紅白“3連戦”で存在感
オリックスは5月25日~27日にかけて、3日連続の紅白戦を実施。6月2日からはじまる対外試合に向けて、選手たちが久々の実戦に臨んだ。
注目の大物助っ人アダム・ジョーンズや、開幕投手候補に挙がる山岡泰輔・山本由伸のWエースによる投げ合いなどなど……。様々なトピックスがあったこの3日間の中で、特に印象に残る活躍を見せた選手をえらぶとしたら、2年目の頓宮裕真(とんぐう・ゆうま)になるだろう。
25日に行われた初戦では、紅組の「6番・捕手」として先発出場。第1打席は粘った末の四球で出塁すると、二死二塁のチャンスで迎えた第2打席では、K-鈴木からレフトへ弾き返す適時打を放つ。
守っても4人の投手を巧みにリードし、吉田正尚やジョーンズといった主力の並んだ白組打線をシャットアウト。自ら叩き出した1点を守り抜き、1-0の勝利に大きく貢献した。
また、1日空けて27日の試合でも「5番・捕手」としてスタメン出場すると、第1打席で荒西祐大の変化球にうまく対応。あわや本塁打というレフトオーバーの2点適時二塁打を放ち、出場2試合連続の打点をマーク。
第2打席で死球を受けたシーンはヒヤッとしたが、その後も出場を続けて第4打席で安打を放って見せるなど、状態の良さをアピールしている。
「ユーマー」に開花の兆し…?
岡山理大付高から亜細亜大を経て、2018年のドラフト2位でオリックスに入団。182センチ・103キロという恵まれた体格から繰り出すパワーを武器に、大学日本代表では4番を任されるなど、右の大砲候補として大きな期待をもって迎え入れられた。
その期待は背番号にも現れていて、「44」といえば、前身球団のレジェンド助っ人であるブーマー・ウェルズが背負っていたもの。新入団発表では、自ら名前をモジって「ユーマーと呼ばれるように頑張りたい」と言ってのけるなど、強心臓ぶりも発揮している。
迎えたプロ1年目、オープン戦で全17試合に出場して打率.259・2本塁打と奮闘を見せると、日本ハムとの開幕戦に「5番・三塁」でスタメン出場。クリーンナップの一角として開幕スタメンを飾って見せ、さらにそのプロ初打席で上沢直之からプロ初安打となる2点適時打をマーク。一気にプロ初打点まで記録するなど、鮮烈なデビューを飾った。
しかし、その後は当たりが続かず、5月には二軍へ降格。その後は一軍と二軍を行ったり来たりの状況が続いた中、6月に右足の舟状骨を疲労骨折して戦線離脱。1年目は悔しい形で終えている。
決意の捕手転向
一軍と二軍を行ったり来たりの状況が続いていた頃、男はある決心をしていた。大学時代までの本職だった、捕手への挑戦──。
プロではチーム事情から内野手、主に三塁でプレーをしてきたが、慣れないポジションに対する不安が持ち味である打撃にも影響。中途半端なまま進めたくないという想い、そして悔いのない野球人生にしたいという強い意志から、プロでも捕手として戦っていくことを首脳陣に直訴したのだと言う。
コンバートが認められた矢先の故障離脱となってしまったが、10月に行われた社会人チームとの練習試合で実戦復帰を果たすと、同時に捕手としての実戦デビューも。以降も失われた時間を取り戻すようにみっちりと捕手の練習をこなし、契約更改の場では「捕手一本」で勝負していくことを改めて宣言した。
迎えた今春は、正捕手である若月健矢の故障もあって、オープン戦の途中からはスタメンマスクの回数が増加。3月10日の中日戦では、今やチームのエースへと成長を遂げた幼馴染・山本由伸とバッテリーを組むなど、多くの経験を積むことができた。
オープン戦でも9試合で打率.308・1本塁打の成績を残しているように、捕手に回ってもその打棒は健在。やはり“打てる捕手”というのは大きな武器であり、頓宮がその資質を秘めた選手であることは間違いない。
ケガから戻ってきた若月をはじめ、ライバルとの争いは決して楽ではないが、この状態を維持していれば必ずチャンスはある。捕手として“プロ1年目”の戦いに挑む、2年目のユーマーに注目だ。
文=尾崎直也
▼ 頓宮裕真・プロフィール
ポジション:捕手
投打:右投右打
身長/体重:182センチ/103キロ
生年月日:1996年11月17日
経歴:岡山理大付高-亜大-オリックス
[昨季成績] 28試 率.198(91-18) 本3 点10