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川相昌弘さんが語るセ界の明暗を分けた一戦とは?

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川相昌弘さん・スペシャルインタビュー


 新型コロナウイルスの影響により、予定よりも3カ月遅れて開幕した2020年のプロ野球。「無観客」でのスタートに、「交流戦」や「オールスター戦」の中止、セ・リーグでは「クライマックスシリーズ」も中止となるなど、さまざまな面から“異例のシーズン”と言われた中で、なんとか全12球団が120試合の短縮日程を消化することができた。

 そんな歴史上類を見ない“異例のシーズン”を、プロ野球解説者たちはどう見たのか…。

 今回はセントラル・リーグの特別協賛スポンサーである株式会社JERAの協力の下、2020年のセ・リーグを振り返るスペシャルインタビューを実施。巨人のOBでもある川相昌弘氏に、今季のセ・リーグを独走した巨人についてお話を伺った。


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撮影=兼子愼一郎
文・構成=平野由倫
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流れを変えた伏兵の一打


 “異例づくめ”のシーズンとなった2020年、120試合制の『JERAセントラル・リーグ』の戦いを制したのは読売ジャイアンツだった。2位の阪神に7.5ゲームもの大差をつけてのリーグ連覇は、巨人の強さを強烈に印象付けた。

 その巨人の試合を、シーズンを通して注視し続けていた川相さんが特に印象に残っているというのが、6月19日に東京ドームで行われた今季の開幕戦(対阪神)における吉川尚輝選手の一発だ。後に史上初となる開幕13連勝を飾る巨人の菅野智之投手が、阪神の先発・西勇輝投手に本塁打と適時二塁打打たれて1点のリードを許す展開のなか、7回裏に吉川尚が起死回生の2ランを放ち、チームは逆転勝ちを収めた。

「あそこで負けていたら、あそこで打てなくて負けていたら、スタートダッシュも含めて巨人は厳しかったなと思う。劣勢だったじゃないですか。菅野が西にホームランも打たれて。悪い流れの中で(阪神の)ピッチャーが交代したあと、岩崎(優)が投げたインサイドの難しいストレートを、腕を縮めてホームランにした。あれで流れが良くなったんです」


 シーズンの最初の試合を、「1/120」と見るのか、「特別な一戦」と見るのかは意見の分かれるところではあるが、川相さんは非常に大きな意味を持つ試合だったと語る。

「あれで逆転して勝ったというのは、今年の巨人にとってはすごい良いスタートだった。逆に阪神からすると、あの試合を負けたことによって、その後の東京ドームの巨人戦は、今年も分が悪かった。開幕で3連敗して、次の東京ドームでも3連戦でも3連敗している。あそこで開幕戦をひとつ勝つのと勝たないのでは、ずいぶん流れが変わったと思います」

「ですから、印象づけるという意味で、開幕戦は意外に大事かなと僕は思っています。あの一発というのは、巨人にとっても大きかったですし、吉川本人にとっても大きなホームランだったんじゃないかなと思いますね」

 実際、開幕3連勝を飾った巨人は、その勢いのまま6月を7勝2敗で終え、対する阪神は2勝8敗とつまづいた。また、東京ドームで阪神は結果的に8連敗を喫し、トータルでも3勝9敗と大きく負け越している。巨人のチーム別の対戦成績を振り返ると、中日(12勝10敗2分け)、DeNA(12勝12敗)、広島(12勝9敗3分け)で、そこまで大きな差はなく、2位阪神(16勝8敗)と6位ヤクルト(15勝6敗3分け)から勝ち星を稼いだことがわかる。



94年の優勝を確信させた開幕戦のワンプレー


 「1年を占うという点でも、開幕戦は非常に大事ですし、方向性を示すという点でも開幕戦は大事になると思っている」。

 川相さんが開幕戦の重要性を口にしたのには、ワケがある。その背景には、自身が現役時代に経験した体験があった。

「1994年の開幕戦、落合さんが(巨人に)来た1年目だったんです。長嶋監督が2年目の年なんですけど、その開幕戦で広島と対戦し、相手の先発は北別府さん。こっちは斎藤雅樹だったと思うんです。初回に無死一塁、2番バッターの私が打席に立って、エンドランで1点を取ったんです」

「1番グラッデンが塁に出て、グラッデンが走ったところで、僕の叩きつけた打球が広島の三塁手・江藤のグラブの先っぽに当たって、三塁側の深いところに、ファールグラウンドのほうに転がっている間に、グラッデンが一気にホームイン。たった2人で1点を取ったんです。その試合は10点くらい取って勝ったんですけど、落合さんが後に、『あの年優勝したのは、あの初回の川相のエンドラン。これで今年行けるかもしれない、という雰囲気になった』って言われてたんですよ」

 実際、開幕2連勝を飾った巨人は、その後も白星を積み重ねて首位を快走。夏場に8連敗を喫するなど失速し、中日の猛追を許す結果となったが、最後は「10.8」の直接対決を制した巨人が1ゲーム差でリーグ王者となった。

 川相さんは「流れが大切ってよく言いますけども、その一瞬のプレーがシーズンの流れを作っていったということが言える」と振り返った。勝負事に「タラレバ」は禁物だが、あの開幕戦で阪神が勝利を収めていたら、吉川尚が打てていなければ、また異なるセ界線があった可能性も十分にあるだろう。

 たかが1試合、されど1試合。一瞬一秒のワンプレーが1シーズンを左右する。私たちを心の底から熱狂させるあの日々は、もう3カ月後に迫っている。


川相昌弘さんスペシャルインタビュー・動画はコチラ



今回の記事で取り上げた「印象的だった試合」以外にも、
川相さん目線で選出した今季の「MVP」や「来季の展望、期待を寄せる選手についてなど、たっぷりとお話を伺いました!

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