀選手1回、ベストナイン2回、ゴールデングラブ賞1回、最優秀投手2回、最多勝2回、最優秀防御率1回、最高勝率3回
★2012年野球殿堂競技者表彰
▼ 前田健太・プロフィール
ポジション:投手
投 打:右投右打
生年月日:1988年4月11日(32歳)
経歴:PL学園高-広島06年・高校1位)
[NPB通算成績] 218試(1509.2回)97勝67敗 防御率2.39
[主なタイトル・表彰]
沢村賞2回、ベストナイン3回、ゴールデングラブ賞5回、最優秀投手1回、最多勝2回、最優秀防御率3回、最多奪三振2回
▼ 山口 翔・プロフィール
ポジション:投手
投 打:右投右打
生年月日:1999年4月28日(20歳)
経歴:熊本工-広島17年・2位)
[通算成績] 9試合(26回) 1勝3敗0セーブ 防御率4.85
▼ 遠藤淳志・プロフィール
ポジション:投手
投 打:右投右打
生年月日:1999年4月8日(21歳)
経歴:霞ヶ浦高-広島17年・2位)
[通算成績] 34試合(42.2回) 1勝1敗1セーブ6ホールド、 防御率3.16