1年前の今日にプロ初勝利
「(プロ初勝利まで)めちゃくちゃ長かったです。去年(2018年)は7試合投げさせてもらって、同じような負け方をして、悔しかったですけど、今年(19年)は先発1戦目で勝つことができて良かったと思います」。
今から1年前の4月29日。
楽天戦に先発したロッテの種市篤暉が、5回を2失点に抑え、プロ初勝利を挙げた。
この日は立ち上がり、ストレートが150キロを超え、力強いボールを投げていた。特に初回一死走者なしから田中和基に投じた初球のストレート、空振りを奪った2球目の150キロのストレートは素晴らしかった。
「めちゃくちゃ感触が良かったです。あと浅村さんの3球目と、田中さんの1、2球目はできるだけ力を抜いて投げようと思って、トップをつくるまではリラックスしようと思って投げて、いい感じでボールが伸びていったと思います」。
3回まで楽天打線を1安打に抑えていた種市だが、3-0の4回に4連打で2点を失う。「リードした場面だったので、これを逆転されたらダメだなと思って気合いを入れていました。連打されましたけど、そこは粘れたので、今年(2019年)中継ぎで経験があったからかなと思います」と後続を抑えてピンチを脱した。
4-2の5回は一死一、三塁から島内の一ゴロの間に、三塁走者生還かと思われたが、リクエストの結果、一併殺になった。6回以降はチェン・グァンユウ、田中靖洋、益田直也が無失点に抑え、種市はプロ初勝利を手にした。
現状に満足せず高みを目指す
19年1月の自主トレのときに「初勝利もしていないので、何個勝ちたいとか言えるレベルではないです。まずは初勝利をしてそこからだと思っています」と話していた種市。
プロ初勝利後に、「自主トレ中に初勝利をしてそこからだと思っていますと話していましたが、初勝利をあげて見ている世界が変わったとか、壁を超えたとかありますか?」と質問すると、「特にはないですけど、ひとつの目標、通過点だと思うので、今満足してしまったら負けてしまうと思います。去年(18年)みたいになってしまう。日々成長していけるように考えてやっていこうかなと思います」と初勝利に浸ることなく、次の登板を見据えていた。
「勝ちたいというより技術をあげたい。今のままでは、まだまだ勝てないと思います。この前はリリーフ陣が頑張ってくれたおかげ、野手が打ってくれたおかげで勝てたようなもの。たった5回しか投げていないので、投げる体力も技術も考えていかないといけないなと思います」と反省の言葉が並んだ。
種市を取材していると、もっと野球がうまくなりたいという思いがひしひしと伝わってくる。「もっと上手くなりたいですし、もっと勝ちたい。ですけど、現状客観的にみてまだまだだなと思います。前回(19年4月29日)の登板も勝ちましたけど、3、4回はしんどかった。そこは頑張らなきゃいけないなと思います」と冷静に自己分析した。
現状に満足していないところ、常に上を目指す姿勢が種市の良いところ。だからこそ、続く5月6日の日本ハム戦にも白星を手にしたし、その後もシーズン途中にたたきつけるスライダーを投げ始めたり、登板日の試合前の調整を臨機応援に変えるなどして、そのときにあったベストな状態を探し、白星を積み重ねることができたのだろう。
初勝利から1年。当時は先発ローテーション定着を目指す立場だったが、今ではマリーンズの先発には欠かせない存在となった。進化を続ける21歳。1年後、どのような成長曲線を描いているのか今から楽しみでならない。
文=岩下雄太
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※お詫びと訂正(2020年4月29日)
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初出時、種市投手の年齢に誤りがございました。
関係者・読者の皆さまにお詫び申し上げるとともに訂正いたします。
大変申し訳ございません。