フォーカス・レコードホルダー ~奪三振(シーズン)~
「新型コロナウイルス」の問題で未だ開幕の見通しが立っていないプロ野球。前に進むことができない今こそ、過去の偉大な記録にフォーカスを当てて振り返ってみよう……ということで始まったのがこの企画。
その名の通り、過去の記録にスポットを当て、“歴代No.1”の記録を持っている選手を中心に振り返ろう、というのがテーマ。今回取り上げるのは「シーズン奪三振」。早速だが、NPBの歴代トップ10を見てみよう。
▼ 歴代最高記録・奪三振(シーズン)
2位 353個 稲尾和久 [西鉄/1961]
3位 350個 金田正一 [国鉄/1955]
4位 340個 江夏 豊 [阪神/1970]
5位 336個 杉浦 忠 [南海/1959]
6位 334個 稲尾和久 [西鉄/1958]
7位 327個 梶本隆夫 [阪急/1956]
8位 321個 稲尾和久 [西鉄/1959]
9位 317個 杉浦 忠 [南海/1960]
10位 316個 金田正一 [国鉄/1956]
“記録の作り方”も異次元
史上唯一の年間400奪三振超えを記録した、江夏豊がシーズン奪三振の歴代No.1。1971年・オールスターゲームでの「9連続三振」や、1979年・日本シリーズでの「江夏の21球」といった伝説が有名な左腕だが、記録はプロ2年目の1968年に作ったものだ。
1968年9月17日、相手は宿敵・巨人。江夏はこの試合で、当時のシーズン記録だった稲尾和久の「353奪三振」を更新する。
この日の試合前、新記録となる354個目の三振を、ライバル視していた王貞治から奪うことを公言。ところが、本人の勘違いから、“タイ記録”である353個目の三振を王から奪ってしまう。
すると、これに気が付いた江夏は、なんとその後の打者から“三振を奪わないように注意”をし、「353」のまま次の王の打席へ。ここできっちりと三振を奪い、「354」のシーズン新記録を達成してみせた。今では考えられないようなエピソードである。
ちなみに、江夏は王から生涯で57の三振を奪い、これは誰よりも多い数字。一方、勝負に固執するあまり、通算で20本の本塁打も打たれており、この数も誰よりも多い数字となっている。
この試合の後も三振を山を築き、気が付けばその数を「401」まで伸ばしてシーズン終了。それまでの日本記録を50個近く更新しただけでなく、それから50年以上経った今なお、誰も近寄ることができない大記録を打ち立てた。
▼ 江夏 豊(1968)
49試(329.0回) 25勝12敗 防御率2.13
完投26 完封勝8 無四球3
打者1259 被安打200 被本塁打29
四球97 死球4 奪三振401
暴投2 ボーク0 失点83 自責点78