初回に3点を失うも8回3失点
2位・マリーンズは3-3の10回に加藤翔平の2点適時打で勝ち越し、このリードを澤村拓一が守りきり日本ハムに勝利した。首位・ソフトバンクが楽天に敗れたため、ゲーム差を再び「1.5」に縮めた。日本ハムとの3連戦に同一カード3連敗を避けるとともに、13日から始まった8連戦を4勝4敗で終えた。
この日の勝利の立役者は決勝打を放った加藤だが、8回を3失点に抑えた美馬学の投球も大きかった。
美馬は初回、ボールが真ん中近辺に集まり、西川遥輝に適時打、王柏融に犠飛を打たれるなど3点を失う苦しい立ち上がり。1回だけで26球を要したが、ここから立て直すのが“経験”のあるベテランだ。
8番・清水優心から始まる2回を簡単に三者凡退に抑えると、徐々に美馬本来の粘りの投球を取り戻した。3回と4回はランナーを出しながらも“0”に抑えると、打線も0-3の6回に佐藤都志也の2ランで1点差に迫る。
美馬は、さらにギアが上がった。6回は先頭の3番・近藤健介を三直、4番・西川を空振り三振、5番・渡邉諒を遊ゴロに打ち取ると、7回もきっちりと3人で終えた。7回を投げ終えた時点で100球に到達したが、8回もマウンドにあがる。8回一死走者なしから大田泰示にライト前に運ばれたが、後続をしっかりと封じた。
初回に失点、球数を投げても、2回以降は少ない球数で試合を作る。美馬が先発の役目を果たしていなければ、9回の同点劇、さらには10回の勝ち越し打も生まれていなかっただろう。
美馬が先発した試合は7月28日以降負けなし
美馬に勝利こそつかなかったが、先発した試合チームは、7月28日の楽天戦から7勝1分。チームが大きな連敗をする確率が低くなり、勝っていれば連勝が伸びる。ソフトバンクと首位争いができているのも、美馬の存在も要因のひとつといえそうだ。
7月28日の楽天戦は4回1/3を投げ6失点だったが、8月4日のオリックス戦以降の7試合全てで5イニング以上を投げ、そのうち6試合は6イニング以上を投げた。失点しながらも、失点したイニング以外は少ない球数で打者を打ち取っていることが多いため、長いイニングを投げリリーフ陣を休ますこともできている。防御率は「4.50」だが、数字以上に安定している印象だ。
昨季マリーンズは規定投球回に到達した投手がおらず、シーズン通してローテーションを守れた投手がいなかった。さらにシーズンが開幕してからも先発陣に故障者が出ていることを考えると、美馬の加入、そして働きは非常に大きい。また、大きな期待を受けFAで入団し、プレッシャーがかかるなか、しっかりと“結果”で応えているのもさすがだ。
「しっかりローテーションを守り、貯金を作り、そして日本一になって、井口監督を胴上げすることを目標に頑張りたいと思います」。昨年12月の入団会見でこう決意を述べていた美馬。目標を実現するためにも、残りの試合もチームに数多くの勝利をもたらして欲しい。
▼ 7月28日の登板以降美馬が先発した試合のチームの成績
7月28日vs楽天(○13-12)
- 4回1/3 94球 安10 振4 四死1 自責6
8月4日vsオリックス(△5-5)
- 6回1/3 99球 安8 振5 四死1 自責4
8月11日vs日本ハム(○3-1)
○ 5回 114球 安6 振4 四死2 自責1
8月18日vsソフトバンク(○6-4)
○ 8回 99球 安5 振6 四死0 自責2
8月25日vs楽天(○8-4)
○ 6回 103球 安8 振4 四死2 自責4
9月5日vsソフトバンク(○5-4)
○ 7回 100球 安7 振6 四死1 自責3
9月13日vsオリックス(○9-2)
○ 7回 98球 安8 振7 四死0 自責2
9月20日vs日本ハム(○5-3)
- 8回 114球 安7 振6 四死1 自責3
文=岩下雄太