緒方前監督時代は外野手として出場
佐々岡体制1年目は52勝56敗12分けの5位に終わり、2年連続でBクラスに沈んだ広島。主力の離脱、外国人選手の不調など誤算続きだったが、シーズン終盤は若手の台頭が目立つなど収穫もあった。
その筆頭が高卒4年目捕手・坂倉将吾の成長だろう。今季はチームの方針で捕手に専念。九里亜蓮、森下暢仁の専属捕手として47試合でスタメンマスクを被るなど、シーズン自己最多の81試合に出場し、打率.287、3本塁打、26打点、OPS(出塁率+長打率).758の好成績を残した。
入団当初から打撃センスは高く評価されており、緒方孝市前監督が指揮していた昨年は、巨人へ移籍した丸佳浩の後釜候補の一人として外野で12試合に出場。今季のスタメン出場時は15試合でクリーンアップに名を連ねるなど「打てる捕手」として順調にキャリアを重ねている。
ただ、今季は6つの捕逸を記録するなど守備面の課題は多い。本人も「キャッチングやワンバウンドストップでのミスを少なくしていきたい」と反省。それでも九里を8勝、森下を10勝に導くなど、総合的に「勝てる捕手」としての印象は残した。オフには背番号を変更。引退した石原慶幸の背番号『31』を引き継いだ。
日本ハム近藤、ソフトバンク栗原になれる素材
第2捕手として地位を確立し、来季は正捕手・會澤翼に挑む立場。ただ會澤も健在で、今季は元々の試合数減と負傷による登録抹消などで79試合の出場にとどまったものの、打率.266、7本塁打、36打点、OPS.774をマーク。ベテランの域に入り来年は33歳で迎えるシーズンとなるが、経験が生きるポジションなだけに今後も攻守両面で頼りにしたい存在だ。
中堅の磯村嘉孝も控えており、若手では今季一軍デビューした中村奨成に加え、今オフのフェニックス・リーグで非凡なパンチ力を披露している新人の石原貴規も楽しみな存在。広島捕手陣は充実している。
来季、坂倉が正捕手の座をつかむ可能性もあるが、會澤との併用が続くようならもったいな気もする。捕手専念でも控えに回った際は代打要員、交流戦が再開されれば指名打者としても起用が見込める。ただ、坂倉の打撃センスを最大限に生かすならば、緊急時の第3捕手を視野に入れながら、再び野手としてより多くの試合でスタメンに名を連ねる起用法も一手なのではないかと感じる。
背番号『31』といえば、今年の日本シリーズでMVPに輝いたソフトバンクの栗原陵矢も捕手登録。今季大ブレークした高卒6年目は、オープン戦や練習試合で捕手、一塁、外野とさまざまはポジションを兼務しながら、常勝軍団に欠かせない戦力へと急成長した。
昨年から2年連続で最高出塁率賞を受賞している日本ハムの近藤健介も捕手、三塁、外野を兼務しながら、リーグ屈指の好打者へと成長した。鈴木誠也がMVPに輝いた昨年の「第2回WBSCプレミア12」で近藤は、主に3番打者として高い出塁能力を発揮し、鈴木の大会打点王をアシストした。坂倉が常時、鈴木の前にラインナップされれば、広島打線の得点力も向上するのではと妄想が膨らむ。
その鈴木は、メジャー思考が強いと言われている。チームの3年後、5年後を見据えても、坂倉の野手再チャレンジは悪手ではないと思う。