“ぶっつけ本番”の復帰戦
楽天の田中将大投手(32)は17日、東京ドームで行われた日本ハム戦に先発登板。
8年ぶりとなる日本球界のマウンドは、5回を投げて被安打4、うち本塁打が2本で3失点。敗戦投手となった。
今季から古巣に戻ってきたかつてのエース、東北のヒーロー。
2007年の入団からチームを創設初の日本一に導いた2013年まで、通算175試合に登板して99勝35敗3セーブ、防御率2.30という圧巻の成績をマーク。
それから7年にわたるメジャーリーグでの戦いを一旦終えて、震災から10年目という2021年に日本球界へ復帰。この日が待望の復帰戦となった。
足の故障により出遅れ、開幕から3週間が経ってのマウンド。二軍での実戦登板もない、いわゆる“ぶっつけ本番”。コンディションが心配されたが、いきなり先頭の西川遥輝を空振り三振に仕留めるなど、立ち上がりから不安を拭い去るようなボールを投げ込む。
ところが、二死走者なしから近藤健介には1球もストライクが入らず歩かせてしまうと、つづく中田翔に対しては捕邪飛と思った打球を捕手の太田光が見失い、アウトをひとつ取り損ねてしまうというシーンも。
その後、カウント1ボール・2ストライクからの5球目、力を入れて投げ込んだ154キロの速球がやや高めに浮くと、中田はこれを豪快にフルスイング。快音とともに放たれた放物線は、東京ドームの左中間スタンド中段へ。思えば2月の「日本復帰後はじめての実戦登板」でも一発を浴びた相手に、「公式戦の初登板」でも一発を浴びるスタートとなってしまった。
味方が1点を返した直後の2回裏も、先頭の石井一成に1ボールからのストライクを取りに行ったストレートを完ぺきに弾き返され、ライトスタンドに突き刺さるソロを被弾。
その後、3回から5回は無失点で片づけただけに、この日はことごとく“一発”に泣く登板に。田中の日本復帰初戦は5回を投げて75球、被安打が4、与四球はひとつ、5奪三振で3失点。チームが1-4で敗れたため、田中に2012年8月19日・西武戦以来の日本での黒星がついた。
田中の投球を、有識者たちはどのように見たのだろうか…。
17日放送のCSフジテレビONE『プロ野球ニュース』に出演した大久保博元氏は、「初回の田中vs.中田」を最大のポイントに挙げる。
2球で捕邪飛に打ち取れた可能性もあったが、これについては「正直、キャッチャーフライで終わっていた場面です。でも、これで気持ちが切れて終わるようなピッチャーではないですからね」と、田中のメンタルに大きな影響はなかったことを推察。
一方で、まずかった点として挙がったのが勝負球の選択。1ボール・2ストライクから、中田の懐を狙ったボールに力みが出てしまったか、逆球になった154キロを完ぺきに弾き返されてしまう。
このシーンについては、「最後、太田がなんでインコースで勝負したのかなと。ボールにしたいなら、最初から高めで良かったのにな、というのは結果論でなくあって。あの投げ損ないに関しては、“ぶっつけ本番”というのが響いちゃったのかなと」と、捕手目線で失投を振り返った。
また、同じく番組で解説を務めた斎藤雅樹氏は、「たしかに高くなりましたけど、球威はありました。たしかに投げ損ないかもしれないですが、あの高めを打った中田がすごいなと」と、打った中田を称賛。
気になる足元の状態については、「やはり高めにボールが行くというのは、踏ん張りが効いていないとか、足の影響があるのかなという気もしないでもないですね」と見つつも、この日はまだ“初戦”。
大久保氏も最後は「今はまだオープン戦で、3試合目に投げたくらいの感覚だと思います。次回は本物の将大が見られる」とまとめたように、日本での再スタートは、その一歩目を踏みだしたばかり。真価が問われる、田中将大の“次戦”に注目だ。
☆協力:フジテレビONE『プロ野球ニュース2021』