3年連続6度目の大役へ
新型コロナウイルスの問題により、シーズン開幕の見合わせが続いていた2020年のプロ野球。本来の開幕から3カ月以上が経ち、ようやく今季の開幕日が「6月19日」と決定した。
満足に練習をすることも許されなかった自粛期間を経て、各球団で全体練習や紅白戦なども続々とスタート。6月2日からは対外試合も解禁となり、急ピッチで開幕に向けた準備が進められていく。
開幕まで3週間を切っている中、ここに来て「開幕投手」の大役に関する話題も徐々に増えてきた。セ・リーグ連覇を目指す巨人では、原辰徳監督が“明言”こそしなかったものの、「1人しかいないよ」という形で“公言”。エース・菅野智之にすべてを託すことが濃厚だ。
2012年のドラフト1位で入団したプロ8年目の右腕は、このままいくと3年連続6度目という大役になる。昨季はチーム2位の11勝を挙げた一方、腰痛からくるコンディション不良により満足なシーズンを送ることができず、プロ7年目にして初めて規定投球回に届かなかった。防御率もキャリアワーストの3.89とらしくない数字となっており、今季は復活を期す一年となる。
回数は2位、勝利数は1位に…?
すっかり“巨人のエース”というイメージが馴染んだ背番号18であるが、「6度目の大役」となると、長い球団史においてどの程度の位置づけになるのだろうか。今回は巨人の「開幕投手の回数」について調べてみた。結果は以下の通り。
【1位:7回】
・上原浩治(2000~2006)
[成績] 2勝3敗
【2位:6回】
・堀内恒夫(1972~1973・1975~1978)
[成績] 3勝2敗
・斎藤雅樹(1990・1993~1997)
[成績] 4勝1敗
【4位:5回】
・菅野智之(2014~2016・2018~)
[成績] 3勝2敗
【5位:4回】
・沢村栄治(1936夏・秋、1937春・秋)
[成績] 2勝1敗
・須田 博(1938春、1940~1941・1943)
[成績] 2勝2敗
※1度目・2度目の当時の登録名は「スタルヒン」
・別所毅彦(1951・1953・1955~1956)
[成績] 4勝0敗
・金田正一(1965~1966・1968~1969)
[成績] 1勝2敗
・江川 卓(1980・1982・1984・1986)
[成績] 2勝1敗
・西本 聖(1981・1983・1985・1987)
[成績] 3勝0敗
2020年開幕直前時点で、菅野は歴代3位にランクイン。このままアクシデントなく予定通りに「6.19」を迎えれば、堀内恒夫氏と斎藤雅樹氏に並ぶ2位タイに浮上することになる。最多も上原浩治氏の7回となっていて、順調にいけばここ数年のうちに歴代トップに並び、そして超えて行くことも可能だろう。
また、勝ち星という点で見ても、最多は斎藤雅樹氏と別所毅彦氏の「4勝」というところ。菅野はこれまでに3勝を挙げており、今季の開幕戦で白星を挙げることができれば、巨人の“開幕戦最多勝記録”に並ぶこととなる。2014年から2016年の3連勝の後、2018年~昨年は連敗を喫しているものの、この流れを断ち切ってトップに浮上することができるだろうか。
仕上がりも良好!
不本意なシーズンを経て、新フォームを試しながら戦ったオープン戦は4試合・17イニングの投球で防御率1.59と好投。復活に向けた手ごたえを示しつつ、調整が難しい自粛期間も、ブルペンに入るたびに「今すぐ開幕しても大丈夫」といった評判が聞こえてきた。
菅野のことを最もよく知る相棒・小林誠司も、「いつ開幕してもいいような球の質、角度で驚きました」と太鼓判を押したように、今季はここまでかなり強い意気込みで仕上げてきたことがうかがい知れる。ここに来て「6.19」という明確な目標もでき、調整はよりしやすくなったことだろう。ここからさらに状態を上げて、開幕の日を迎えてもらいたいところだ。
2020年の開幕戦で復活への第一歩を踏み出し、2021年の開幕戦で球団最多『7度目の大役』を球団最多の『開幕戦5勝目』で飾る。そんなシナリオを描くことができれば、「菅野智之=巨人のエース」として、その名をより深く・濃く刻むことになるだろう。
全幅の信頼という形で背中を押してくれる指揮官の想いも背に、まずは2020年の1勝目を…。6月19日の開幕戦で巨人の背番号18がどんな姿を見せるのか、その一挙手一投足から目が離せない。
▼ 菅野智之・プロフィール
ポジション:投手
投打:右投右打
身長/体重:186センチ/92キロ
生年月日:1989年10月11日
経歴:東海大相模高-東海大-巨人
[昨季成績] 22試(136.1回) 11勝6敗 奪三120 防3.89
[通算成績] 176試(1222.2回) 87勝47敗 奪三1083 防2.36
文=尾崎直也