先発ローテ入り
昨季5勝を挙げたロッテの岩下大輝は、ローテーションの一員として主に木曜日に先発し、シーズン自己最多の7勝を挙げた。
春季キャンプ中、「僕の立場が確立されているわけではない。去年もそうだったですけど、どちらかというと奪いにいかなければいけない立場。変に意識をせず、与えてもらえるようにやるだけだと思います」と意気込んでいたが、2、3月の練習試合、オープン戦では結果を残せず、6月の練習試合でも不本意な投球だった。先発ローテーション入りが決定的だった西野勇士の故障により、先発ローテーションのイスを掴む。
春先に一軍で安定した投球を見せた昨季も、2、3月の練習試合やオープン戦で自身の思った感覚を掴めず、先発ローテーション入りを逃した。それでも、昨季は開幕直後に昇格し、2度目の先発となった4月11日のオリックス戦で6回を3安打9奪三振1失点に抑えると、4月17日のソフトバンク戦では6回を1安打無失点に抑え、先発ローテーションに定着。
今季も初先発となった6月25日のオリックス戦、昨季イニング別では14失点と最も多かった初回を3人で打ち取ると、2回以降もリズムの良い投球で、5回2/3を無失点に抑え、今季初勝利を手にした。7月2日の楽天戦は2回まで変化球でストライクがなかなか取れずにいたが、3回以降は変化球で見逃し、ファウル、空振りが奪え5回3失点で2勝目。7月16日の日本ハム戦では、初回にボールが先行し、初回だけで30球を要し2点を失う苦しい投球も、2回以降は走者を出しながらも粘りのピッチングで、5回を7安打3四球2失点で3勝目を挙げた。
自己最長の8回0/3
7月23日の西武戦で6回3失点とゲームを作りながらも今季初黒星を喫すると、そこから6試合白星なし。その間4試合で6イニング以上投げるなど先発の役目を果たした。
7月23日の西武戦では、中村剛也、岡田雅利に対し走者がいない場面でもクイックで投げ、この登板以降は走者がいない場面でもクイックで投げる割合が増えていった。また昨季は走者を出してから力技と高い集中力で打者を封じていたが、今季は走者を出してからも間合いを変えたり、工夫を凝らしているように見えた。
9月3日の西武戦、5回2失点で、7月16日の日本ハム戦以来の白星を手にすると、17日の西武戦ではプロ入り後自己最長の8回0/3を投げ、4安打1失点に抑え5勝目をマークした。
今季3度目の“連敗ストッパー”となった17日の西武戦、圧巻だったのは4回。先頭の栗山巧に対し、3球連続フォークで2ボール1ストライクとボール先行も、ここから2球連続で外角のストレートがきっちりと決まり見逃し三振に仕留めた。前の打席フォークで空振り三振に仕留めた山川に対しては、初球にフォークで空振りを奪うも、この打席は一転して直球勝負。3ボール1ストライクから2球連続で外角のストレートで見逃し三振。5番の森友哉もストレートで二ゴロに打ち取った。
「究極は四球を出さなくても、強い球を投げて三振を取れるのが理想」と過去の取材で話していた岩下にとって、強いストレートで二者連続三振はまさに理想的な三振だったのではないだろうかーー。
プロ初完封・完投勝利はお預けとなったが、5回以降もストレートとフォークの制球が冴え渡り、4回から8回まで許した安打は0というのは立派だ。
10月5日に新型コロナウイルス感染により離脱したが、復帰後初登板となった25日のオリックス戦、5回4安打無失点でシーズン自己最多の6勝目。11月1日の楽天戦で4回3失点と不安定な投球内容も、CS進出を決めた8日の西武戦ではリリーフで登板し2回1/3を1安打、3奪三振、無失点に抑える好リリーフを見せた。4回愛斗に投じた2球目の148キロストレート、3球目の148キロ外角ストレートは素晴らしく、フォークも5回に外崎修汰を空振りさせた4球目の134キロのボールは落差、威力がかなりあった。
ボール球が先行、またはファウルで粘られ、5回で球数が100球近くいくときもあれば、少ない球数でテンポ良く抑える試合もあった。ストレートでガンガン押していく投球スタイルでも、6月25日のオリックス戦、9月17日の西武戦のような投球を増やすことができれば、長いイニングを投げることができるだろう。年々、進化を見せている。来季は今季以上のパフォーマンスを見せ、美馬学や石川歩といったエース格の投手たちに肩を並べるくらいの投球を披露し続けて欲しい。
文=岩下雄太