連戦が続き、首脳陣は投手起用に頭悩ませる
6月2日に再開された練習試合もほぼ終了し、プロ野球ペナントレースの開幕まで1週間を切っている。
今シーズンはコロナ禍の影響で120試合制となっており、6連戦が続く異例の日程。ベンチ入りの人数が25人から26人となり、ひとり増えたとはいえ、首脳陣は選手のやりくりに頭を悩ますことになるだろう。
なかでも投手の起用法は難しい。開幕2カード目から6連戦が続くことで、中継ぎ陣の負担が例年よりも大きくなることはあきらか。負担を少しでも減らすため、先発投手には1イニングでも長く投げてもらいたいところ。計算できる先発投手をどれだけ揃えられるかも、シーズンを制するうえでのひとつの鍵となりそうだ。
そんななか、楽天の先発投手陣が好調だ。開幕投手に指名されているエースの則本昂大、クローザーから先発へと配置転換された松井裕樹がそれぞれ順調な仕上がり。また、昨シーズン大きく飛躍した石橋良太や左腕の塩見貴洋らも結果を残している。
さらには腰の張りで出遅れていた岸孝之も6月11日に戦列に復帰。岸は開幕ローテーションからは外れるようだが、完全復帰まであとわずか。その他にも、弓削隼人、辛島航といった左腕も実戦を重ねて調整を続けている。
そんな中、ひときわ状態の良さをうかがわせているのが、オフシーズンにロッテから金銭トレードで加入した涌井秀章だ。
3球団での最多勝獲得なれば、前人未到の記録
涌井は練習試合再開後の2試合目となる6月3日のDeNA戦で、3回を投げパーフェクトピッチングと圧巻の投球を披露。中6日で迎えた6月10日の西武戦でも、4回無失点、被安打2、与四球2と上々のピッチング内容だった。
西武戦での登板後には、「チームの優勝に貢献しつつ、自分の成績も求めていきたい」と自身が結果を残したうえで優勝へ貢献することを誓っている。これで開幕ローテーションは当確となり、開幕2カード目で初先発を迎えることになりそうだ。
近年、大型補強を敢行している楽天が優勝を目指すうえで涌井の力は欠かせない。涌井は昨年こそ不振もあり規定投球回に到達しなかったが、これまでに規定投球回到達が実に11回となっており、その安定感は球界屈指。例年以上に先発投手のイニング数が重要となるシーズンで、その抜群のスタミナが重宝されることになるはずだ。
もちろん涌井には実力も伴っている。これまで7度の2桁勝利を記録し、最多勝を3度(07年、09年、15年)獲得していることがその証でもある。
ちなみに、最多勝を涌井より多い4度以上獲得している投手は、スタルヒン(6度)、斎藤雅樹(5度)、稲尾和久(4度)、野茂英雄(4度)とたったの4人しか存在しない。いずれも野球殿堂入りを果たしているレジェンドたちだ。
また、涌井は西武とロッテの2球団で最多勝を獲得しているが、プロ野球史上3球団での同タイトル獲得者はひとりもいない。楽天では、史上初の快挙を目指すことになる。
再開した練習試合の好投でここ数年の不安を払拭した涌井は、自身の言葉どおり、「チームの優勝」と「自身の成績」を追い求めていく。