昨季はセパあわせて3人が受賞
12月16日、セ・パ両リーグのベストナインが発表された。日本一に輝いたソフトバンクからは柳田悠岐ら3人が選ばれ、セ・リーグ覇者の巨人からは菅野智之ら12球団最多の5人が選出された。
今季のベストナインでひとつ特徴的だったのが、両リーグとも受賞者に外国人選手の名前がなかったこと。昨シーズンはセ・リーグでダヤン・ビシエド(中日/一塁手)とネフタリ・ソト(DeNA/外野手)、そしてパ・リーグではアルフレド・デスパイネ(ソフトバンク/指名打者)と両リーグ合わせて3人が受賞していたが、コロナ禍での開催となった2020年シーズンは1961年以来、59年ぶりに日本人選手が全ポジションを埋めることになった。
支配下登録できる外国人選手の上限が3人だった1961年シーズンは、ジョー・スタンカ(南海)が15勝をマークしたものの、この年は稲尾和久(西鉄)が42勝を挙げるなど、パ・リーグで20勝以上を記録した投手が4人もいたため、スタンカの成績は特段目立つものではなかった。
野手を見ても、規定打席に到達したのが打率.270のマイク・ソロムコ(阪神/外野)と、打率.253を記録した日系アメリカ人の平山智(広島/外野)の2人だけで、ベストナインを受賞するほどの成績ではなかった。
71年間受賞者が出ていないポジションは…
59年ぶりに両リーグ全員日本人という珍事が起きたベストナイン。これまで多くの外国人選手たちが各部門で受賞してきたが、ポジション別に歴代受賞者を振り返ってみると、セ・リーグの遊撃手部門だけ外国人選手の受賞歴がなかった。
外国人選手にとって最難関と思われる捕手部門では、セ・リーグで1953年3年連続でハワイ出身の日系二世・広田順(巨人)が受賞。パ・リーグでも1954年から2年連続でチャーリー・ルイス(毎日)がベストナインに選出されている。
捕手同様に外国人選手を起用した例が少ない遊撃手部門にフォーカスすると、1954年に首位打者を獲得したラリー・レインズ(阪急)がパ・リーグでベストナインに選出されているが、2リーグ制が導入された1950年以降で遊撃手のベストナインに選出されたのはレインズ1人だけ。
2003年に来日1年目ながら打率.313、25本塁打の好成績をマークしたアンディ・シーツ(当時広島)が記者投票で奮闘したことはあったものの、巨人の二岡智宏に25票差(全体12.9%)で敗れ受賞ならず。今季はMLBのゴールドグラブ賞をにも輝いた名手、アルシデス・エスコバーがヤクルトに加入したが、全盛期の動きからは程遠く、わずか1シーズン限りで退団となった。
NPB球団が助っ人外国人に求めるのはほとんどのケースが「長打力」。どうしても一塁や外野手、指名打者など打撃に特化したスラッガータイプの選手を獲得することが多くなる。二塁を守れる選手も稀で、そもそも遊撃を守れて打撃も期待できる選手は、MLB球団からの需要もあってアメリカでプレーすることを選ぶだろう。
ただ、近年は外国人選手も育成する時代だ。ソフトバンクはリバン・モイネロがセットアッパーに定着し、中日は今季支配下昇格したアリエル・マルティネスが正捕手争いに名乗りを上げた。いずれも育成出身の選手で、今後“育成出身の外国人遊撃手”が一軍の舞台で活躍する可能性もゼロでなない。
来季で2リーグ制に移行してから72年目を迎えるプロ野球。セ・リーグのベストナイン遊撃手部門で外国人選手の名前が読み上げられる日はくるのか。その記念すべき第1号となれば、野球ファンに語り継がれる存在になることは間違いなさそうだ。