ニュース 2020.05.06. 13:30

今こそグラブと向き合おう!用具メーカーの職人さんに「グラブのお手入れ方法」を聞いてみた

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職人さんによるグラブお手入れ術


 緊急事態宣言の延長も発表され、思うように練習もできず、不安な日々を過ごしている皆さんも多いことでしょう。でも、こんな時だからこそ、相棒ともいえる野球道具と向き合う時間があるのではないでしょうか。

 ということで、今回は野球専門メーカー『フィールドフォース』のグラブ工房長を務める篠原智明さんにお話をうかがい、「職人さんが実際に行っているグラブお手入れ術」を紹介していただきました。

 再びグラウンドで思い切りプレーできるその日まで、あなたとグラブの向き合い方の参考にしていただければ幸いです。


協力:株式会社フィールドフォース


相手は“生き物”。お手入れは一歩目で決まる!?


 スタートからいきなり大げさな…と、思った方も多いかと思います。しかし、お手入れの仕方次第では、かえってグラブの劣化を早めてしまう可能性もあるそうです。

 みなさんご存知の通り、基本的に野球のグラブは動物の皮を加工した革製品。「革自体も毛穴で呼吸をしています。よく捕球面に見られる黒ずんだ汚れというのは、毛穴を塞いじゃってる状態。毛穴を塞いでしまうと乾燥しやすくなるので、グラブの劣化につながります」と篠原さんは指摘します。

 もし砂埃が付着した状態のままオイルを塗ってしまえば、自ら“油汚れ”を作り出し、毛穴を塞いでしまっているようなもの。ということで、最初にやるべきはクリーニング。「スキンケアをするのと同様」に、まずは革表面の汚れを落とし、毛穴の呼吸を確保することから始めます。

【グラブ磨きの工程】
1.ブラッシング(汚れ落とし)
2.クリーニング(汚れ落とし)
3.オイル塗布 (油分補給)
4.ブラッシング(磨き上げ)
5.保管


家庭にあるアレも活躍


 今回、グラブ職人の篠原さんがお手入れに使用したのは、『豚毛ブラシ』『馬毛ブラシ』『汚れ落とし用レザーローション』『スポンジ』『汚れ落とし用ブラシ』『ムートンパワー』(左記はいずれもフィールドフォース社製品)、そして『乾いた布』。



 まずは、汚れが隠れがちな紐の結び目を全てほどいて、やや固めの毛質の『豚毛ブラシ』でブラッシング。革に乗っているホコリなどを除去します。

 次に、『レザーローション』と『汚れ落とし用ブラシ』を用いて、付着した汚れを浮かせて、乾いた布で拭き取る。これでグラブを“スッピン状態”にリセット。「表面の汚れを除いた状態にしてからオイルを塗っていかないと、革に油分は浸透していきません。次の工程のためにも、最初のクリーニングというのは重要になってきます」。


▼ 職人の一言メモ「歯ブラシと爪楊枝が便利」

手が届きづらい箇所には、使い古した「歯ブラシ」と「爪楊枝」が便利。ヘッドが小さい歯ブラシは指の間などのブラッシングに、爪楊枝はハミダシ部分につまった油汚れの除去に最適のアイテムです。革を傷つけないよう、爪楊枝は先をつぶしてから使いましょう。

▼ 職人の一言メモ「内袋も忘れずに」
実際に手を入れる「内袋」は、ひび割れしやすいデリケートゾーン。汗汚れが革の劣化原因になるので、「捕球面」や「背面」同様にクリーニングを忘れずに!


オイルは素手で塗る!そのメリットは…


 クリーニングが終われば、約10分の乾燥タイムを経て、オイル補給に突入。ここで篠原さんは、右手の人差し指と中指で固形オイルにタッチ。その理由とは……。

 「私は基本的に素手でオイルを塗ります。そのメリットのひとつが、取り過ぎないこと。指先の体温でオイルが溶けるので、少量で広範囲に伸ばしやすくなるんです」。



 その手付きは“オイルを手に取る”というより、“指で触れる”といった表現のほうが近いかもしれません。手にとった少量のオイルを指を擦り合わせて伸ばし、少しずつグラブ全体に供給していきます。

 また、乾燥で傷みやすい紐など、細かい部分にアプローチできるのも素手でオイルを塗るメリットのひとつ。「レース(紐)の裏側もしっかり手入れしてあげる」など、ほんの少しの気配りで、紐の寿命も伸びるそうです。


▼ 職人の一言メモ「接触が多い部分は乾燥注意」
捕球面の親指の付け根、ウェブ(網部分)の内側などはボールとの摩擦が多く乾燥しやすい部分です。少しだけ気を遣ってオイルを補給してあげましょう。手首周りや指を出す方は人差し指の部分など、皮膚との接触が多い部分も同様です。


“仕上げ後”もグラブにとっては大事な時間




 グラブ全体にオイルが補給できたら、最後は仕上げのブラッシング。

 ここでは、冒頭のクリーニングで使用した『豚毛ブラシ』よりも軟らかい『馬毛ブラシ』を使用。このブラッシングでグラブ表面のオイルが馴染み、革の表面にツヤが生まれる。その後、さらに毛先が細く軟らかいムートンで全体を磨き上げれば、お手入れ完了です。


 また、グラブにとっては、“お手入れ後”の保管方法も重要なポイントになるとのこと。使用する頻度が少なく、おうち時間が増えるこの時期でも、「袋に入れっぱなし」の状態は好ましくないそうです。

 「革自身も呼吸をしているので、外の空気を吸わせてあげれば、自分で湿気を吐いてくれます。風通しの良い日陰にて、自然な形(手の甲が上を向く)で保管していただければ型崩れもしません」。

 グラウンドで実際に使うその瞬間まで、保管方法も含めて“グラブのお手入れ”ということです。

 「グラブは手を守ってくれるものであり、自分の相棒になる存在です。細かくお手入れすることで、プレー中にグラブが応えてくれる瞬間があると思います。家にいる時間が多いこの時期は、相棒と向き合うのに最高の時間。またグラウンドでプレーを再開するときを楽しみに待ちながら、グラブのお手入れをしていただければと思います」。


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