中日・荒木雅博コーチ

◆ 中日・荒木コーチと「五右衛門風呂」

 40代以上の方には、一家言あるかもしれない。鉄釜の下から火をたき、板の上に足を踏み入れ、かがむようにして入る「五右衛門風呂」──。盗賊の石川五右衛門が、釜ゆでの刑に処せられたのがきっかけと言われているとか。

 「うちの婆ちゃん家が、五右衛門風呂だった。実家から歩いて5分ぐらいだから、今思えば、家に帰って風呂に入ればいいじゃんね(笑)」

 話の主は中日・荒木雅博内野守備走塁コーチ。実家は熊本県中部に位置する菊陽町。農業が盛んで、2016年の熊本地震では被害も受けた。

 現在42歳の荒木コーチの幼少期、つまり1980年前後は五右衛門風呂が存在していたとことになる。
 
 30代の記者は樹脂でできた、いわゆるユニットバスしか知らない。五右衛門風呂の話を聞いてパッと「夜空がきれいかな」と想像した。

 だが、そんな安易な考えは鼻で笑われる。「それ、危ないから!!気をつけて、ゆっくり入るんだよ。熱い鉄にもたれかかったら背中がどうなっちゃうのよ(笑)」。

 おっしゃる通りです…。景色を堪能するのが目的ではない。小さな子どもは大人に抱きかかえられ浸かるという。

◆ 荒木コーチが心待ちにしているもの

 よもやま話は荒木コーチの導入部分。ここから、話は野球に変わっていく。

 「まず、物事を知ること。経験してみたら考え方が変わる。そしたら、新しいこともできる。今、どれだけの選手が『新型コロナウイルスによる休止中だからできること』をやっているのかな」

 中日の練習は1勤1休。球団施設を利用した練習は数時間に限られる。

 状態維持に主眼を置くのもひとつ、情報収集して初体験の取り組みを始めるのもひとつ。荒木コーチが心待ちにしているのは、コロナ禍を乗り越えた先。「休止期間が、プレーが変わるきっかけになりました」というコメントなのだとか。

 「ずっと、こうでもない、ああでもない、と思っていた。結局『オレ、頑張ってるかも』って思うタイミングはなかったもん」

 きっかけは与えられるものではなく、自分でつくるもの。そのきっかけの一つは、若かりしころのスイッチヒッター挑戦だという。

 「誰のアドバイスでも聞いた。俺のプライドは『誰の話でも聞く』ってことだったんだ」

 福留孝介、原俊介を外した末のドラフト1位入団も、そこから5年間で15安打。1998年からの3年間は、スイッチヒッターに挑戦している。

 多くのコーチ、OBをはじめチームメートからもアドバイスを受けた。ときには「誰の話でも聞きやがって。プライドはないのかよ」という、耳にしたくない声も入ってきた。そのとき「スイッチヒッターが将来、役に立つはず。『誰の話でも聞くのがプライド』と自分に言い聞かせていた」のだとか。

 2018年の引退まで、通算2045安打。左打席でのヒットはしっかり刻まれている。たった2本、されど2本…。両打ちで得た感覚や知恵は、再びきた右打者専念で役立ったのだ。

 荒木コーチは、農業に従事し100キロ以上の荷物を背負う足腰の強い高齢者を見て育った。天候に左右されながら、毎年、農作物を収穫するたくましい大人たちは身近にいた。地元・菊陽町は今、地震被害から立ち直ろうとしている。

 幼少期の実体験で感覚的に身についていた。それは、置かれた状況を受け入れ、情報を精査、理解し、与えられた時間を使うことだ。

 プロ野球は新型コロナウイルス感染拡大の影響でストップしている。ただ、いつか開幕する。そのとき、プレーヤーはどんなコメントを出すのか。荒木コーチとともに注視していようと思う。

文=川本光憲(中日スポーツ・ドラゴンズ担当)


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