2020.08.15 18:00 | ||||
横浜DeNAベイスターズ | 0 | 終了 | 9 | 東京ヤクルトスワローズ |
横浜 |
史上82人目のノーノー達成
最後の打者、DeNAの代打・乙坂を空振り三振に切って取ると、クールなライアンの顔がほころんだ。ヤクルトの小川泰弘が、プロ野球史上82人目93度目のノーヒットノーラン達成だ。女房役の西田と抱き合うと、駆け寄ったチームメイトから祝福のウォーターシャワーをかけられた。
チームは5連敗中。「今日で絶対止めたいという思いがあった」という小川は、強気に攻めていく投球を忘れなかった。9回135球の熱投を演じたエースは、5回ぐらいから大記録を意識していたという。「バッターひとりひとりに集中できていた。ストライク先行で攻められて良かった」と、最後まで気持ちを切らさずに投げ込んだ。
最終回までキレのある直球に加え、フォークやチェンジアップなどの変化球も冴え、コースにきっちり集めた。7回を終えた時点で味方打線が9点を援護してくれたが「気持ち的には変わらずに投げられた。それがいい結果につながった」と話した。
記録達成まであとアウト6つとなった8回にピンチが訪れる。先頭の倉本に四球を与え、続く中井を遊ゴロに打ち取り併殺打と思われたが、二塁手の広岡大志が捕球ミス。無死一、二塁となった。それでも後続の3人を打ち取って、窮地を脱した。
大記録を掴み取り「まだ実感としてわかないですけど、これからのピッチングにいい影響があると思う」と語った右腕。昨季は5勝12敗という成績に終わり、力を発揮できずに苦しんだ。初めての経験は、小川の野球人生において欠かせない1ページとして刻まれた。
高津監督「満足できるゲーム」
先発投手陣が苦しい中、エースの快投は現在借金を抱えるチームに明るい光を照らした。高津臣吾監督は、小川の大記録に「7回を抑えてあと2イニング(アウト)6つぐらいのとき、今日の調子ならやってもおかしくないなとは思いました。高さの制球もすごく良かったですし、真っすぐにも力があった」と、振り返った。
上位争いから離脱しないためにも価値ある1勝。連敗を「5」で止めた指揮官は「この連敗を止めるには、打線が爆発するかピッチャーが完封するか、と思っていた。打線のつながりと小川の頑張りが、連敗を止めた大きな要因。満足できるゲームだった」と手放しで喜んだ。
ヒーローインタビューで「今日のピッチングをいいきっかけとして、チームとしても乗っていきたい」と語った小川。背番号29と共に、チームは上昇気流に乗る。
文=別府勉(べっぷ・つとむ)