打点王があるなら、「得点王」があってもいい
プロ野球の個人成績というと、どうしてもいわゆる個人タイトルとなっている指標に注目が集まりがちだ。野手でいえば、現在の個人タイトルは、「首位打者」、「最多本塁打」、「最多打点」、「最多安打」、「最多盗塁」、「最高出塁率」の6つ。しかし、個人タイトルにはなっていなくとも、得点に対する影響度、ひいてはチームへの貢献度が高い指標は他にもある。
そのひとつと言えそうなのが、そのままズバリ「得点」だろう。打点と同じように、チームメートの活躍に左右される側面も大きい一方で、本塁打によって個人で数字を積み重ねることもできる。打点王があるなら、「得点王」があってもいい。それこそ、野球が得点を競うスポーツである以上、得点も非常に重要な指標ではないだろうか。
ここで、今季のセ・パそれぞれにおける得点王ランキングを振り返ってみる。
【2020年シーズン「得点王」ランキング】
▼ セ・リーグ
1位:88 梶谷隆幸(DeNA)
2位:85 鈴木誠也(広島)
3位:81 近本光司(阪神)
4位:79 岡本和真(巨人)
5位:70 村上宗隆(ヤクルト)
▼ パ・リーグ
1位:90 柳田悠岐(ソフトバンク)
2位:82 西川遥輝(日本ハム)
3位:72 浅村栄斗(楽天)
3位:72 マーティン(ロッテ)
5位:71 鈴木大地(楽天)
自らの本塁打でも得点を積み重ねられる柳田が12球団トップ
12球団トップに立ったのは柳田悠岐(ソフトバンク)。ただひとり、90得点に到達した。今季のソフトバンク打線はかなり流動的であったが、柳田がほとんどの出場試合で務めたのは3番打者。それでも得点王となったのは、リーグ3位という出塁率(.449)の高さもさることながら、これまたリーグ3位の本塁打(29本)によって自らホームに生還するケースが多かったことにもよるのだろう。
その柳田と対照的といえるのが、パ・リーグ2位の西川遥輝(日本ハム)。今季の西川の本塁打はわずか「5」にとどまる。しかし、12球団トップの92四球を選んだ選球眼と3割を超える打率によって、出塁率は柳田に次ぐリーグ4位(.430)。さらには、リーグ2位の42盗塁を誇る足によってチャンスを拡大し、不動の4番・中田翔の打点王獲得を後押しするとともに、自身の得点を積み重ねた。まさしく先頭打者らしい先頭打者といえるのが西川だ。
一方のセ・リーグでトップに立ったのは梶谷隆幸(DeNA)。梶谷は、柳田と西川のハイブリッドタイプといえるかもしれない。梶谷の打率.323は、チームメートである佐野恵太に次ぐリーグ2位である。その一方で今季は3シーズンぶりに2桁に乗せる19本塁打をマーク。さらに、かつてと比べれば数は減ったものの、リーグ5位の14盗塁も記録した。
そして、巧打に長打、俊足を併せ持つ切り込み隊長のあとには、佐野の他にソト、オースティン、宮﨑敏郎といった強打者が居並ぶ。梶谷が得点王に輝いたことが、今季のDeNA打線がいかに強力だったかを象徴している。
文=清家茂樹(せいけ・しげき)