ニュース 2021.04.02. 17:30

コロナ禍で大量離脱 ヤクルト・高津監督を支える「ノムラの教え」

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【プロ野球ヤクルト浦添キャンプ】高津臣吾コーチ(右)と握手をする野村克也氏=2014年2月18日、浦添運動公園 写真提供:産経新聞社
話題のアスリートの隠された物語を探る「スポーツアナザーストーリー」。今回は、3月31日に行われたDeNA戦で、スタメン野手5人を欠きながら2連勝した東京ヤクルトスワローズ・高津臣吾監督にまつわるエピソードを取り上げる。
「何としてもチームに貢献したかった。自分のスイングができました」

~『サンケイスポーツ』2021年4月1日配信記事 より(村上宗隆、試合後コメント)

本拠地・神宮で阪神に開幕3連敗したあと、3月30日、敵地・横浜スタジアムで3点差をひっくり返してDeNAに逆転勝ち。さあ、ここから反撃開始だ! と意気込んだヤクルトナイン。そんななか、31日の試合前に、まさかの報せが飛び込んで来ました。

西田明央と球団スタッフが新型コロナウイルスに感染したことが判明。西田と、濃厚接触者の疑いがある山田哲人・青木宣親・内川聖一・西浦直亨らの1軍登録が抹消され、5人のスタメン野手が入れ替わる事態になったのです。

西田は前日、30日の試合にフル出場しており、特に症状も出ていませんでした。なぜ感染がわかったかというと、30日に球団外のチーム関係者に陽性判定が出たため、球団は首脳陣、選手、スタッフ全員にPCR検査を実施。その結果、西田が陽性と判明したのです。

今シーズン(2021年)のプロ野球は、1軍登録に関して「特例2021」というルールが定められています。新型コロナ感染の疑いが出て登録を抹消された選手は、感染の恐れなしと判断された場合、通常の10日間を待たずに再昇格が可能、というものです。

このルールによって、その後に濃厚接触者ではないことが判明した山田・西浦・スアレスは4月1日からチーム合流が決定。しかし、濃厚接触者と判定された青木と内川は、13日まで自宅待機することになりました。開幕からチームを支えてくれた両ベテランをしばらく欠くことになり、高津監督は厳しいやりくりを強いられることに……。

こうなった以上、代役の若手に期待する他ありません。3月31日のスタメンは前日のオーダーから野手5人の名前が消え、まるでオープン戦のようなラインナップになりました。

「1番・山崎晃大朗(右)、2番・中村悠平(捕)、3番・塩見泰隆(中)、4番・村上宗隆(三)、5番・太田賢吾(一)、6番・中山翔太(左)、7番・奥村展征(二)、8番・元山飛優(遊)、9番・高梨裕稔(投)」

2番に中村を据えるなど、いかにも苦しい布陣で、前日の今季初勝利に大喜びしていた知人のスワローズファンは一転、「終わった……」とメールして来たほどです。ただ、ものは考えよう。今回抜擢された若手たちにとっては千載一遇のチャンスでもあるわけで、特に「塩見・村上・太田」のクリーンアップは「おお!」と思いました。

そして彼らも期待に応えます。3番・塩見は3回に先制の2点タイムリーを放つと、5回にも貴重な追加点となるタイムリーを放ち、その直後に4番・村上が左中間にダメ押しの2ラン。5-0とし、試合を決定付けました。5番・太田も、得点には絡めませんでしたが、初回にヒットを放っています。急造のクリーンアップ3人で10打数4安打5打点は、高津監督にとっても嬉しい限りでしょう。

試合は6回、先発の高梨が、DeNAのルーキー・牧秀悟に3ランを打たれましたが、ヤクルトは4投手のリレーで逃げ切りDeNAに連勝。突然チームを襲った危機をひとまずしのぎました。試合後、高津監督はこうコメントしています。
『高津監督は「こんなこともあっての野球だと思うし、こんなことあっての人生だと思う。つらいとき、ピンチのときにどうやって乗り越えるかということは、人間の大きさに関係してくることだと思う」と前を向いた。』

~『日刊スポーツ』2021年3月31日配信記事 より

すごくいいコメントだなあ、と思いました。これを聞いて感じたのは「ノムラの教え」です。現役時代、故・野村克也氏の薫陶を受けた高津監督。クローザーに抜擢してくれたのも野村氏でした。

3月28日の開幕第3戦は、その恩師・野村氏の追悼試合として行われました。対戦相手の阪神も野村氏が3年間指揮を執ったチームであり、矢野燿大監督も教え子の1人。イニングの合間、ビジョンに在りし日のVTRや発言などが流れました。野村氏への感謝の思いと愛情が伝わる素晴らしい演出でした。

へえ、と思ったのは、試合中ビジョンに掲出された、高津監督のコメントです。
『【一番印象に残っている言葉】

勝って9回を投げ終わって、必ずかけてくれる言葉は「ありがとう」か「サンキュー」でした。長く一緒に野球をやらせてもらいましたが、キツく怒られたり、逆に褒めてくれたりというのはあまりなかったです。』

~3月28日 ヤクルトvs阪神戦 野村克也元監督追悼試合 ビジョン演出より

このコメントには、少し補足が必要かも知れません。以下は、野村氏のもと、ヤクルト・阪神の両方でプレー。両チームで4番を務めた広澤克実氏が、元チームメイトである高津監督と矢野監督について語ったコメントです。
『2人が怒られたのを見たことがない。「怒る」と「叱る」は違う。怒るは感情に任せて厳しい言葉をかけられることで、叱るは理路整然となぜなのかを指導してもらうこと。野村さんは怒ることはなかったし、叱ってばかりだった。』

~『スポニチ Sponichi Annex』2021年3月29日配信記事 より

高津監督も矢野監督も、野村氏に怒られたのではなく「叱られた」のです。広澤氏の言うように「怒る」と「叱る」は似ているようで、根本的に違います。選手が結果を出せなくても「何で打たれるんだ!」「打てないんだ!」とただ罵倒するのではなく、「どうしてそういう結果になったのか? それはこういう理由だ。どうしたら問題点が改善されるか、自分の頭でよく考えてみろ」と諭すのが野村流。それがすなわち「叱る」なのです。

そして、選手への感謝を忘れないのも野村流。広澤氏のコメントをさらに引用します。
『もちろん、私も野村さんがいたから、今がある。情がたくさんある人だった。4番打者とは…を教えてもらったし、打てなくても4番打者の立ち居振る舞いなどは厳しかった。19年12月。カツノリらと食事を一緒にした。ボヤキも言われたが、「お前には感謝しているよ」と言ってくれたのがうれしくて、「私の方が感謝しております…」と。これが生前最後のやりとりだった。』

~『スポニチ Sponichi Annex』2021年3月29日配信記事 より

そんな野村イズムを受け継いだ高津監督。選手への感謝、思いやりを忘れていないのは、31日の試合後に語ったこのコメントにも表れています。
『「一番悔しいのは出られない選手。こんなこともあるのが野球であり、人生。元気に戻ってきてくれる。それまでしっかり頑張る」と必死に前を向いた。』

~『サンケイスポーツ』2021年4月1日配信記事 より

まだまだ、ヤクルトにとっては厳しい日々が続きますが、見方を変えれば、絶好の“育成チャンス”を得たことになります。この苦難を乗り越えた先に、通常時には得られない大きな収穫が待っているかも知れません。下馬評は散々ですが、手負いのツバメ軍団、意外とセ・リーグを面白くしてくれるかも知れませんよ。

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