高卒ドラ5・岡林はファームで打率.285
盤石な勝ちパターンを確立し、8年ぶりのAクラス入りを果たした中日。就任2年目の与田剛監督の下、投手整備に成功。60勝55敗5分けの3位でシーズンを終えた。今回は若手選手にフォーカスし、2020年の中日を振り返る。
沢村賞に輝いた大野雄大、ともに最優秀中継ぎ賞を受賞した祖父江大輔と福敬登、そして正捕手に君臨しチームに安定感をもたらした木下拓哉など、今季の中日は働き盛りの中堅選手たちの活躍が目立った。
一軍の舞台で結果を残した若手は少なかったものの、未来の主軸となる面々が貴重な経験を積んだ。高卒2年目の根尾昂は、8月上旬に一軍帯同。プロ初安打までに時間を要したが、一軍レベルを肌で感じたあとはウエスタン・リーグでチームトップタイの5本塁打を放つなど、二軍戦で打率.238、33打点を記録した。
和製大砲の期待がかかる高卒ドラ1の石川昂弥も、7月12日の広島戦(ナゴヤD)で一軍初打席初安打となる痛烈な二塁打をマーク。こちらも一軍経験後はファームで実戦を重ね、打率.278、3本塁打、24打点、出塁率.374とポテンシャルの高さを示した。春季キャップ時から高評価を得ていた高卒ドラ5・岡林勇希も早々と一軍初安打を記録。ファームでは根尾や石川を上回る打率.285をマークした。
ドラフト4位で加入した新人捕手の郡司裕也は、1年目から一軍で30試合に出場。後半戦は木下拓の活躍もあり出番を減らしたものの、ルーキーイヤーから存在感を示した。同じく捕手登録で24歳のアリエル・マルティネスは、来日3年目となった今年7月に待望の支配下登録を勝ち取った。ダヤン・ビシエドが負傷離脱したあとはスタメン4番を託されるなど非凡な打撃センスを披露。39試合の出場ながら打率.295、OPS(出塁率+長打率).806と結果を残した。
ファームでともに4割近い打率をマークした大卒5年目の渡辺勝と高卒4年目の石垣雅海は、一軍ではともに打率2割以下と不発。代打起用がメインで致し方ない面もあるが、来季は結果を積み重ね一軍定着と行きたい。
内野陣は高橋周平、京田陽太と20代のレギュラーはいるが、外野陣の主力は大島洋平、平田良介、福田永将と30代が多く、高齢化は心配の種。冒頭で述べたように木下拓や阿部寿樹ら中堅どころの活躍は頼もしいが、そろそろレギュラー陣を結果で脅かす若手に出てきてほしいところだ。
投手陣も中堅が踏ん張り競争激化、R.マルティネスは絶対的守護神に
投手陣も若手の飛躍以上に、上述の大野雄、福らに加え、後半戦に入り先発ローテに定着した福谷浩司、松葉貴大ら中堅どころ復調が印象的だった。
2019年に自己最多の11勝を挙げ右のエースとして期待される大卒4年目の柳裕也は、シーズン終盤に調子を上げてきたものの、右脇腹を痛めた序盤戦に一時離脱し、15試合の先発で6勝7敗、防御率3.60の成績。同じく右の本格派である梅津晃大は、延長10回をひとりで投げ抜いた8月2日のヤクルト戦(ナゴヤD)を最後に一軍登板はなく、大卒2年目は7試合の先発で2勝3敗、防御率3.74に終わった。
柳、梅津らとともに昨季後半にローテーションで腕を振っていた面々は、大卒4年目の笠原祥太郎がプロ入り後初の一軍登板なし。高卒5年目の小笠原慎之介は4先発で1勝3敗、防御率7.11。高卒3年目の山本拓実は5先発含む9登板で1勝3敗、防御率5.59と揃って振るわなかった。即戦力として期待された社会人出のドラフト3位・岡野祐一郎は、9先発含む11試合に登板し2勝2敗、防御率6.17。大卒左腕のドラ2・橋本侑樹は14試合に救援登板し防御率7.41と苦しんだ。
若手投手で充実したシーズンを送ったのは、社会人出の2年目・勝野昌慶。昨秋にヘルニアを発症した影響でスロースタートとなったが、チーム5位の13試合に先発し4勝5敗、防御率3.88をマーク。育成から這い上がってきた来日1年目の23歳ヤリエル・ロドリゲスも後半戦からローテーションに定着し、3勝4敗、防御率4.12と今後への期待を抱かせてくれた。
絶対的守護神に成長した24歳のライデル・マルティネスも、Y.ロドリゲスらと同じく育成契約から飛躍したひとり。今季は40試合の登板で2勝0敗21セーブ、防御率1.13と圧倒的な成績を残し、チームに欠かせない主力へと成長した。
全体的に若手の突き上げは弱かったものの、中堅どころの頑張りもありAクラスに返り咲いた中日。与田体制になってから投手整備で一定の成果を収め、上位チーム追撃の土台は整った。あとは攻撃力アップ。次なる課題克服に期待の若手が上手く融合すれば、2011年以来となるリーグ制覇が見えてくる。