今季2勝目
楽天へFA移籍した鈴木大地選手の人的補償でマリーンズに加わったロッテの小野郁投手は、早くもシーズン自己最多となる25試合に登板している。
「ここまで様々な場面で登板させてもらって色々な経験ができたことで、最近はだんだん自分のやりたい事や考えていることをイメージしながら投げられるようになってきているのかなと思います」。
9月8日の日本ハム戦では、1-2の5回からマウンドに上がり、先頭の平沼翔太を148キロのストレートで見逃し三振、続く近藤健介に四球を与えたが、中田翔を遊併殺打に仕留めて1回を無失点に抑えた。その裏、マーティンが逆転の2点タイムリーを放ち、小野は今季2勝目を手にしている。
勝利の方程式である唐川侑己、ハーマン、益田直也、さらには6回の1イニングを無失点に抑えた新加入の澤村拓一の働きも大きかったが、小野が5回の1イニングをきっちりと無失点に抑えたことが、逆転劇を呼び込んだ。ここ最近は、勝利の方程式の3人に負けないくらいの安定した投球が光っている。
開幕一軍を掴む
「オープン戦からしっかり結果を出してアピールしていくだけ。とにかく結果を残してやっていきたい」、「しっかり抑えてアピールしていきたい。球とかそういうのではなく、抑えられるんだというのはやっていきたい」。
今季のキャンプ、“結果”にこだわった小野は、開幕一軍の切符を掴もうと必死に腕を振った。2・3月の練習試合、オープン戦で結果を残したが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で開幕は延期となった。
6月2日から開幕前までに行われた練習試合でも、2日の日本ハム戦から11日の中日戦にかけて4試合連続で無失点に抑える好投。6月14日の西武戦で1点を失ったものの、6月の練習試合の期間は5試合・5回1/3を投げて、5被安打、7奪三振、1与四球、自責点1、防御率1.69という成績を残し、開幕一軍の切符を掴んだ。
8月以降は投球が安定
開幕してからは、一度も一軍登録を抹消されることなく、投げ続けている。6月24日のオリックス戦でプロ初ホールドを記録し、同26日のオリックス戦ではプロ初勝利を挙げた。
7月12日の西武戦では、2回をパーフェクトリリーフ。特に5回無死走者なしから山川穂高に対し、3ボールから、148キロのストレートと129キロのスライダーで2ストライクトライクとし、135キロのスライダーで空振り三振に仕留めた投球は素晴らしかった。ここまではビハインドゲームでの登板がメインだが、8日の日本ハム戦のように負けている試合を壊さないことがチームの白星へとつながってくる。
小野は「経験させてもらっていることで、配球も自分なりに考えるようになりました」と、昨季から成長した部分を分析する。7月29日の楽天戦から8月23日のソフトバンク戦にかけて7試合連続無失点を記録し、現在も8月30日のオリックス戦から4試合連続で無失点に抑えるなど、8月以降は11試合に登板して、9回2/3を投げ、1勝0敗1ホールド、防御率1.86と安定している。
8月以前と比べて顕著な変化を見せているのが、四球の数だ。7月終了時点で14試合に登板して10与四球だったが、8月以降は11試合の登板で与四球が3つと減少。小野は「試合前の練習後に特訓を毎日行うようになったからかなと思います」と多くを語ることはなかったが、四球減少の要因があることを示唆した。
松本球団本部長は、昨年12月の小野の入団会見で「楽天にもし来季いたとしても、一番いい年になるんじゃないかなと思っています。本人にはプレッシャーになるかもしれないですけど、球団として期待してきていただいたというところです」と話していたが、小野は球団の期待にしっかりと応えていると言っていいだろう。
春季キャンプ中に掲げた「優勝するときに自分も一軍の優勝に立ち会えるように、しっかり結果を残して一軍でフル活動したい」という目標を達成するため、今日も万全を期し、いつ訪れるかもわからない自らの出番を待っている。
▼ 小野郁の成績
シーズン:25試 2勝2敗3H 振20 四死13 防3.70
7月末 :14試 1勝2敗2H 振10 四死10 防4.91
8月以降:11試 1勝0敗1H 振10 四死3 防1.86
文=岩下雄太