チルドレンが指揮官に贈ったサヨナラゲーム
DeNAは14日、本拠地・横浜スタジアムで行われた巨人戦に5-4で勝利。劇的な逆転サヨナラ勝ちでシーズン最終戦を飾った。
この日はアレックス・ラミレス監督が指揮を執る最後の日。1番には逆転首位打者を狙う梶谷隆幸を起用し、乙坂智と細川成也が3番・4番。
さらに7番には倉本寿彦、9番には戸柱恭孝という“ラミレスチルドレン”を並べ、賛否を呼んだ「8番・投手」も貫いたラインナップで臨んだ。
1週間後に日本シリーズを控える巨人もエースの菅野智之を先発に立ててきたが、この日はラミレス監督が「10勝するポテンシャルがある」とほれ込んだ平良拳太郎が、相手エースに引けを取らぬ力投を披露。互いに3回までパーフェクトピッチという投手戦を演じる。
4回、平良は“天敵”である丸佳浩に適時打を浴びてしまうものの、5回を投げて被安打2、与四球1の5奪三振で1失点という堂々たる投球。6回は昨季まで守護神を務めていた山﨑康晃が、1カ月ぶりの一軍登板で2本の安打を浴びながらも1回を無失点で繋ぎ、0-1で終盤戦を迎える。
7回は2点、8回は1点を失うものの、7回は平田真吾からピンチで選手会長の石田健大、8回はルーキーの伊勢大夢からピンチで砂田毅樹という短期決戦ばりの“マシンガン継投”を披露。
本気の采配に打線もついに奮起し、7回は2点、8回は1点と取られた分をキッチリと返済。9回は3-4と1点ビハインドながら守護神の三嶋一輝を投入する執念を見せ、1点差で最後の攻撃へ…。ここでドラマが待っていた。
一死から柴田竜拓と倉本寿彦が連打でチャンスメイク。つづく嶺井博希は会心の当たりをセンターに弾き返すも、これは重信慎之介の好プレーに阻まれて二死。打った嶺井は思わず頭を抱え、万事休すか…という空気が流れる。
それでも、宮本秀明がピッチャー強襲の内野安打で出塁してついに満塁。二死満塁とすると、打順はトップに返って途中出場の神里和毅へ。
ルーキーイヤーの2018年から指揮官にチャンスを与えられ、期待を寄せられてきた26歳は、このチャンスに臆することなく初球攻撃。甘く入ったボールを捕らえた打球はセンターに抜け、この間に二者が生還。 最後まで貫いた“ラミ流”野球にチルドレンが応える形で、劇的すぎる逆転サヨナラ勝ちを掴んだ。
セレモニーでは思わず感涙も…
試合後、セレモニーの前には巨人ベンチから原辰徳監督が登場。花束贈呈のサプライズが。
マスクを着用しているため、その表情は少し見えにくかったのだが、目には光るものがチラついていた。
セレモニーでは1年を振り返る映像に、キャプテンとして奮闘した佐野恵太からの挨拶。そして、最後にラミレス監督の功績を讃えるVTRが流れ、ついに最後の挨拶へ…。
まずは、オーナーや社長に対し、「日本で監督をやるという夢を叶えさせてもらった」と感謝。DeNAファンについては、「日本一のファン。今日から自分もベイスターズファンとなり、皆さんと同じように応援したい」と宣言も。
つづけて、自身がチームを率いた5年間では、残念ながら優勝することは出来なかったが、「次の監督は必ず優勝に導いてくれる」と期待を込めた。
最後は「監督としてメインドアから入ってきて、同じメインドアから去っていきます。後悔は一切ない。私はとても幸せ」と前を向き、「この5年間ありがとうございました!」と流暢な日本語で締め。
クライマックスシリーズに日本シリーズと、ベイスターズファンを知らない世界へと導いてくれた名将。横浜の街も、この5年間を決して忘れることはないだろう。
取材・文=萩原孝弘