不安の開幕
ロッテの種市篤暉は今季ここまで6試合に先発して、全ての登板でクオリティ・スタート(6回3自責点以内)を達成し、3勝1敗、防御率2.20という成績を残している。いまやマリーンズの先発陣に欠かすことのできない投手だ。
そんな種市ではあるが、1月の自主トレ中は不安を抱えていた。
「去年よりだいぶ考え方も技術も体も、いい感じにきている」と話してはいたが、「去年の今頃(1月)は仕上がっていて、ワクワク感もあり、感覚も良かった。今年はこういう投げ方をしたいのに、イメージしているボールがいかない。焦りはあります」と自主トレ中に教わった投球フォームを、頭で思い描きつつも、自身が思っている体の動きができず悩んでいた。
春季キャンプの序盤も、「感覚的にはあっていないですし、完成には程遠いですけど、4回目(のブルペン)で一番良かった。まだまだ練習を続けていって、自分の感覚をモノにしていきたい」と納得のいくボールを投げられずにいた。
2月の紅白戦、練習試合ではやや打ち込まれる試合もあったが、3月のオープン戦ではしっかりと立て直し、さすがの修正力を見せていた。また新型コロナウイルス感染拡大の影響で、プロ野球の開幕が3月20日から6月19日と変更となったなかでも、6月の練習試合では3試合、10イニングを投げて3失点に抑えた。
種市本人は開幕に向けて「オープン戦でも特別良い成績でもなかったので、そんなにワクワクした気持ちというのはなかったかなと思います。準備期間も短かったですし、ちょっとやばいなぁといった感じで入りました」と決して万全な状態ではなかったという。
4年目でプロ初完封
しっかりと自身の課題を見つめ、修正していくのが種市篤暉だ。シーズンが開幕してからは「ストレート、変化球に関しても、試合ごとに良くなっている感覚はある。そこはいいことじゃないかなと思います。状態的には徐々に上がってきています」と登板を重ねるごとに、自身の感覚が良くなっているようだ。
前回登板の7月25日の西武戦では、9回を136球、4安打、10奪三振の好投で、4年目でプロ初完封勝利を挙げた。
種市に昨年4月29日の楽天戦でプロ初勝利を挙げた際、「プロ初勝利を達成したときに見える世界や、壁を超えたとかありますか?」と質問したときに「特にはないですけど、ひとつの目標、通過点だと思うので、今満足してしまったら負けてしまうと思う。去年(2018年)みたいになってしまう。日々成長していけるように考えてやっていこうかなと思います」と初勝利の余韻に浸ることなく、次の登板を見据えていた。
プロ初完封勝利をし、再び初勝利を挙げたときと同じ質問をぶつけると、「9回のマウンドに上がったのは、おそらく高校時代もなかったと思うので、そこの部分に関して自信にはなりました」と話したが、「特に完封して何かが変わったということはないかなと思います。完封したからには、毎試合長いイニングは投げないといけない」と現状に満足することなく、高い向上心を持つ種市らしい頼もしい答えが返ってきた。
プロ初完封勝利から1週間——。17時から行われる楽天戦の先発に登板する。前回7月4日の対戦では6回を3失点に抑えたが、結果は敗戦投手。自身3連勝中の種市は、今夜もチームに勝利をもたらし、本拠地・ZOZOマリン、そして自宅から応援する熱いマリーンズファンに勝利を届けてもらいたい。
文=岩下雄太