オリックスのT-岡田 (C) Kyodo News

◆ 「5」月「5」日

 5月5日はこどもの日──。例年通りプロ野球が開幕していれば、この時期はシーズンの真っ只中で、各球団はお子さまファンに向けた様々な企画を考えていたことだろう。テレビで普段から見ていても、投手が投げるボールのスピードや、それを打ち返していく打者のパワーは生で見てこそ。しかし、2020年は残念ながらそれが叶わなかった。

 野球界で「5ならび」といえば、どうしても”ゴジラ”を思い浮かべる方が多いのではないか。日本が世界に誇るスラッガー・松井秀喜。男が1993年のプロ入りから、海の向こうに渡っても2011年まで背負い続けたのが「55」だった。

 以降、日本球界では巨人に限らず各球団で期待の大砲候補にその番号を与えることが増えたように思う。高校球界でも、左打ちで恵まれた体格の強打者は「(地名)のゴジラ」と呼ばれることが定番化し、多くの”ご当地ゴジラ”が誕生した。

 ということで、ここではプロ野球界で松井秀喜の後に「ゴジラ」の異名を受け継いだ選手たちにスポットを当ててみたい。今回は、松井と同じ左の大砲として大きな注目を集めた“浪速のゴジラ”について…。
 

◆ 若くして掴んだタイトル

 2005年の秋、ドラフトの時期に注目を集めた「浪速四天王」を覚えているファンの方はいるだろうか…。

 辻内崇伸(大阪桐蔭→巨人)・平田良介(大阪桐蔭→中日)・鶴直人(近大附→阪神)・岡田貴弘(履正社→オリックス)という4人。いずれも高校生ドラフトで1位指名を受けてプロ入りを果たしている。

 岡田は履正社の主砲として高校通算55本塁打を記録した左の大砲。この「55」という数字に恵まれた体格、スイングスピードから本塁打を量産する姿が合わされば、“ゴジラ”の愛称が用いられるのはごく自然なこと。ドラフト時には「浪速のゴジラ」として大きな注目を集め、オリックスもその期待に応えるように背番号「55」を用意して迎え入れた。

 1年目から一軍でプロ初安打をマークするも、その後2年間は故障もあって一軍出場ゼロ。それでも、2009年にアレックス・カブレラの故障離脱を受けて一軍に昇格すると、打率こそ.158も43試合の出場で7本塁打をマーク。そのパワーを一軍の舞台でも発揮して見せる。

 ブレイクの気配が漂うなか、転機となったのがそのオフの出来事。新たに監督に就任した岡田彰布氏から“同姓かぶり”を指摘され、登録名の変更案が浮上。10月に球団がファンにアンケートを行い、約7000通の応募の中から「T-岡田」というネーミングが採用される。ちなみに、“T”は貴弘(たかひろ)の頭文字であり、ティラノサウルスの別名:T-Rexも由来に含まれていて、肉食獣のごとく相手を食らい尽くすような力強い打撃に期待がかかった。

 迎えた2010年、開幕スタメンに名を連ねると、交流戦期間に故障で一時戦列を離れたものの、すぐに復帰を果たすとそこから打棒が大爆発。交流戦で打率.313・6本塁打・26打点を記録した活躍ぶりが評価されてMVPに輝くと、オールスターゲームにも4番打者として出場。

 その後も勢いは衰えることなく、7月は月間打率.333・9本塁打・21打点で月間MVPを受賞。終わってみれば129試合の出場で打率.284・33本塁打・96打点という大活躍を見せ、本塁打王のタイトルも獲得。「22歳で本塁打王」は、あの王貞治氏以来で48年ぶりの快挙だった。

◆ ファンの期待に応えたい…

 本当に“ゴジラの再来”か──。若くしてブレイクした大砲には、球界を背負って立つ主砲として大きな期待がかかったが、ブレイク以降は自らとの戦いが続く。

 2010年の33本塁打をピークに、翌年は16、さらに10、2013年には4まで低迷。しっくり来るフォームを模索する日々のなか、故障との戦いも強いられる厳しい期間となる。

 チームが優勝争いを演じた2014年には24本塁打、2017年には7年ぶりとなる30発超えの31本塁打を記録するものの、それを継続することができない。昨季は極度の不振に苦しみ、一軍出場はわずか20。本塁打もわずか1本に終わった。

 プロ生活14年、フリーエージェントというひとつの岐路に立った2019年オフだったが、男は自身の復活を待つファンの期待に応えるべく、権利の行使はしないことを決断。大幅な減俸を受け入れ、チームに留まることを決意する。

 それだけでなく、オフには若手に混じってプエルトリコで行われたウインターリーグにも参戦。なんとか復活を糸口を掴むべく、異国の地でもがき、ひたすらバットを振った。

 迎えたプロ15年目の春、オープン戦では12試合に出場して打率.296・3本塁打を記録。OPSは1.017と、持ち味である打撃で良いアピールを見せることができていた。

 待ってくれているファンのために、今年こそ復活を──。“浪速のゴジラ”の逆襲に期待がかかる。

◆ T-岡田・プロフィール
ポジション:外野手
投打:左投左打
身長/体重:187センチ/100キロ
生年月日:1988年2月9日
経歴:履正社高-オリックス(05年・高D1)
[昨季成績] 20試 率.120(50-6) 本1 点2
[通算成績] 1088試 率.261(3832-1002) 本170 点583

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