「任せていただいたところで投げたい」
西武のドラフト2位ルーキー・浜屋将太投手(21)は14日、ライオンズトレーニングセンターで自主練習を敢行。平良海馬らとともにキャッチボールやウエイトなどをこなし、汗を流した。
鹿児島の樟南高から社会人・三菱日立パワーシステムズを経て、昨秋のドラフト会議で西武から2位指名を受けた左腕。プロ1年目は“開幕見合わせ”という思いもよらなかった状況が続いているが、この期間に「ウエイトによる上半身と下半身の強化」を目標に掲げ、自身の課題と向き合っている。
まだ見えぬルーキーイヤーについては、「任せていただいたところで投げたい」とフル回転を誓う一方、「小さい時から、先発がかっこいいなと。やっぱり目立ちますからね」と、先発へのこだわりも少しだけ垣間見せつつ笑った。
「感情がない」男が涙
ふだんはこうした笑顔もよく見せるが、マウンドに登るとその表情は一変する。
高校時代も、それから社会人時代にも、「お前は感情がないよな」と同僚からよく言われていたという浜屋。どんな状況に置いても表情を崩さず、ポーカーフェイスで乗り切るのが特徴的なスタイルだ。
しかし、そんな男にも、あまりの悔しさから涙を流した試合があった。
高校3年夏の鹿児島大会。樟南高の“Wエース”の一角として活躍していた浜屋は、準決勝で13回を一人で投げ抜く完投勝利。約200球を投げ込む熱投でチームを決勝へと導く。
さらに翌日の決勝戦でも、6回からマウンドに登ると15回までの10イニングスを投げ切り、試合は決着つかず再試合へ。それから中1日で迎えた再戦、先発としてマウンドに登った浜屋だったが、3-2と1点リードして迎えた5回に一死満塁のピンチを作り、そこで降板。腰の痛みが原因だった。
「降板してから、悔しくて泣きましたね。本当に最後まで投げたかった」
それでも、その後は仲間たちが浜屋の頑張りを受け継いで見事にチームは優勝。しかし、浜屋本人は痛めた腰の状態のこともあって応援してくれたスタンドへ挨拶することも叶わず、今でも悔しい気持ちだけが残っているのだと言う。
「最後まで投げたい」──。
こうした苦い経験があったからこそ、“先発への憧れ”というところが胸の内のどこかにあるのかもしれない。
憧れの先輩から学ぶ
そんな経験も経て、念願のプロ入りを果たした男。奇しくも西武には、小学校時代に憧れた投手が3人もいるのだと言う。
「榎田さんは小学校時代からの憧れ。僕が所属していたソフトボールのスポーツ少年団にゲストでノッカーをしてくれたこともありました。内海さん、松坂さんには完投のイメージ。これから色々お話を聞きたいです」
トレーニングに励んできた成果もあって、この自主練習期間で体重が74キロから76キロに増量。ベンチプレスやスクワットを重点的に行い、上半身・下半身を鍛えている。
当初は社会人時代との“ボールの違い”から戸惑ったこともあったと言うが、キャンプ中に握りなどを修正。武器であるスライダーは「右打者にもしっかり投げ切りたい」と自信を深めている。
思えば9年前、同じように社会人からドラフト2位で入団した牧田和久は1年目からフル回転でチームを支え、新人王に輝く活躍を見せた。
浜屋も続くことができるか…。内なる闘志をメラメラと燃やす、レオの“小さな左腕”に大きな期待がかかる。