初回はらしい攻撃
クライマックスシリーズ進出を決めている2位・ロッテは、日本ハムとのシーズン最終戦に4-7で敗れ、60勝57敗3分で終えた。
最終戦となったこの日、試合には敗れたが、初回は今季マリーンズが何度も見せてきた攻撃だった。0-1の初回、先頭の藤原恭大が四球、続く福田秀平が粘りに粘って9球目をライトに弾き返す二塁打で二、三塁と好機を作る。菅野剛士が空振り三振に倒れたが、10月30日の楽天戦以来となる4番で出場となった安田尚憲がレフトへ犠牲フライを放ち同点に追いつく。チームで唯一全120試合出場を果たした5番・中村奨吾が放ったショートへの内野安打で、二塁走者・福田秀は、深い位置で打球を処理した日本ハムのショート・中島卓也が一塁へ送球する間に、三塁ベースを蹴って一気にホームイン。
さらに、続く井上晴哉がライトポール際に放った打球が跳ね返り、転々としている間に巨体を揺らして三塁へ。ここで井口資仁監督が審判団にリクエストを要求し、打球が外野フェンスを越えたと判断され第15号2ランとなった。
捕手では9月19日の日本ハム戦以来となった佐藤都志也が中安、8番・藤岡裕大が二塁へ内野安打など、初回だけで日本ハムの先発・上原健太に“44球”を投げさせた。ちなみに今季初回だけで40球以上投げさせたのは、4度目だった。
▼ 初回だけで40球以上投げさせた試合
6月25日 41球(vsオリックス)
8月25日 47球(vs楽天)
9月29日 41球(vs日本ハム)
11月9日 44球(vs日本ハム)
なんとか掴んだCS
4年ぶりにCS進出を決めたが、振り返れば今季は10月上旬までソフトバンクと優勝争いしながらも、シーズンの最終盤には西武に抜かれ3位に後退したこともあった。昨季は最後の最後まで楽天と3位争いをしながら、粘り切ることができず4位に終わり、その悪夢を思い出したファンも多かったのではないだろうかーー。
今年は昨年までとは違った。10月のチーム打率がリーグワーストの.208と打てず6連敗、4連敗と大型連敗が続き、チーム状況が最悪だったなかでも、ここで勝たなければいけないという試合で勝利することができた。
11月3日、4日のソフトバンク戦に連敗し3位に転落し、もう負けられない5日のソフトバンク戦に6-1で勝利。7日のオリックス戦は、初回に先制を許し、その裏の満塁の好機で得点することができなかったが、4回に藤原恭大の3ランで逆転勝ち。8日の西武との直接対決に8-2で勝利し、CS進出を決めた。ここが昨年までになかった“粘り”、“意地”、“執念”ではないだろうか。
個人タイトル獲得者なし
パ・リーグの全日程が終了し、個人タイトルも決まったが、6球団のなかで唯一タイトルを獲得した選手がいない。チーム内の打率トップは、.249の中村奨吾と寂しい数字だった。
打撃陣に突出した成績を残した選手がいなくても、“組織”としての強さがあった。打って、選んで、走って、球数を投げせ、相手の隙を突いて得点を奪った。まさに、この日見せた初回の攻撃がそうだろう。この日は勝利することができなかったが、少ない点数を投手陣が守り切るという“勝利の形”が今年のマリーンズにはあった。
先制点を挙げた試合の勝率はリーグトップの.769(40勝12敗2分)、ホームでは勝率.864(19勝3敗1分)と無類の強さを誇った。また、6回終了時点でリードした試合は44勝3敗1分。昨季はイニング別失点で8回が最も多い87失点だったが、リリーフ陣を補強した今季は8回の失点数が47と減少。唐川侑己、ハーマン、澤村拓一、益田直也と勝利の方程式が確立できたことに加え、小野郁、東條大樹といったリリーフ陣が安定していたことも非常に大きい。
14日からは王者・ソフトバンクと日本シリーズ進出をかけてCSが行われる。福岡の地で“マリーンズ野球”を見せて欲しい。
文=岩下雄太