4年ぶりにCS出場
8-2の9回二死走者なしから守護神・益田直也が、金子侑司を捕邪飛に打ち取り、ロッテは2016年以来4年ぶりにクライマックスシリーズ進出を決めた。
4年ぶりにCS進出を決めたマリーンズだが、この4年間は苦しいシーズンが続いた。16年オフに当時主砲だったデスパイネがソフトバンクへ移籍し、17年は開幕から投打ともに奮わず黒星が先行し、54勝87敗2分の最下位。
井口資仁監督が就任した18年は、前半戦を40勝38敗2分の3位で折り返したが、オールスター明けは19勝43敗1分と大きく負け越した。2年連続80敗を喫したが、中村奨吾、井上晴哉がレギュラーに定着するなど6人の選手が規定打席に到達。投手陣ではオールスター明けから岩下大輝、種市篤暉が経験を積むなど若い選手が出現した。
井口監督2年目の昨季は、前半戦に種市、二木康太、岩下といった若手が先発陣を引っ張り、後半戦からは小島が先発ローテーションに定着。種市はチームトップタイの8勝をマークした。
打線も“強く振る”意識を徹底し、同年からホームランラグーンを設置された効果もあり、移籍1年目のレアードがチーム最多の32本塁打を放つなど、7人の選手が2桁本塁打をマーク。チーム本塁打はマリン移転後シーズン最多となる158本を放った。課題だった長打力がアップし、若手投手陣が台頭、昨季は最後の最後まで楽天とCSを争っていたが、あと一歩のところで敗れ、69勝70敗4分の4位に終わった。
光った的確補強
「今(2019年)シーズンを戦って何が足りなかったのかというところを分析してやっています。何よりもAクラス争いではなく、優勝争いをするために、的確にやっています」(松本球団本部長 昨年12月取材)
ロッテはシーズンオフに課題を解消すべく、積極的に動いた。FAで楽天から美馬学、ソフトバンクから福田秀平を補強し、ハーマン、ジャクソン(現在退団)、楽天を戦力外となった西巻賢二、FAで楽天に移籍した鈴木大地の人的補強として小野郁を獲得した。
そうした姿勢は、年が明けてからも変わらなかった。シーズン開幕前の3月に阪神を自由契約となっていた鳥谷敬、シーズンが始まってからは巨人からトレードで澤村拓一、チェン・ウェインを獲得するなど、意図の読み取れる明確で的確な補強を見せた。
昨季は若手先発陣の台頭が目立ったなか、規定投球回、二桁投手を達成した投手がゼロ。そのなかで、FAで加入した美馬がチームトップの10勝をマークし、規定投球回にも到達し、期待通りの働きを見せた。
補強組だけでなく、石川がチームトップの131回1/3を投げ、二木がシーズン自己最多の9勝、小島は規定投球回に届かなかったものの石川、美馬とともにシーズン通して先発ローテーションを守り、岩下大輝も自己最多の7勝を挙げた。
リリーフ陣は昨季益田に繋ぐセットアッパーを固定することができず、イニング別失点では8回の87失点が最も多かったが、ジャクソンの退団こそあったものの、新加入組のハーマン、澤村が勝ちパターンを担い、8回の失点数はここまで47と大きく減少した。唐川侑己、ハーマン、澤村、益田の“勝利の方程式”が抜群の安定感を誇り、逆転負けする試合も減少。6回終了時点でリードしていれば今季は44勝3敗1分と、ウィークポイントをストロングポイントに変えた。
一方、昨季長年の課題だった長打力不足を解消したものの、昨季チームトップの本塁打を放ったレアードが故障で離脱し再び長打力不足に。開幕から相手投手に球数を投げさせ、相手の隙を突いて得点を奪っていたが、補強期間が終了した直後の10月に打線が一気に下降。ここが唯一の誤算だったかーー。
10月9日終了時点で首位・ソフトバンクとゲーム差「0.0」と優勝争いを演じていたが、打線の不振が響き、黒星が先行しリーグ優勝を逃した。それでも、高卒2年目の藤原恭大が、新型コロナによる主力の離脱で巡ってきたチャンスをしっかりと掴み、CS進出を決めた8日の西武戦では適時二塁打を放った。高卒3年目の安田尚憲もチーム3位の53打点を挙げるなど、投手だけでなく若手の野手も一軍で活躍し始めている。
シーズン終盤に失速はあったものの、“既存戦力”とその穴を埋める“補強組”がうまく融合し、4年ぶりにCSの切符を掴んだ。14日からは、敵地・福岡でリーグ王者のソフトバンクとのクライマックスシリーズを戦う。4年分の思いをぜひ“福岡の地”でぶつけて欲しい。
文=岩下雄太