進む世代交代
安田尚憲、藤原恭大、佐々木朗希…。将来を嘱望されている選手が多いマリーンズの中で、年齢構成を見ると、育成選手を含めて現時点で“97年世代”の10人がチーム最多となっている。ちなみに昨季も9人でチーム最多だった。
最多の10人が在籍する97年世代は、15年ドラフト1位の平沢大河、同年のドラフトで3位でプロ入りした成田翔、同5位の原嵩、19年に育成選手として加入し20年から支配下選手となった茶谷健太、19年ドラフトでプロ入りした大卒組の佐藤都志也、高部瑛斗、福田光輝、育成の本前郁也、植田将太、そして昨年のドラフトでプロ入りした河村説人(星槎道都大)がいる。
2学年上には昨季シーズン自己最多の9勝をマークした二木康太、1学年上には先発ローテーションで投げた小島和哉、岩下大輝、昨季シーズン自己最多となる40試合に登板した小野郁、1学年下には代走の切り札としてチームトップの23盗塁を記録した和田康士朗、19年にチーム最多の8勝を挙げた種市篤暉、さらに2学年下の安田は3年目の昨季、自身初となる規定打席に到達した。チームの中心となる益田直也、石川歩、美馬学、中村奨吾といった“中堅、ベテラン選手”たちが活躍している中で、徐々にではあるが世代交代も進んでいる。
高卒組は6年目
その中で、チーム最多の“10人”が在籍する“97年世代”も存在感を示していきたい。高卒組の平沢、成田、原は今季でプロ6年目を迎える。平沢はショートを主戦場にしているが、毎年のようにポジションを争うライバルが増え、今年もドラフトで大学ナンバー1ショートと呼ばれる小川龍成、メジャー通算922試合に出場したエチェバリアが加入。競争相手がさらに増えた現状のなかショートで勝負するのであれば、1回のチャンスをどう活かし、どう次に繋げていくかが重要となる。マリーンズファンの平沢に対する期待は大きい。ファンの期待に応えるためにも、“結果”で示すしかない。
成田は昨季2年ぶりに一軍登板し、3試合に登板。初登板こそ無失点に抑えたが、2試合目、3試合目はいずれも失点した。ファームでは2年連続30試合以上に登板しており、あとは一軍で結果を残すだけ。左の中継ぎが手薄なだけに、今季こそ一軍に定着したい。
今季から育成選手となった原は、昨季ファームで17試合に登板し、防御率7.94だったが、10月以降やや肘を下げたフォームとなってから、ストレートのスピードがアップし140キロ台後半を連発。ストレートでの空振りも増え、育成選手となったが、ファームで安定した投球を披露すれば面白い存在になりそうだ。
移籍3年目を迎えた茶谷は、支配下選手となった昨季、31試合に出場して打率.063だったが、シーズンの大半を一軍で過ごした。一軍では“左打ち”の野手に比べて、“右打ち”の選手が少ない。昨季積んだ一軍の経験をどう反省し、どう活かしていくかが、一軍定着へのカギとなりそうだ。
大卒2年目の野手に期待
“大卒2年目”の選手が何人一軍定着し、レギュラーを奪う存在になれるか注目。
投手と野手の違いはあるが、1年目の夏場に先発ローテーションに定着した小島が大卒2年目の昨季1年間先発ローテで投げ抜いた。“打てる捕手”として期待された佐藤は昨季1年間一軍に帯同し、代打で打率.310と1打席で結果を残した。その一方で、スタメンマスクを被った試合は4試合。守備面でも首脳陣からの信頼を得て、田村龍弘、柿沼友哉を脅かす存在になりたい。
イースタン・リーグ2位の打率.344をマークした高部と、オープン戦、練習試合でアピールし開幕一軍を掴むも2安打に終わった福田は、高部が外野、福田はショートと、2人ともチーム内で競争が熾烈なポジション。一軍で試合に出続けるためには、“打って”結果を残し続ける必要がある。
また、彼ら2人の“走塁”にも注目したい。高部は50メートル5秒8という俊足で、ファームではチームトップタイの14盗塁を記録。大学時代も得意にしていたセーフティバントも、10、11月の二軍戦だけで3本決めた。自身が持ち味とする俊足を活かしたプレーを一軍の舞台で、どれだけ披露できるか。
福田はフルスイングに注目されがちだが走塁でも、5月31日の紅白戦で、ライトの捕球体勢を見て二塁から三塁へタッチアップすれば、6月4日の日本ハムとの練習試合でもライト正面のフライで二塁から三塁へ進塁。シーズン中も9月30日の日本ハムとの二軍戦、ライト線に放った当たりで、ライトの守備位置、打球の追い方を見て、一気に二塁を陥れたこともあった。相手の隙を突いた走塁、先の塁を狙った走塁ができる。
過去を遡れば、19年オフに楽天へFA移籍したが、鈴木大地がレギュラーを掴んだのも大卒2年目の13年。当時と現在のチーム状況は違うとはいえ、この年からレギュラーとなり、長年中心選手としてチームを引っ張った。佐藤、高部、福田はまだ2年目ではあるが、“勝負の2年目”と見ても良いだろう。
育成、新人
育成選手の本前は8月17日の楽天との二軍戦以降、先発での登板が増え、9月に3試合に先発し、16回を投げて、防御率0.56と抜群の安定感を誇った。チーム全体で左投手がやや手薄なだけに、昨季後半のような投球を継続してできれば、支配下選手登録のチャンスは十分にありそうだ。植田は昨季終了後に行われたフェニックスリーグで、スタメンマスクを数多く被った。まずは、ファームでのスタメンマスクを被る機会を増やしていきたい。
新人の河村は身長190センチを超える大型右腕。春季キャンプ、練習試合、オープン戦でアピールができれば、一軍の道が見えてくることだろう。
期待の若手がひしめくマリーンズ。チーム最多の10人いる“97年世代”から一人でも多く、一軍で活躍する選手が増えれば、黄金時代の幕開けも夢ではない。
▼ 97年世代
<投手>
河村説人 97年6月18日生
本前郁也 97年10月2日生
原 嵩 97年12月6日生
成田 翔 98年2月3日生
<捕手>
植田 将太 97年12月18日生
佐藤都志也 98年1月27日生
<内野手>
福田光輝 97年11月16日生
平沢大河 97年12月24日生
茶谷健太 98年1月16日生
<外野手>
高部瑛斗 97年12月11日生
文=岩下雄太