広島のドラフト1位・栗林良吏

◆ 最終回:最大の弱点をカバーする新人右腕

 良薬は口に苦かった? 広島のドラフト1位ルーキー、栗林良吏投手が絶体絶命の危機を背負ったのは21日のことだった。

 オープン戦最後の戦い。王者・ソフトバンク相手に1点リードの9回、マウンドに上ると2安打1四球で二死満塁、さらに打者・周東佑京選手にも3ボール2ストライクと粘られる。だが一打逆転の場面でも大物ルーキーは自分を見失うことはなかった。自慢のフォークボールを外角高めに投じて見逃し三振。“プロ初セーブ”でチームに貴重な白星と開幕後の希望をもたらした。

 すでに2日前に、今季のストッパーを任せると通告した佐々岡真司監督は、しびれる場面を貴重な体験としながら「アウト3つを三振で抑えたというところはさすが」と合格点を与えた。

◆ 狙い通りのドラフト?

 昨年の森下暢仁投手に次いで、今年もドラフト上手のチームらしい補強がチームに新風を巻き起こしている。栗林が練習試合を含めた全7試合無失点で首脳陣の信頼を勝ち取れば、ドラフト2位指名の森浦大輔、同3位の大道温貴両投手もオープン戦の好投で開幕一軍を勝ち取っている。

 栗林が社会人・トヨタ自動車出身なら、森浦、大道は大学出身。即戦力の中継ぎ、抑えこそが赤ヘル最大の弱点だったのだから、このまま行けば戦略通りの改善となる。

 5位に沈んだ昨季、エース・大瀬良大地の故障離脱など誤算もあったが、何より転落のポイントは救援投手陣の力不足が大きい。リーグ3連覇時の抑え役である中﨑翔太や今村猛らに輝きはなく、新外国人のテイラー・スコットや塹江敦哉、菊池保則らによる日替わり継投を模索したが、ことごとく失敗。終盤まで勝っているゲームをいくつ落としたか。

 シーズン途中からヘロニモ・フランスアがストッパーに定着して落ち着いたが、投手陣の成績を見ると先発陣の防御率が「3.74」に対して、救援陣のそれは「4.64」でリーグワーストだ。Aクラスから上位進出を狙うには、この部門の整備が必要不可欠である。

 頼みのフランスアが今春、右ひざを痛めて開幕が絶望視される緊急事態となった。最大のウィークポイントに再び暗雲が垂れ込み始めたが、そんな矢先に見えた光明が栗林の存在だ。

◆ ストッパーの必要条件

 ストッパーの必要条件はいくつかある。チームの命運を握る場面での登板が多いので、精神面の強さが求められる。制球不足の自滅はダメ。そして何より打者を押し込む速球と三振を取れる決め球を有していることだ。

 栗林の場合、社会人・トヨタ自動車時代に都市対抗などの大舞台で活躍した実績がある。加えてMAX153キロのストレートに切れ味鋭いフォークボールで三振を取る技術も十分。並みの新人ではない。

 開幕からルーキーが守護神を務めれば、チームにとって2003年の永川勝浩以来18年ぶりのこととなる。その永川が現一軍投手コーチなら、佐々岡監督も現役時代は先発、抑えにフル回転して100勝100セーブを記録している。そうした首脳陣が栗林の素材の確かさを認めたうえでの大抜擢。セ・リーグの新人王レースは阪神・佐藤輝明選手一色だが、栗林がセーブの山を築けば逆転があってもおかしくない。

 愛知・名城大4年時にはプロ志望届を出してドラフトを待ったが指名漏れ、悔しさをバネに腕を磨いてきた。開幕の相手は中日で、かつて憧れた福留孝介選手らとの対決も予想される。

 「徐々に緊張はあるけれど(一発勝負の)都市対抗のような感じではない。大切な場面を任せられたら結果を残すしかない。誰が相手でも100%の力を発揮していきたい」。

 永川コーチの新人時代のセーブ数は「25」。「それを抜くようじゃないとチームは上にいない」と檄を飛ばす。

 古くは“炎のストッパー”津田恒美さんから江夏豊、大野豊、佐々岡現監督ら、カープの抑え投手の系譜は華々しい。栗林が伝説の彼らにちょっぴりでも近づいたとき、カープの上位進出も現実味を帯びてくるはずだ。

文=荒川和夫(あらかわ・かずお)



【荒川和夫・プロフィール】
1975年スポーツニッポン新聞社入社。野球担当として巨人、西武、ロッテ、横浜大洋(現DeNA)等を歴任。その後運動部長、編集局長、広告局長等を経て現在はスポーツライターとして活動中。

この記事を書いたのは

荒川和夫

1975年スポーツニッポン新聞社入社。野球担当として巨人、西武、ロッテ、横浜大洋(現DeNA)等を歴任。その後運動部長、編集局長、広告局長等を経て現在はスポーツライターとして活動中

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