エンゼルスの大谷翔平選手

◆ 白球つれづれ2021~第3回・大谷翔平の年俸調停

 メジャーリーグの年俸交渉が例年以上に難航している。

 コロナ禍による各球団の収益構造悪化に加え、今季も先行きが見通せないのが主たる要因だ。年俸調停権を持つ選手が提出する希望額の期限日となった今月15日(日本時間16日、以下同じ)時点では112選手が契約に合意したものの13選手は交渉が折り合わず、調停に持ち込まれることになった。

 そんな中で、米国でも注目を集めているのが、エンゼルス・大谷翔平選手の調停問題である。

 2018年に日本ハムからポスティングによってエンゼルスに入団した大谷の年俸は1年目がメジャー最低年俸額にあたる54万5000ドル(約6160万円)で2年目からは球団が決定権を持っているため、65万ドル(約7200万円)、3年目が70万ドル(約7500万円)と設定されてきた。

 もっとも昨年はMLBレギュラーシーズンが60試合となったため、通常シーズン(162試合制)から大幅な減額となり、実質は25万9000ドル(約2800万円)が支給されている。そして4年目となる今季から年俸調停権を保有する選手となったわけだ。

 ちなみに日本ハム最終年となった2017年の大谷の年俸は2億7000万円。メジャーの掟を承知の上で本人が希望したとはいえ、かなり低価格で海を渡ったことになる。言い方を変えれば、今季からがメジャーリーガー・大谷の真の値打ちを決めるスタートの年となるはずだった。

◆ もつれる理由

 本人の希望額と球団の提示額が折り合わなかった場合に行われる調停。今回、大谷側の希望額が330万ドル(約3億4300万円)に対して、球団側の提示額は250万ドル(約2億6000万円)と報じられている。過去に野茂英雄(99年メッツ)などが年俸調停に持ち込んだ例はあるが、最終的には調停委員会の公聴会を回避して、直前で契約合意している。もし、大谷が調停委までもつれ込むことになれば、日本人選手としては初のケースとなる。

 では、その差80万ドル(約8000万円)は、どうして生じているのか? そこにメジャーでも100年ぶりとなる「二刀流選手」の評価の難しさがある。

 大谷サイドでは、投手と野手で活躍した実績と話題性やチームの看板選手として貢献したプラスアルファも評価してほしい。対する球団側は「投げて、打って、両方となると比較できる選手がいない」と、ペリー・ミナシアンGMも査定の難しさを語る。

 現時点でも大幅な昇給には違いないが、さらに評価を難しくしているのが、大谷の二刀流の現状である。

 ルーキーイヤーの働きは全米中に衝撃を与えた。投げては10試合に先発して4勝2敗、防御率3.31。打っては22本塁打、61打点、10盗塁で打率は.285。ベーブルース以来の本格二刀流でMLBの顔にもなった。だが、2年目は右ひじのトミージョン手術などで投手を封印、それでも打者として主軸を任された。

 しかし、昨年は復活を期待された投手として2試合に登板したが、いずれも早々にKOされ、ストライクすら投げられない。本来ならファームで実戦感覚を掴んでから先発する予定だったが、コロナ禍で調整スケジュールが狂ったことも惨状に拍車をかける形となった。打者としても打率1割台に終わるなど、メジャーで最低のシーズンとなってしまった。仮に1年目に近い活躍を続けていれば今回の年俸提示も250万ドルの倍増以上になっていただろうと指摘する現地記者もいる。

◆ 決着はいかに?!

 大谷にとって、正念場を迎える4年目。昨オフからピッチングの強度を上げ、ミナシアンGMも「今の状態を見て、非常に楽しみにしている」と語っている。昨年のような不振からの脱却には期待が持てそうだ。

 もし、このまま調停にもつれ込めば現地時間2月1日から始まる調停委員会の裁定を受けることになる。双方の関係者以外にMLBの労務担当者や裁定人らが出席する公聴会で、どちらかの主張額が決定する。

 18日、MLBの公式サイトでは各球団が契約延長すべき選手を一人ずつ選出、もちろんエンゼルスでは大谷の名が挙がっている。

 どんな結果が出るにせよ、今季も二刀流・大谷が全米注目の的であることに違いはない。

※金額はいずれも推定で、日本円換算は今季に関するものは104円。それ以外は当時のレートで記載。

文=荒川和夫(あらかわ・かずお)


【荒川和夫・プロフィール】
1975年スポーツニッポン新聞社入社。野球担当として巨人、西武、ロッテ、横浜大洋(現DeNA)等を歴任。その後運動部長、編集局長、広告局長等を経て現在はスポーツライターとして活動中。

この記事を書いたのは

荒川和夫

1975年スポーツニッポン新聞社入社。野球担当として巨人、西武、ロッテ、横浜大洋(現DeNA)等を歴任。その後運動部長、編集局長、広告局長等を経て現在はスポーツライターとして活動中

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