話題のアスリートの隠された物語を探る「スポーツアナザーストーリー」。今回は、巨人の開幕3連勝を陰で支えた、ジャイアンツ中継ぎ陣にまつわるエピソードを取り上げる。
ようやく、待ちに待っていたときがやって来ました。6月19日、本来の日程から3ヵ月遅れで開幕したプロ野球。無観客とはいえ、こうしてまた試合が楽しめるようになったことは本当に嬉しく、調整が難しいなか、素晴らしいプレーを見せてくれた選手の皆さん、そして開催を実現させた関係スタッフの努力には感謝の一言です。
19日からの3日間で、6カード・18試合が行われましたが、12球団で唯一、開幕3連勝を飾ったのが巨人です。阪神を相手に、投げては菅野・田口・サンチェスと、先発投手が全員勝利。開幕3連戦で先発が3連勝したのは、1998年、桑田・ガルベス・斎藤雅樹以来、実に22年ぶりのことでした。
打っては、4番・岡本が第3戦で逆転2ランを放つなど、3連戦で10打数5安打、打率.500と大当たり。また「7番・右翼」で下位打線に座った新外国人・パーラも9打数5安打、打率.556、6打点、2試合連続で本塁打を放ち、チーム3冠の大活躍。「シャークダンス」も披露するなどチームを大いに盛り上げました。
原監督は第3戦終了後、「本当にいいスタートを切った。1人1人が(自分の)役割のなかでやってくれた」とコメントしましたが、この3連戦の原采配で見逃せなかったのは、中継ぎ投手の起用法です。
新たに発表された日程は過密スケジュールのため、NPBは今シーズン限りの特例として、1軍登録枠を昨年(2019年)までの29人から31人に拡大。これに伴い、原監督はリリーフ投手を昨年の8人から1人増やし、沢村、鍵谷、古川、中川、藤岡、ビエイラ、高木、宮国+抑えのデラロサの9人体制で開幕に臨みました。
昨シーズンの勝ち頭・山口俊のメジャー移籍で、菅野以外は確実に計算できるピッチャーがおらず、先発陣にいま1つ不安が残る今シーズン。となると、どうしても中継ぎの占める比重は高くなります。原監督としても、この3連戦でリリーフ陣の調子を見極めたいところでしたが、申し分のない好投を見せてくれました。
開幕戦は、菅野が7回2失点で降板後、8回を中川→9回をデラロサが無失点で締めて勝利。第2戦は、田口が5回1失点で降板→6回沢村→7回はビエイラと高木→8回鍵谷→9回藤岡と、再び無失点で逃げ切り勝ち。第3戦も、6回、2死満塁のピンチを高木がしのぐと、7回以降は沢村・中川・宮国が1イニングずつ抑え、またしても無失点リレー。3試合で古川以外の8人が登板し、全員が無失点と最高の結果を残したのです。
特にいい働きをしたのが、ともに第2戦・第3戦と連投した高木京介と沢村拓一です。左腕の高木は第2戦、3-1とリードした7回、2死満塁のピンチでマウンドへ。バッターは虎の新主砲・ボーアで、長打が出れば逆転という痺れる場面でした。
高木は緊張からか、初球こそスッポ抜けのボールを投げてしまいますが、2球目・3球目とカットボールを外角いっぱいに決めると、4球目はほぼ同じコースに147キロの真っ直ぐを投げ、見逃し三振。みごとピンチを脱しました。ボーアの様子から「変化球を待っているな」と見抜き、裏をかいた捕手・炭谷のリードもさすがでしたが、要求通りのコースにしっかり決めてみせた高木の制球力も光りました。
続く第3戦は6回、2死満塁のピンチに登板。バッターは再びボーアでした。7-1とリードしているとはいえ、一発を食らえばたちまち2点差。反撃の芽を摘み取り、勝利を確実にしたい場面でしたが、高木は124キロのチェンジアップでセカンドゴロに打ち取り、ボーアと阪神ベンチに大きなダメージを与えました。「緊張しました。気持ちで行きました」と語った高木。これぞ、左の中継ぎに求められる仕事です。
一方、沢村は第2戦、6回に2番手で登板。大山・上本・原口を3者凡退に打ち取り、第3戦も7回に3番手で登場。これがまた圧巻のピッチングでした。まずは先頭の木浪を154キロの真っ直ぐで空振り三振。続く代打・北條は153キロの直球でファールフライに仕留め、梅野も155キロの直球で詰まらせ、サードフライ。150キロ台連発の真っ直ぐに加え、最速152キロの超高速スプリットも威力抜群で、2試合連続パーフェクトリリーフを演じてみせたのです。
沢村といえば、制球難から四球を連発して自滅することが多々あり、一時は「ピッチャー・沢村」がコールされると、ファンからブーイングが起こったほどです。それが今シーズンは制球も安定し、見違えるようなピッチングを披露。試合後のコメントも、昨年までとは違っていました。
「(先発の)サンチェスと京介(=高木)がいい投球をしてくれていたので、僕も続こうとマウンドに上がりました。開幕3連戦は今シーズンを左右する大切な試合、ここを3連勝できるかできないかで、チームとして勢いが変わって来ると思う。準備をしっかりしていたし、求められた場面でしっかり抑えることができてよかった」
高木も沢村も、グラウンド外での不祥事があり、そこから立ち直って開幕1軍への切符をつかんだピッチャーです。野球ができることの有り難さを誰よりも噛みしめている2人が、自分の役割に徹し、まさに「フォア・ザ・チーム」の働きをしてくれた。その姿を見ていたナインも、何か感じるところがあったはずです。この3連戦で、選手たちが見せた一体感……それこそが、原監督にとっていちばんの収穫だったのではないでしょうか。
ようやく、待ちに待っていたときがやって来ました。6月19日、本来の日程から3ヵ月遅れで開幕したプロ野球。無観客とはいえ、こうしてまた試合が楽しめるようになったことは本当に嬉しく、調整が難しいなか、素晴らしいプレーを見せてくれた選手の皆さん、そして開催を実現させた関係スタッフの努力には感謝の一言です。
19日からの3日間で、6カード・18試合が行われましたが、12球団で唯一、開幕3連勝を飾ったのが巨人です。阪神を相手に、投げては菅野・田口・サンチェスと、先発投手が全員勝利。開幕3連戦で先発が3連勝したのは、1998年、桑田・ガルベス・斎藤雅樹以来、実に22年ぶりのことでした。
打っては、4番・岡本が第3戦で逆転2ランを放つなど、3連戦で10打数5安打、打率.500と大当たり。また「7番・右翼」で下位打線に座った新外国人・パーラも9打数5安打、打率.556、6打点、2試合連続で本塁打を放ち、チーム3冠の大活躍。「シャークダンス」も披露するなどチームを大いに盛り上げました。
原監督は第3戦終了後、「本当にいいスタートを切った。1人1人が(自分の)役割のなかでやってくれた」とコメントしましたが、この3連戦の原采配で見逃せなかったのは、中継ぎ投手の起用法です。
新たに発表された日程は過密スケジュールのため、NPBは今シーズン限りの特例として、1軍登録枠を昨年(2019年)までの29人から31人に拡大。これに伴い、原監督はリリーフ投手を昨年の8人から1人増やし、沢村、鍵谷、古川、中川、藤岡、ビエイラ、高木、宮国+抑えのデラロサの9人体制で開幕に臨みました。
昨シーズンの勝ち頭・山口俊のメジャー移籍で、菅野以外は確実に計算できるピッチャーがおらず、先発陣にいま1つ不安が残る今シーズン。となると、どうしても中継ぎの占める比重は高くなります。原監督としても、この3連戦でリリーフ陣の調子を見極めたいところでしたが、申し分のない好投を見せてくれました。
開幕戦は、菅野が7回2失点で降板後、8回を中川→9回をデラロサが無失点で締めて勝利。第2戦は、田口が5回1失点で降板→6回沢村→7回はビエイラと高木→8回鍵谷→9回藤岡と、再び無失点で逃げ切り勝ち。第3戦も、6回、2死満塁のピンチを高木がしのぐと、7回以降は沢村・中川・宮国が1イニングずつ抑え、またしても無失点リレー。3試合で古川以外の8人が登板し、全員が無失点と最高の結果を残したのです。
特にいい働きをしたのが、ともに第2戦・第3戦と連投した高木京介と沢村拓一です。左腕の高木は第2戦、3-1とリードした7回、2死満塁のピンチでマウンドへ。バッターは虎の新主砲・ボーアで、長打が出れば逆転という痺れる場面でした。
高木は緊張からか、初球こそスッポ抜けのボールを投げてしまいますが、2球目・3球目とカットボールを外角いっぱいに決めると、4球目はほぼ同じコースに147キロの真っ直ぐを投げ、見逃し三振。みごとピンチを脱しました。ボーアの様子から「変化球を待っているな」と見抜き、裏をかいた捕手・炭谷のリードもさすがでしたが、要求通りのコースにしっかり決めてみせた高木の制球力も光りました。
続く第3戦は6回、2死満塁のピンチに登板。バッターは再びボーアでした。7-1とリードしているとはいえ、一発を食らえばたちまち2点差。反撃の芽を摘み取り、勝利を確実にしたい場面でしたが、高木は124キロのチェンジアップでセカンドゴロに打ち取り、ボーアと阪神ベンチに大きなダメージを与えました。「緊張しました。気持ちで行きました」と語った高木。これぞ、左の中継ぎに求められる仕事です。
一方、沢村は第2戦、6回に2番手で登板。大山・上本・原口を3者凡退に打ち取り、第3戦も7回に3番手で登場。これがまた圧巻のピッチングでした。まずは先頭の木浪を154キロの真っ直ぐで空振り三振。続く代打・北條は153キロの直球でファールフライに仕留め、梅野も155キロの直球で詰まらせ、サードフライ。150キロ台連発の真っ直ぐに加え、最速152キロの超高速スプリットも威力抜群で、2試合連続パーフェクトリリーフを演じてみせたのです。
沢村といえば、制球難から四球を連発して自滅することが多々あり、一時は「ピッチャー・沢村」がコールされると、ファンからブーイングが起こったほどです。それが今シーズンは制球も安定し、見違えるようなピッチングを披露。試合後のコメントも、昨年までとは違っていました。
「(先発の)サンチェスと京介(=高木)がいい投球をしてくれていたので、僕も続こうとマウンドに上がりました。開幕3連戦は今シーズンを左右する大切な試合、ここを3連勝できるかできないかで、チームとして勢いが変わって来ると思う。準備をしっかりしていたし、求められた場面でしっかり抑えることができてよかった」
高木も沢村も、グラウンド外での不祥事があり、そこから立ち直って開幕1軍への切符をつかんだピッチャーです。野球ができることの有り難さを誰よりも噛みしめている2人が、自分の役割に徹し、まさに「フォア・ザ・チーム」の働きをしてくれた。その姿を見ていたナインも、何か感じるところがあったはずです。この3連戦で、選手たちが見せた一体感……それこそが、原監督にとっていちばんの収穫だったのではないでしょうか。