山本昌さん・スペシャルインタビュー
新型コロナウイルスの影響により、予定よりも3カ月遅れて開幕した2020年のプロ野球。「無観客」でのスタートに、「交流戦」や「オールスター戦」の中止、セ・リーグでは「クライマックスシリーズ」も中止となるなど、さまざまな面から“異例のシーズン”と言われた中で、なんとか全12球団が120試合の短縮日程を消化することができた。
そんな歴史上類を見ない“異例のシーズン”を、プロ野球解説者たちはどう見たか…。
ベースボールキングでは、プロ野球OBで解説者である山本昌さんにコロナ禍で行われた今季のプロ野球についてインタビュー。振り返りを踏まえたうえで、来季注目する選手についてもお話を伺った。
「18勝3敗のピッチャー」
何を語るにしても“異例の”という言葉が付きまとった2020年。上でも触れているように、プロ野球界もまさに“異例のシーズン”となったが、その中で「印象に残った選手、来季期待する選手は?」と山本昌さんに問うと、迷わず「藤浪晋太郎」の名前を挙げた。
思えば、2019年の秋、そして2020年の春と阪神で臨時コーチを務めている山本昌さん。中でも“藤浪再生”というテーマは各メディアがこぞって取り上げていて、シーズン中にも藤浪についてのコメントやエールが紹介される機会が多かった。
そんな“愛弟子”とも言える存在について、「やっと形になってきた」と、今季の奮闘ぶりには手ごたえを得た様子。つづけて、「おそらく、本人も来年は先発がしたいと思っているでしょう。ポテンシャルを100%出すことが出来たら…どうでしょう、18勝3敗くらいのピッチャーだと思います」と、来季の飛躍に大きな期待を寄せる。
たしかに、今季は24試合の登板で1勝6敗、防御率4.01という成績も、10月は11試合に登板(うち先発が1試合)して防御率1.76という好成績をマーク。球団最速となる162キロを甲子園で計測するなど、終盤に進むにつれて安定した力を発揮した。
11月は2試合先発で勝ち負けつかずも、その内容は6回無失点と5回無失点。先発復帰への光明も見えた中でシーズンを終えている。
「今はおそらく、ポテンシャルの70%くらいしか出していない。フルで発揮できれば、20勝しても全然不思議ではない投手ですよ。ちょっとずつ、掴んで来たなという感じのボールに見えましたので、残りの30%を来年、どうにか」。
良い形でシーズンを締めくくり、加えて通算219勝を誇るプロ野球界のレジェンドがこれほどまでに潜在能力を高く評価しているのだから、これは期待しないわけにはいかない。
藤川球児の引退や、守護神ロベルト・スアレスの去就が不透明だったことから、来季の起用法に関しては読めない部分もあったが、ここに来てスアレスの残留が決定。また本人も、16日の契約更改で先発へのこだわりを明言している。
プロ9年目の来季こそ完全復活、そして山本昌さんの期待に応えるようなキャリアハイの活躍を…。虎の命運を握る、背番号19の逆襲から目が離せない。
文=尾崎直也