▼ “温故知新” BKおススメ野球映画
『ナチュラル』
公開:1984年(アメリカ)
痛快なサクセスストーリー
ベースボールを題材にした痛快なサクセスストーリーだ。タイトルの『ナチュラル』とは、「天から授かった特別な才能」を意味する。
誰もが認める特別な野球の才能に恵まれた主人公ロイ・ハブスがプロの世界を目指すものの、思いがけないアクシデントに遭遇し、若くして夢が閉ざされる。
しかし、自らの信念と地道な努力、周囲の支えにより、35歳にしてメジャーデビューをつかみ取る。さらには万年下位のチームを蘇らせた「奇跡のルーキー」として脚光を浴びると、あっと驚くようなクライマックスシーンを迎える。
ロバート・レッドフォードのはまり役?!
最大の見どころは、何と言っても主人公ロイを演じるロバート・レッドフォードだろう。彼自身も高校時代に投手として将来を嘱望され、野球の特待生としてコロラド大学に進学。ところが若さゆえ飲酒事件を起こして退学し、プロを諦めた苦い実体験を持つ。
その後、俳優を志すものの端役にしかありつけず、長い下積みを経験。『明日に向って撃て!』(1969年)で一躍世界的なスターダムにのし上がったのは33歳の時だった。その生き様はまさに主人公ロイ・ハブスとダブる。
ロバート・レッドフォードは撮影時、すでに40代半ばにさしかかっていたが、20歳の爽やかな青年役を何の違和感もなく演じ、オールドルーキーとしてフィールドにおいても投打にしなやかな動きを見せる。
『スティング』(1973年)、『華麗なるギャツビー』(1974年)など、数多くの名作で主役を張ってきたアメリカを代表する偉大な俳優の成熟した演技は必見だ(現在83歳。2018年8月に俳優活動は引退する旨を公式に発表している)。
随所に見られるこだわり
舞台となる野球場も見逃せない。ニューヨーク郊外のバッファロー市に現存するウォー・メモリアル・スタジアム(現在はアメリカンフットボール専用に改装)を借りきって撮影されており、1930年代当時の雰囲気を見事に再現している。
また、ロイ・ハブスの所属チーム「ニューヨーク・ナイツ」のメンバーオーデションにもこだわった。約1400名もの志願者全員にフィールドプレーを課し、本物の“プレーヤー”だけを選び抜いたという。
当時のファッション、髪型、ユニフォームや着こなし、バットやグラブの細部に至るまで、古き良きベースボールの時代を濃厚に味わうことができる。
躍動感に溢れた視覚映像
ストーリー自体は、アメリカのR指定ないしのいわゆるファリミー映画にありがちな展開であるため、いささか物足りなさを感じるのも否めないが、美しく躍動感に溢れた視覚映像(第57回アカデミー撮影賞候補)が本作のクオリティを常に支えている。
また、アメリカ4大プロスポーツの中で最も古い歴史を持つベースボールがアメリカ国民にとって、永遠に受け継がれる父と子の物語であることをさりげなく伝える仕掛けも心憎い。
監督は『ダイナー』(1982年)でデビューし、『グッドモーニング、ベトナム』(1987年)が世界的にヒット。『レインマン』(1988年)でアカデミー監督賞を受賞したバリー・レヴィンソンである。