出塁率.389
「良い1年にできるように、スタートダッシュできるようにアピールし続けたいと思います」。
春季キャンプ中、このように力強く語ったロッテの菅野剛士は、開幕一軍を逃したものの、シーズン自己最多の81試合に出場して、打率.260、2本塁打、20打点、出塁率.389をマークした。
2月の練習試合で、打率.414(41-17)、2本塁打、4打点とアピールし、シーズン開幕に向けてさらに状態を上げていきたいところだったが、3月のオープン戦、練習試合に入ってからは当たりが止まった。新型コロナウイルス感染拡大の影響で、開幕が6月19日と変更となり、再びアピールをしなければいけなくなったが、6月の練習試合でも打率.100(10-1)。荻野貴司、マーティン、福田秀平、角中勝也、清田育宏といった実力組を脅かすような働きができず、開幕をファームで迎えた。
ファームでは打率.400(15-6)、3本塁打、7打点と結果を残し、7月7日に一軍昇格。同月10日の西武戦で今季初スタメン出場し、今季初安打を放つと、翌11日には西武の先発・松本航からオフの自主トレで一発で仕留められるよう取り組んできたストレートを豪快にライトスタンドへ放り込む第1号2ラン。
この試合から菅野は3試合連続マルチ安打、同月15日の日本ハム戦で無安打も、16日の日本ハム戦で再びマルチ安打。昨季はヤクルト戦で1試合2本塁打を放つなど交流戦で打率.324と打ったが、「交流戦の最中とかはいい感じで打てていた。それが終わってからおかしくなった」とその後が続かなかった。
昨季は交流戦後、6打数0安打で1本も安打を放てず一軍登録を抹消されたが、そのときは1つも四球を選べていなかったが、今季は違った。9月10日の日本ハム戦の第3打席から9月18日の日本ハム戦の第2打席にかけて21打席連続無安打というときもあったが、その間も4四死球を選んでおり、最低限の仕事を果たすなど、“四球”での出塁が増えた。
今季の打率は「.260」ではあるが、出塁率は打率よりも1割以上高い「.389」。月別でみても、7月(.453)と10月(.436)は出塁率が4割を超える。今季は当たりが止まっている時でも四球を選んで出塁し、その間に状態を上げていき、好不調の波が昨季までに比べると少なくなった印象だ。
取材制限の関係で本人に直接確認できていないが、試合前の打撃練習を見ていても、徹底的にセンターから逆方向を中心に打つ日もあれば、引っ張りの打球を多めに打ったりと、その時の自身の状態に応じてかなり工夫して打っていた。
走塁、守備でもアピール
昨年シーズン終了直後に、一軍定着するために必要なことについて菅野は「守備も走塁も打撃も全てレベルアップしないと、レギュラーで出ている人たちには勝てない。そこを超えなくちゃいけない」と話していた。
打撃もそうだが、走塁、守備でもレベルアップした姿を見せた。走塁では7月15日の日本ハム戦、井上の振り逃げで捕手の宇佐見が後ろにそらしている間に一塁から三塁へ進塁すれば、7月28日の楽天戦でもレアードのレフト線へのあたりで一塁から三塁を陥れる好走塁。
守備でもレフトやライトだけでなく、春季キャンプ中は「内野の動きも外野に繋がったりするので、そういう外野でも活きるように内野の練習をしています」と内野の守備練習も取り組んでいたが、公式戦でも井上晴哉が打撃不振だったシーズン終盤には一塁でスタメン出場した。外野で60試合、一塁で12試合に出場したが、外野、一塁ともに無失策だったのは立派。
今季はFAで福田秀平、新人で高部瑛斗と、菅野と同じ「右投げ左打ち」の外野手が加わり、開幕も二軍スタートではあったが、終わってみればシーズン自己最多の81試合の出場を果たした。この1年の頑張りで、レギュラーに近い位置まできている。来季はレギュラーのポジションを掴み取りたいところだ。
文=岩下雄太