QS62はリーグトップ
シーズン終盤に失速はあったものの、リーグ王者のソフトバンクとリーグ優勝争いを繰り広げ、2007年以来となる2位になったマリーンズ。
先発陣のチーム防御率はリーグ4位の「4.07」。防御率は4点台ではあるが、石川歩、美馬学は規定投球回に到達し、2年目の小島和哉は規定投球回に到達しなかったが1年間先発ローテーションで投げ、二木康太はシーズン自己最多の9勝、岩下大輝も新型コロナウイルス感染で離脱するまで先発ローテーションを守った。さらにシーズン終盤に加入したチェン・ウェインが打線の援護に恵まれなかったものの、4試合に先発して、いずれもQS(6回3自責点)以内を達成した。
開幕先発ローテ入りが確実視されていた西野勇士、シーズン途中に種市篤暉が右肘の故障で離脱したなか、数字以上に奮闘した印象がある。先発投手の指標のひとつにあたるQSも、リーグトップの62だった。石川がリーグトップタイの14QS。特に石川は今季21試合に先発したが、5イニング以上投げた試合は20試合で、6イニング以上投げた試合は19試合と、シーズン通して長いイニングを投げた。美馬、二木、小島の3人も10QSを達成し、10QSを4人以上達成したパ・リーグのチームは、マリーンズだけである。
▼ パ・リーグのQS数
1位 62 ロッテ(石川、美馬、二木、小島)
2位 58 ソフトバンク(千賀、石川、東浜)
3位 56 日本ハム(有原、バーヘイゲン、上沢)
4位 52 楽天(涌井、則本)
4位 52 オリックス(山本、田嶋)
6位 40 西武(高橋光成、ニール)
※()はQSを10回以上達成した投手
序盤は種市、岩下が引っ張る
シーズンを細かく振り返ると、石川、種市篤暉、美馬、二木、小島、岩下の6人が開幕ローテーションでスタートを切った。石川、美馬といった実績組が不安定だったことに加え、先発ローテの一角として期待された二木が開幕直後に二軍落ちと、苦しい台所事情のなか、シーズン序盤先発陣を引っ張ったのが種市と岩下の若手コンビだ。
昨季チームトップタイの8勝を挙げた種市は、白星に恵まれなかったものの、開幕から3試合全てQSを達成し、4試合目の登板となった7月11日の西武戦で、6回を10奪三振3失点で今季初勝利をマーク。この日の試合後に奪三振数もリーグトップに浮上した。7月18日の日本ハム戦で2勝目をマークし、7月25日の西武戦では136球の熱投で、プロ初完封勝利も飾った。
岩下は2、3月の練習試合、オープン戦、6月の練習試合もピリッとしない投球内容だったが、西野の故障で“先発6番手”で開幕を迎える。昨季も開幕前に調子があがらず、シーズン入ってから素晴らしい投球を見せた岩下は、今季も全く同じだった。初登板となった6月25日のオリックス戦、5回2/3を投げて無失点で初勝利を挙げると、7月2日の楽天戦、7月16日の日本ハム戦でも白星を挙げ、開幕3連勝。降雨のためノーゲームとなった7月9日の西武戦も、4回まで無失点に抑える内容だった。
種市と岩下は連敗の中で先発登板が回ってくることが多かったが、連敗ストッパーにもなった。チームの勢いが止まっていた7月に大型連敗をしなかったのは、種市と岩下の好投によるところが大きかったと言えるだろう。
石川、美馬、二木の存在が大きかった8、9月
先発陣を支えていた種市が右ひじの故障で8月2日に一軍登録を抹消されると、8月以降は美馬、石川、二木の3人がチームに勝ち星を多くもたらした。
石川は7月31日の楽天戦から9月4日のソフトバンク戦にかけて6連勝。8月は4試合に登板して、4勝0敗、防御率3.46で月間MVPにも輝いた。美馬も8月11日の日本ハム戦から10月4日の西武戦にかけて自身7連勝。7連勝前は2勝2敗、防御率5.71だったが、8月11日以降は8勝2敗、防御率3.07と安定した。
6月30日の楽天戦でノックアウトされて以降ファームで調整が続いていた二木も、8月8日のオリックス戦で7回を5安打2失点に抑え今季初勝利を挙げると、続く8月15日の日本ハム戦は敗戦投手になったが7回を投げた。8月29日のオリックス戦から自身6連勝と、種市が故障で離脱した穴を埋め、シーズン自己最多の9勝をマークした。シーズンの防御率は3.40だったが、再昇格を果たして以降の防御率は2.63だった。
美馬、石川、二木の3人が安定していたことで、チームも8月(16勝8敗1分)と9月(15勝11敗1分)は月間リーグトップの成績を残した。9月まで1度も同一カード3連敗がなかったのも、勝ちが計算できる投手が3人いたことが非常に大きい。
先発ローテを守りきった小島
2年目の小島の存在も忘れてはならないだろう。
小島は2年連続で開幕ローテ入りを果たすと、昨季はプロ初登板・初先発となった4月4日の西武戦で2回8失点と悔しいマウンドになったが、今季は初登板となったオリックス戦で5回4失点ながらも白星を手にする。
今季2度目の登板となった7月1日の楽天戦は、4回5失点と不安定な投球だったが、登板を重ねるごとに安定感が増していき、8月26日の楽天戦では開幕8連勝中だった涌井秀章に投げ勝つなど、同試合から3試合連続で7イニング以上投げた。
チームに勢いがあった8、9月は9試合に登板し、4勝3敗、防御率2.78と、白星を積み重ねた石川、美馬、二木のような派手さはなかったが、堅実な投球を見せた。
規定投球回には届かなかったものの、シーズン通して先発ローテーションに穴を開けなかったのは立派だ。
白星に恵まれずも安定感が光ったチェン
ソフトバンクと熾烈な優勝争いを演じていた9月に、中日や大リーグのオリーオルズなどで活躍したチェン・ウェインが加入。実戦不足が心配されたチェン・ウェインだったが、それも杞憂に終わる。移籍後初登板となった10月14日の楽天戦で6回を2失点に抑えると、10月21日の西武戦も6回を1失点。
先発した4試合全て6イニング以上投げ、3失点以内に抑えていたが、打線の援護に恵まれず、0勝3敗という成績だった。援護があれば、4試合全て勝利していてもおかしくない投球内容だった。
来季に向けた課題
種市の離脱、シーズン終盤にチェン・ウェインの加入もあったが、シーズン通して先発陣が試合を作った。ただ、岩下が新型コロナウイルス感染で離脱した直後、岩下に代わる先発投手がいなかったのも事実。
昨年でいえば土肥星也、佐々木千隼、中村稔弥などファームも先発陣が充実していたが、今季は再昇格を果たした二木に続く先発投手の候補が少なかった。ファームの開幕投手を務めた古谷拓郎は、7月24日の巨人との二軍戦から約2カ月近く登板がなかった時期があり、9月はファームの先発で6イニング以上投げた投手が支配下選手では有吉優樹しかいないという状況だった。この時期一軍が好調だったため、あまり目立たなかったが、故障者や不振の投手が続出していたら、また違った展開になっていただろう。
そんな中で、育成選手の森遼大朗と本前郁也は先発でアピールを続けた。森は1勝6敗と黒星が先行したが、ファームではチームトップの61イニングを投げた。9月9日の楽天戦では敗戦投手になったが、8回を1安打1失点に抑える好投を見せた。本前は開幕直後、リリーフで投げていたが、8月17日以降の7試合は先発。9月は3登板・16イニングを投げて、防御率0.56という成績だった。
今季は美馬、石川、二木、小島、岩下、さらには故障で離脱してしまったが種市、途中加入のチェン・ウェインがいたが、来季以降に向けてさらなる先発の強化、若手投手の台頭が必要になってくるといえそうだ。
▼ 主な先発陣の成績 ※成績は先発のみ
石川 歩 21試 7勝6敗 133回1/3 振77 四26 QS14 防4.25
美馬 学 19試 10勝4敗 123回 振88 四25 QS10 防3.95
小島和哉 20試 7勝8敗 113回1/3 振83 四47 QS10 防3.73
二木康太 15試 9勝3敗 92回2/3 振79 四12 QS10 防3.40
岩下大輝 16試 6勝7敗 87回2/3 振71 四33 QS5 防4.31
中村稔弥 11試 2勝5敗 50回2/3 振27 四22 QS2 防4.80
種市篤暉 7試 3勝2敗 46回2/3 振41 四15 QS6 防3.47
チェン・ウェイン 4試 0勝3敗 26回 振14 四4 QS4 防2.42
文=岩下雄太