低評価を覆した2019年のドラフト組
シーズン序盤は首位争いを繰り広げるも、終わってみれば55勝57敗8分けの4位に沈んだ楽天。三木肇監督は責任を取る形で1シーズンで退任。今回は若手選手にフォーカスし、2020年の楽天を振り返る。
開幕ダッシュに成功した2020年シーズンだったが、勢いは長続きしなかった。先発転向でスタートした2019年のセーブ王・松井裕樹が、シーズン終盤に再び救援に回るなど選手起用も二転三転。後半戦はロッテ、西武とのクライマックスシリーズ争いにも敗れ、Aクラス確保もままならなかった。
若手も総じて尻すぼみの成績に終わったが、その中で奮闘したのが下馬評の低かった昨秋のドラフト指名組だった。まずは大阪ガスからドラフト1位で加入した小深田大翔が、シーズン後半から遊撃のレギュラーに定着し、打率.288、出塁率.364、17盗塁を記録するなどリードオフマンとして活躍。1年目から走・攻・守の全面で俊敏性を発揮し三木野球の体現者となった。
シーズン終盤にはHonda鈴鹿から同6位で加入した瀧中瞭太が先発ローテーションに定着。即戦力の期待に応えるゲームメイク能力を見せ、8試合に先発し2勝1敗、防御率3.40をマークした。慶大から同3位で加入した津留﨑大成は、チーム5位の33試合に救援登板し防御率4.19を記録。高卒の同2位・黒川史陽は1年目から一軍で10試合に出場し、同4位・武藤敦貴は11月のフェニックス・リーグでシャープな打撃を披露するなど高い身体能力を示した。
1年ごとに監督交代、球団体質も若手伸び悩みの一因!?
ルーキーたちが奮闘した一方で、期待されていた多くの若手が振るわなかった。投手陣では社会人出2年目の大型左腕・弓削隼人が、開幕ローテーションに入り7月まで好投を続けるも徐々にパフォーマンスが低下。8月25日を最後に一軍登板はなく、10試合に先発し3勝2敗、防御率5.01の成績に終わった。新守護神として期待された社会人出4年目・森原康平も開幕から9試合連続無失点と好スタートを切ったが、その後は不調と故障が重なり、17試合の登板で1勝2敗4セーブ、防御率7.56の成績に終わった。
野手では辰己涼介、太田光の大卒2年目コンビが、開幕当初こそ「恐怖の下位打線」として機能したもののこちらも失速。特に太田は正捕手の座をつかみかけていただけに「左肩関節唇損傷」による長期離脱が痛かった。慢性的な課題である和製大砲の台頭もなし。大卒3年目の岩見雅紀、高卒7年目の内田靖人、昨年7月に巨人からトレードで加入した高卒7年目の和田恋らが結果を残せなかった。
直近のドラフト1位選手で括ってみても、2014年の1位・安楽智大は主にロング救援要員として27試合登板で防御率3.48をマークしたが、2015年の1位・オコエ瑠偉は入団5年目で初の一軍出場ゼロ。2016年の1位・藤平尚真も、4年目でシーズン自己ワーストの1試合登板に終わった。2017年の1位・近藤弘樹は中継ぎで6試合に登板するも防御率5.40。大卒3年目右腕は今オフ戦力外通告を受けた。
浅村栄斗、鈴木大地、涌井秀章ら移籍選手の活躍が目立った一方で、若手は総じて低調だった今季の楽天。ただ、1年ごとに監督はじめコーチングスタッフがコロコロ変わる球団体質も、若手の伸び悩みと無関係ではないはずだ。