球春は突然に──
「新型コロナウイルス」の問題により、シーズン開幕の見合わせ状態が続いているプロ野球界。依然として具体的な開幕日については公表されていないものの、トンネルの出口は着実に近づきつつある。
感染拡大のペースも徐々に緩やかとなり、緊急事態宣言の解除も全国的に進んでいるなか、日本プロ野球の各球団は22日の12球団代表者会議を経て、改めて「6月中旬以降の開幕を目指す」という指針を確認。NPBの斉藤惇コミッショナーも、具体的な日程については「緊急事態宣言の解除が最低限の条件」としつつ、「解除されれば、できるだけ早い段階でスケジュール等々を皆さま方にお知らせできるのではないかと思っております」と、今後の進展に期待を寄せた。
「6月中旬以降」という言葉を素直に信じるとすると、もうすでに開幕まで1カ月を切っている可能性もある。ふだんのカレンダーに置き換えれば、各球団が段々とキャンプ地から離れ、日本のいたるところでオープン戦が本格化してくる3月の頭くらいになるだろうか…。
いよいよ近づきつつある開幕の日に向けて、ここでは各球団の「開幕投手」に再び注目。監督が発表していた、もしくは開幕投手に内定したことが何らかの形で報じられた投手の“ここまで”を振り返ってみたい。
今回は、昨季パ・リーグ5位の日本ハムを取り上げる。
エースとして迎える2020年
昨季は6月に一時は首位に立ったものの、夏場の失速で5位に終わった日本ハム。“ショートスターター制”を試すなど、特に投手陣のやりくりで苦しむシーンが多々見られたが、その中で自身初の最多勝を獲得したのが有原航平だった。
2014年のドラフト会議では4球団が1位で競合した逸材。1年目に新人王に輝き、2年目には自身初の2ケタ・10勝と順調なステップを見せながら、近年はやや物足りなさも感じさせていたなか、昨季は出だしの3・4月で4勝、防御率0.51という圧巻の成績を残して月間MVPに輝くと、安定した投球を維持して自己最多の15勝をマーク。自身初のタイトルも獲得して、新たなエースとして存在感を発揮した。
オフの契約更改交渉では、2020年オフのMLB挑戦も直訴。2020年は継続して活躍ができるかというところはもちろん、メジャーリーグを見据えたうえでより“数字”が求められるシーズンとなる。
キャンプ中の『2月21日・午後2時21分21秒』、栗山英樹監督が今季の開幕投手を有原に託すことを発表。「選択肢は航平しかなかった。大きなプレッシャーをかけても乗り越えてくれる」と全幅の信頼を寄せており、本人も「結果で恩返ししたい」と力強くコメント。なお、発表日時の『21』という数字には、1982年に20勝を挙げて最多勝や最高勝率のタイトルに輝いた「工藤幹夫投手以来の20勝達成、そしてその数字を超える圧倒的な活躍をしてもらいたい」という栗山監督の思いが込められているという。
その後のオープン戦でも4試合に登板し、13回1/3を投げて防御率2.70とまずまずの成績。それから開幕が延期となり、調整も難しくなっているところではあるが、指揮官の中では有原が最有力であることに変わりはないようだ。
信頼してくれる監督や、育ててくれたチームへの恩返し。そして何より、自身の未来を切り拓いていくために。2020年は有原航平の真価が問われるシーズンとなる。
▼ 日本ハム・ここ10シーズンの開幕投手
2010年(●)ダルビッシュ有[26試 12勝 8敗 防1.78]
2011年(●)ダルビッシュ有[28試 18勝 6敗 防1.44]
2012年(○)斎藤佑樹[19試 5勝 8敗 防3.98]
2013年(-)武田 勝[22試 8勝 7敗 防3.91]
2014年(-)吉川光夫[13試 3勝 4敗 防4.88]
2015年(○)大谷翔平[22試 15勝 5敗 防2.24]
2016年(●)大谷翔平[21試 10勝 4敗 防1.86]
2017年(●)有原航平[25試 10勝13敗 防4.74]
2018年(●)ロドリゲス[9試 3勝 2敗 防5.26]
2019年(-)上沢直之[11試 5勝 3敗 防3.15]
2020年(予想)有原航平【3年ぶり2度目】
有原航平
ポジション:投手
投打:右投右打
身長/体重:189センチ/95キロ
生年月日:1992年8月11日
経歴:広陵高-早大-日本ハム
[昨季成績] 24試(164.1回) 15勝8敗 奪三161 防2.46
[通算成績] 109試(703.1回) 52勝41敗 奪三520 防3.79