プロ初打席、初球本塁打
今から7年前の2013年5月12日。ロッテの加藤翔平が同日の楽天戦で、プロ初打席、初球本塁打を放った。
同日に一軍昇格を果たし、『7番・ライト』でスタメン出場すると、3回のプロ初打席、楽天の先発・永井怜が投じた初球の124キロの変化球を振り抜くと、打球はマリーンズファンの待つライトスタンドに吸い込まれた。加藤は第2打席、第4打席に内野安打を放ち、猛打賞と最高のデビューを飾った。
さらにフレッシュオールスターでは、本塁打を含む3安打2打点の活躍を見せMVPを獲得。この年ファームでは、打率イースタン・リーグ4位の.324をマーク。西武とのクライマックス・シリーズでも、初打席初本塁打という離れ業を見せた。
毎年レギュラーと期待されるも…
2年目以降は毎年のようにレギュラー獲得を期待されながら、定位置確保に至っていない。ここ数年はファームでは圧倒的な成績を残し、一軍でもレギュラーを奪いそうな活躍を見せるときが何度もあった。
18年のシーズン終盤の取材で「自分の中で迷ってしまった部分があるので、去年(17年)良かった部分を色々とやってきたことであったり、毎日続けてきたこと、色んな引き出しを空けてみても全部空っぽだったというか、何をやってもマッチしてくるものが全然なかった。例えばそれがマッチしたとしても、短期間で終わったりの繰り返しだった。まだ残りの試合がありますけど、ここまではひどいもんだなという感じです」とおだやかな口調で話していたが、言葉からは自身への怒りが伝わってきた。
結果を残すべく、オフの取り組みを変えた。18年までは鈴木大地、柿沼友哉らと合同自主トレを行なっていたが、19年シーズンに向けた自主トレからは、自分でやることが明確にあったため、ロッテ浦和球場やZOZOマリンスタジアムを中心に一人で課題に向き合った。
春季キャンプ初日に行われた紅白戦でチーム唯一のマルチ安打を放つと、オープン戦でも打率.406(32-13)と好調を維持。シーズンが開幕してからも、3月29日の楽天との開幕戦では『2番・右翼』で先発出場し、「昨年9月に二軍落ちしてから約半年長かったなという思いと、半年間待った一軍の舞台だった。1打席目で結果を残せたのはよかった」と初打席でライトスタンドへ飛び込む第1号ソロを放った。
3月31日の楽天戦から4月11日のオリックス戦にかけて9試合連続安打を放つなど、4月11日が終了時点で、打率. 打率.356(45-16)、4本塁打、5打点と今度こそレギュラー定着するかと思われた。
「早めに仕上げたというのもありますし、自主トレを1人でやったことは間違いではなかったと思います」。
「開幕直後に打てていたというのも、たまたまであのバッティングはできないと思います。ただそこを自分のなかで継続できなかった。もちろんいろんな怪我をした部分もありますし、みんな怪我を抱えているので、言い訳にはできない」。
「結局は活躍する、しないのも全部自分の責任。そこは自分の力不足だと思います」。
19年は開幕から好調を維持も、故障も重なり、本来の力を発揮できず、終わってみれば前年を下回る60試合の出場にとどまった。打率も.202と成績自体は納得のいくものではなかったが、開幕までに取り組んできた準備が春先の好結果に繋がったことは間違いない。「オープン戦、開幕直後は良かった。そこに関しての持っていき方は間違っていなかったと思うので、大きく変える必要はないです。ただ、意識の問題を含めて変えなきゃいけない部分は変えなきゃいけないかなと思います」。課題がわかったうえで、オフシーズンに入った。
今季に向けて一人で1月は自主トレ
今季に向けた1月の自主トレも、一人で行った。昨年の自主トレでは、体幹が弱ってくると打撃フォームから全て崩れることから例年以上に体幹トレーニングに取り組んでいたが、「去年は結構多めにやりましたけど、体幹を固めすぎて、シーズン中に脇腹の肉離れとかもおこしていた。固めたうえで、柔軟性を出さなきゃいけないと思う。今年は体幹をやるだけではなく、そのあとの柔軟性のことも多めにはやってはいます。シーズン通してやろうと思います」と昨年の反省を活かしトレーニングを積んだ。
1月の自主トレ中には今季に向けて「1年間のトータルで考えないといけない年齢にはなっている。開幕だけとか1ヶ月くらいしか良い状態が続いていなかったので、そこをやるためには、オフシーズンもそうですけど、キャンプとかそこからの振り込みが大事」と意気込んでいた。
春季キャンプは一軍スタートを切ったが、『右肩のコンディション不良』のため、キャンプ途中から二軍でリハビリを行った。3月に入ってからファームの春季教育リーグに出場したが、3月15日以降の練習試合には出場していない。
外野手は福田秀平、荻野貴司、マーティン、角中勝也、清田育宏、岡大海、藤原恭大などライバルが多い激戦区。昨年は自主トレから取り組んできたことが春先に結果として現れている。心技体を充実させ、いかにシーズン通して安定感を継続できるかーー。
いつ開花してもおかしくない状態が何年も続いている。加藤は今年プロ8年目の29歳。プロ野球の歴史を振り返れば、30代から花を咲かせた選手は何人もいる。枠を争うライバルは増えたが、今季こそ安定したパフォーマンスを披露し、大ブレイクしたいところだ。
文=岩下雄太