弱点補強の緊急トレード
2年連続の最下位から巻き返しを図るヤクルトは、先発投手陣をテコ入れすべく緊急トレードを行った。右の大砲・廣岡大志を交換相手に、2016年・2017年と2年連続で2桁勝利をマークした左腕・田口麗斗を巨人から獲得。期待値が高かった廣岡を放出してまでのトレードは、投手陣の再建を目指すチームの本気度が伝わってくるものだった。
その田口を迎え入れたヤクルトは、黄金時代を率いた野村克也監督時代から戦力外や自由契約となった選手を多く獲得し、「野村再生工場」として次々に戦力へと変えてきたことで知られている。今年も内川聖一(前ソフトバンク)、宮台康平(前日本ハム)、近藤弘樹(前楽天)、小澤怜史(前ソフトバンク)らを獲得している。
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チームを見渡すと、坂口智隆(前オリックス)が一塁と外野を守れる貴重な存在としてチームを支え、昨季加入した長谷川宙輝(前ソフトバンク)や今野龍太(前楽天)もブルペンに欠かせない存在になりつつある。
一方、今回の田口のようにトレードによってチームに加わった選手たちは、ヤクルトで輝きを放つことができたのだろうか。ここでは、若松勉監督が就任した1998年以降のトレード加入選手の活躍を振り返ってみることにする。
2018年にはタイトルホルダーが誕生
現在チームに在籍している選手では、高梨裕稔と太田賢吾(ともに前日本ハム)のふたりがトレード加入組となる。
高梨は移籍後の2シーズンで39試合(31先発)に登板し、8勝(13敗)をマークしている。日本ハム時代の2016年に新人王を受賞した実績からすると物足りなくも映るが、昨季は小川泰弘に次ぐチーム内2位の94イニングを投げており、先発ローテーションの一員として奮闘しているといっていい。今季も今後のオープン戦の結果次第ではあるが、開幕ローテーション入りの可能性は十分にある。
太田も移籍1年目となる2019年にキャリアハイの90試合に出場。昨シーズンは4試合の出場にとどまったものの、現在は一軍に帯同して元気な姿を見せている。オープン戦でもスタメンで起用されており、ユーティリティープレーヤーとして生き残りを目指す。
すでにヤクルトを退団している選手に目を向けてみると、投手では近藤一樹(前オリックス)と山中浩史(前ソフトバンク)の活躍が光る。2016年シーズン途中にチームに加わった近藤は、2018年にリーグ最多の74試合に登板し最優秀中継ぎのタイトルを獲得。山中も2015年に6勝を挙げ、リーグ優勝に大きく貢献している。その他では無償トレードで加入した山田大樹(前ソフトバンク)も2019年に5勝(4敗)をマークし、先発ローテーションを支えた。
野手では、今浪隆博(前日本ハム)がいぶし銀の活躍を見せた。2015年には68試合の出場ながら打率が3割を超え、複数のポジションを守るなどチームを救っている。その他では、川島慶三(前日本ハム/現ソフトバンク)、2000年代前半には鈴木健(前西武)、高橋智(前オリックス)らがヤクルトに移籍後も主力級の結果を残している。なかでも鈴木は、移籍初年度に打率.317の好成績を残しカムバック賞も受賞した。
ヤクルトには、「野村再生工場」のイメージがあるからか、どうしても戦力外や自由契約からの復活劇に目がいく。しかし、ここに挙げた選手たちはもちろん、古くは大杉勝男(前日本ハム)や吉井理人(前近鉄)、角盈男(前日本ハム)といった大物選手たちもトレードでヤクルトに加入し、しっかりと結果を出した。
田口もまた、過去の選手同様に結果を残すことができるだろうか。注目したい。
【ヤクルトのトレード獲得選手】
※(相手球団/交換選手or金銭)
※1998年オフ以降
▼ 2018-2019年
高梨裕稔、太田賢吾(日本ハム/秋吉亮、谷内亮太)
▼ 2017-2018年
山田大樹(ソフトバンク/無償)
▼ 2016-2017年
屋宜照悟(日本ハム/杉浦稔大)
▼ 2015-2016年
近藤一樹(オリックス/八木亮祐)
▼ 2013-2014年
今浪隆博(日本ハム/増渕竜義)
新垣渚、山中浩史(ソフトバンク/川島慶三、日高亮)
▼ 2012-2013年
田中雅彦(ロッテ/川本良平)
▼ 2011-2012年
楠城祐介(楽天/橋本義隆)
▼ 2010-2011年
小野寺力(西武/鬼崎裕司)
▼ 2009-2010年
渡辺恒樹(楽天/鎌田祐哉)
山岸穣(西武/米野智人)
▼ 2008-2009年
一場靖弘(楽天/宮出隆自)
▼ 2007-2008年
川島慶三、押本健彦、橋本義隆(日本ハム/藤井秀悟、坂元弥太郎、三木肇)
▼ 2003-2004年
田中充、丸山泰嗣(ロッテ/前田浩継)
▼ 2002-2003年
鈴木健(西武/金銭)
▼ 2001-2002年
浜名千広(ダイエー/金銭)
戎信行(オリックス/副島孔太)
▼ 2000-2001年
寺村友和(ロッテ/山崎貴弘)
▼ 1999-2000年
衣川幸夫、代田建紀(近鉄/田畑一也)
▼ 1998-1999年
高橋智(オリックス/松元秀一郎)