「野球とは楽しいもの」
20日に辞任が発表されたオリックス・西村徳文前監督に代わり、21日からチームの指揮を執ることになった中嶋聡監督代行。
就任即日、18時からは西武との試合が控えている中、監督代行が試合前に囲み取材に応じた。
中嶋聡監督代行・囲み取材全文
きのうの二軍の試合後に、
電話で『ちょっと覚悟しておけよ』と。
── 聞いた瞬間、どんな思いに?
正直、無理だと思いました(笑)
── 福良GMからはどんな説明が?
立て直す意味を込めて、
新しくやりたいので、
そこに力を貸してくれ、ということで。
── 長い付き合いの福良さんから頼まれて心が動いた?
どうですかねぇ…。
不安しかないですけど。
── 昨晩はいろいろなことを考えて寝つけなかった?
寝つけないことはないんですけど、
何から始めていいのか?
何処が問題なのか?
その全てをいきなり1日で把握するのは無理なので。
今、二軍でやって来たこと、
自分の知ってる戦力すべてを把握して、
もう1回組み合わせたいなとは思っていました。
── 二軍の指揮を執りながら、一軍はどの様に映っていた?
言い難い部分はたくさんあるんですけど、
まだまだ自分の本来の力を出していない選手が多いな
という印象でした。
── きのうは「まだやるべきことはある」「こんなままで終わるチームじゃない」というコメントも。今年は得点力に苦労されてますが、その点については?
そこは凄く苦労している部分だと思うんですけど、
AJ(アダム・ジョーンズ)であったり、
アデルリン・ロドリゲスであったり、
今は調子を落としてますけども、
最初の頃のように、
普通に機能したら得点力は上がると思っているので。
まだまだホントに
数字だけ上げられる選手で言ったら
ナンボでもいると思います。
本来、勝負強いバッターなんで。
出してくれたらなと思います。
── 投手陣も山岡投手を欠いて苦しいところですが…?
山岡がいないというのは、
長いこと1カ月ぐらいですかね。
(時間が)経っているので、
その間に出て来た選手もいるでしょうし、
それもすべて引っくるめて、
上がって来てくれることを期待します。
── 後半戦、巻き返しのキーマンは?
いや、もう全員です!
もちろん全員でやりますし、
二軍にもまだまだ選手がいますし、
それを全部、自分では分かってるつもりなんで、
ホントに良い選手を使っていきたいと思います。
── 二軍は首位争い中、活きの良い若い選手が抜擢されると期待してもいい?
若い選手を使いたい
という気持ちはもちろんあるんですけど、
今いる選手が、しっかりとした壁になって、
それを超えたら使いたいと思います。
ただ若いというだけでは、
力がつきませんので。
チャンスはもちろん与えますけど、
それを超えてこないのであれば、
また違うと思うので。
今、調子が良いという選手を上げて、
使ったときにこの選手を超えたと思ったら
レギュラーになるでしょうし、
まだまだだと思ったら、
またファームに行くべきだと思います。
── こういう成績で就任して、勝利と育成のバランスが難しい?
いや、そこに挑戦していくのが我々の仕事なので、
どっちも獲りにいきたいと思います。
来年のことは、僕は分からないですけど(笑)
先に繋がるようにやりたいです。
── 期待が高まっているファンにメッセージをお願いします。
あまり僕に期待しない方がいいと思います。
期待するのは選手にして欲しいなと思います!
── GMが「チームを明るくして欲しい」とか「雰囲気を良くしてもらいたい」と。
どうですかね。
どうやったら明るくなるかも分からないし。
ただ、楽しいものなので。野球というものは。
今年に限って言ったら、
長いこと開幕を待って、
やれた時は自分たちも感動したぐらい嬉しかった。
その嬉しさをそのまま出して欲しいなと。
それを出してこそだと思うんですよ。
もちろん、負けていてそれをしていたら
「何をしてるんや」
と言われると思うんですけど、
それプラス勝ったらもっと喜べると思うので。
どうにかそっちに繋げたいなと思います。
── 力を出し切ってない選手が出し切るためには…?
それはですね、正直なところ、
ちゃんとしたコミュニケーションや
準備期間が全くないので、
どういう考え方で打席に立ったのか?とか、
どういう考えでボールを投げたのか?とか、
そういうことは対話で出来ると思うんですよね。
良いアドバイスが出来たらいいかなと。
あまり難しく考えなくて、
シンプルにアドバイス出来たらいいなと思います。
去年で言ったら、
若月健矢と吉田正尚以外は、
みんなファームに来ていたので、
全く喋ったことがないというわけではない。
そういう中で、
試合の時のコミュニケーションは
これからしか出来ないので、
いい風になれればいいですね。
“原点回帰”のキッカケになるか
約8分間に渡って行われた囲み取材。中嶋監督代行の口からは、近年の監督にはないような発言がいくつも飛び出した。
昨年から古巣・オリックスに二軍監督として復帰。チームが低迷していることもあり、ほとんどの選手を監督目線で見てきた、というのは最大の強みだろう。
選手に対しても、「どんな考えで?」と話を聞いていくことで、コーチ陣とともに選手に寄り添いながら、一緒に課題を克服するために考えていくというのが信条。それがファームの明るさを呼んでいるとも言われているだけに、一軍の選手がどこまで応えられるのか、という部分がポイントになるはずだ。
「野球は楽しいもの」──。
新指揮官が口にした言葉、今のチームにはこれが一番欠けていたように思う。原点に立ち戻れた時、オリックスは勝利と育成の両方を掴み執るだろう。
取材・文=どら増田