ホークスOB・スペシャル対談!
今年もコロナ禍で幕を開けたプロ野球。
9回打ち切り、外国人選手の合流遅れなどなど、いつもと違う中で迎えた球春到来だったが、今季も開幕から様々なドラマが生まれている。
その中でも特に注目したいのが、5年連続日本一を目指すソフトバンクだろう。
今季も開幕直後にエース千賀をケガで欠きながら、それでも首位争いを繰り広げている。
そんなソフトバンクの現状や今後の見どころ、そしてホークスのこれまでについてなど、4月16日(金)の『BS12プロ野球中継』副音声解説で、ホークスの解説を務めた斉藤和巳さんと、新垣渚さんにお話を聞いた(※編集部注:取材日は4月16日)。
取材・構成=永松欣也/撮影=須田康暉
和田が一番頑張っている先発陣
―― ピッチャー出身のお二人に伺いたいのですが、千賀(滉大)投手の抜けた先発投手陣をどうみていますか?
新垣:ホークスはいつも通り一戦一戦大事に戦っていくチームですし、(誰かがいなくなれば)誰かが常にカバーするチームですから、千賀の抜けた穴はそろそろ東浜が上がってきて埋めてくれると思います。全然悪くないんじゃないですか?
斉藤:うーん、トータルでわっち(和田毅)が一番頑張っている気がするけどね(笑)。もっと若い選手が頑張れ!って思いますね。
―― お二人とも現役時代に和田投手と共にローテーションを形成してましたが、今季の和田投手の投球をどう見ていますか?
新垣:投げれば常に完投、完封を目指しているピッチャーですので、その辺は昔から全然変わらないなと思いますね。衰えも少ないですよね。昔に比べたらもちろん変わるとは思うんですけど、衰えを出さないようにする努力というのは感じますね。
―― 今年で19年目、41歳のベテランですが、長く活躍できている秘訣はどの辺にあると思いますか?
斉藤:若いときから、もちろん今もですが(たくさん)練習していますし、体のケアとかも敏感に、繊細なくらいに若いときからやってますよね。僕とか渚はもうそこらへん、な? 勢いで行く感じのところがあったから(笑)。
新垣:(笑)
斉藤:入団1年目の頃から体のことも「そこまでせんでええやろ」って思うくらいやっていましたからね。イニング途中でアンダーシャツを長袖から半袖に着替えたりとか。それくらい繊細に感じる、考えるタイプの選手なんです。若いときから意識が高かったですよね。
「ポスト松田」は栗原かモイネロ?!
―― ベテランといえば、野手では松田宣浩選手が今季も元気です。とはいえそろそろ松田選手を脅かす若手の出現にも期待したいところですが「ポスト松田」で期待する若手選手はいますか?
斉藤:サードでということですか? サードではいないですよね。外野に若い選手が出てきて栗原(陵矢)がサードに回るという形しか今はないと思いますね。サードで「ポスト松田」という形で今すぐとか、来年期待できる若手は今のホークスにはいないですね。それくらい松田の壁は高いですよ。
―― ではサードとしてではなく、松田選手のチームリーダー的な役割を担うという意味での「ポスト松田」はどうでしょうか?
新垣:いない。名前が出てこないですよね?
斉藤:うーん……モイネロくらいですかね(笑)
―― 意外なところから名前出てきましたね(笑)。
新垣:森(唯斗)くらいじゃないですか?
斉藤:森って若いか? 20代?
―― 29歳みたいですね。
斉藤:うそぉ?(笑)
新垣:老けてるな……(笑)。いずれにしても、松田や川島慶三を抜くくらいの若手が出てこないといけないですよね。
斉藤:やっぱりピッチャーじゃなくて、そこは野手がリーダー的な役割を担ってもらいたいですよね。今の感じでいったら栗原に頑張ってもらうということしか期待できへんかな。周東(佑京)は……違う気がするな(笑)。難しいな。
ホークスの若手はなぜ育つ?
―― いま栗原、周東という名前が出ましたけど、ホークスは毎年のように若手がブレイクするイメージがあります。お二人が今シーズン注目している若手選手はいますか?
斉藤:栗原、周東クラスになると……なかなかおらんよな?
新垣:いたらチームも盤石ですけどね。
斉藤:(出てくるとしたら)2年後、3年後じゃないですか、あそこクラスの選手は。栗原にしてももっと早く出てきてもおかしくなかったんですけどね。バッティングは評判が高かったですしポジションがキャッチャーということもあったので(ブレイクに時間がかかった)。
―― 現時点では名前は挙がってこないですか?
斉藤:今年のドラフト1位(野村朋也/花咲徳栄)、2位(笹川吉康/横浜商業)、3位(牧原巧汰/日大藤沢)の子達が2~3年後に出てきてくれたらいいですよね。評判は高いので。
―― ホークスの若手が次々と育つ秘訣はどの辺にあると思いますか?
新垣:二軍、三軍とあるので常に実戦経験を豊富に積めることじゃないですか? 二軍だけであれば全員が試合に出られなくて経験も積めないわけですから。
斉藤:それはあるな、確かに。
新垣:三軍から一軍に上がるというのはあり得ないですから、まずは二軍に上がらなきゃいけない。そうなると二軍と三軍の選手達の競争が激しくなってよりハングリーになりますしね。
偉大な先輩2人がチームに復帰した影響
―― お二人の元チームメイトであり先輩でもある小久保(裕紀/ヘッドコーチ)さん、城島(健司/王会長付特別アドバイザー)さんがチームに復帰しました。お二人の復帰で感じる変化、影響などを感じることはありますか?
新垣:(コロナ禍で)最近グラウンドに行けてないから分からないなぁ(笑)。
斉藤:なあ(笑)。その空気感を感じられていないんですよね。
新垣:キャンプですらなかなか行けなかったですからね。本当に味わいたいんですよね、どういう雰囲気なんだとろうというのをね。でもベテランは気が引き締まっているんじゃないですかね? それが若手にも伝染していい雰囲気になっていると思いますね。
斉藤:ベテランの選手達は小久保さんと一緒にブレーもして、人となりとかは分かっているはずなので、若手選手はそういうことを何かしら聞いていると思うんですよね。なので、そこで気が引き締まってスタートしたとは思いますね。そういう良い影響は多かれ少なかれ何かしらあると思います。
―― 城島さんについてはどうですか?
斉藤:城島さんに関してはあんまりグラウンドに行かないので、現場に凄い影響はないかもしれないですけど、ポイントポイントで選手と接したりされているんですよね。去年でいったら甲斐拓也が苦しんでいた時にリード面でちょっと声を掛けるとか、そんな風に遠目から常にチームを見守ってくれていると思いますね。
気になる今季のキーマンは?
―― ホークスの優勝に向けて、今後のキーマンを投手・野手から1名ずつ挙げてください。
斉藤:野手は周東ですね。工藤監督と小久保ヘッドコーチが頑なに1番で使うと決めている感じがするんですよね、オープン戦からずっと外さないですから。でも走る方がスペシャリストと言われていますが今年は盗塁死も多いですし、守備も見えないエラーも結構あります。打つ方もまだ波があり、走攻守に渡ってまだまだという感じがしています。大事なポジションですし、監督、ヘッドの期待に応えてほしいところですよね。
ピッチャーだと開幕投手の石川(柊太)ですね。千賀、東浜(巨)が帰ってきたら状況は変わるかもしれませんけどチームが良いスタートを切るためには開幕投手がしっかり計算できて、という流れで行ってもらう方がいいですからね。
新垣:野手のキーマンは選手が誰というよりも、“2番バッター”じゃないかなと思います。本当は僕も周東がキーマンだと開幕前から思っていましたけど、和巳さんが先に名前を挙げられてしまったので(笑)。そこが固定されるとホークスらしい打線が復活するんじゃないかなと思います。柳田が2番を打っているようじゃ作戦もなかなか立てつらいと思うんですよね。本当だったら今宮(健太)だったり中村(晃)だったりするのかもしれませんけど、そこが固定化されると打線にちょっと余裕もできるのかなと。
ピッチャーは千賀がいなくなった先発にもう一枚欲しいですよね。その穴を東浜が埋めるのか、それとも下から(新しいピッチャーが)上がってくるのか。キーマンというよりはその辺をちょっと楽しみにしています。中継ぎ、後ろは沢山いますし、森が一時離脱(※)したのは痛いですけど、その代わりにモイネロがいますし。今年に限っては延長戦もないですから、沢山いる中継ぎをバンバン投入していけますしね。まぁピッチャーに関しては沢山いるのでそんなに心配はしていないですけど。
※取材日の前日・4月15日に一時離脱。その後すぐに復帰も、4月30日に「左肘関節化膿性滑液包炎」が発覚して再び戦列を離れることとなった。
03年のホークスと今のホークス、強いのはどっち?
―― お二人が活躍して日本一になった03年当時のホークスも錚々たるメンバーでしたが、日本シリーズ4連覇中の現在のホークスと対戦したらどっちが強いですかね?(笑)
斉藤:そりゃあ……
新垣:昔のチームでしょ? 昔のチームが勝つでしょ? ね?
斉藤:そりゃ、僕も昔のチームが勝つって言いたいですよ(笑)。03年のチームも凄かったですから。でも昔のチームの方が強いってなると野球のレベルが(当時から)上がっていないような感じにもなるので、それはそれでちょっと残念なことになるじゃないですか? だから今のチームの方が強いのかもしれないということにしておきます!
でも僕らが当時一緒にやっていたメンバーは端から見ても凄い選手ばっかりで、メジャーリーガーも沢山いますから。そうなると、短期決戦なら分からないですけど、長期で戦えば(勝つかもしれない)……。メンタルの強さはこちらサイドの方が多分あると思いますから(笑)。
―― ちなみにその日本シリーズの第一戦は斉藤和巳さんと千賀投手の投げ合いでしょうか?
斉藤:いやぁ、それは分からないですけど。
新垣:いい試合すると思いますよ。
―― お二人だったら柳田(悠岐)選手をどう攻めますか?
斉藤:そりゃ、とことんインサイド投げますよ。
新垣:今はちょっと状態が良くないですけど、打ってる時はやっぱり行きますよね。
斉藤:そうそう、(インコースの)膝元とかね。当たってもいいくらいの気持ちでガンガン行きます。申し訳ないけど。
全然OKじゃなかった初球のカーブ
―― 最後にお二人の現役時代の話も伺いたいと思います。対戦相手で嫌だったバッター、苦手だったバッターは誰でしたか?
斉藤:誰やろ?
新垣:西武の和田(一浩)さんじゃないですか? フォーク落ちずにいつも打たれてたイメージありますよ。
斉藤:あぁ、和田さんイヤやったなぁ……。クライマックスでやられたんや、そのフォーク。
新垣:結構高めが好きなバッターでしたよね。
斉藤:そうそう。がっついてくるもん、高めの変化球。すごいボール球でも振ってくるもんね。
新垣:ある程度決めてるんでしょうね。ここら辺までは打つって。
斉藤:まぁそうやろうな。「金森(栄治/元西武、ソフトバンク打撃コーチ)理論」やな。金森さんがそうやねん、高めの抜けてきた変化球はがっついてでもいけっていうね。
―― 新垣さんは誰が苦手でしたか?
新垣:僕は新人の時は近鉄の磯部(公一)さんが苦手でしたね。
斉藤:へぇー!意外!そうか、お前右バッターはそうでもないもんな。
新垣:(キャッチャーのサインで)初球カーブOKだよって、それで投げたらバックスクリーンまで運ばれて。「初球カーブ、ダメじゃないですか…」って思いましたけど(笑)。
斉藤:(笑)。でも磯部さんも凄いな。お前と対戦して初球のカーブをよう打つな。逆に凄いな。
新垣:やっぱり左バッターの方が苦手だった感はありますね。
風よりもマウンドが気になったあの球場
―― 苦手な球場などもありましたか?
新垣:僕は京セラドームですね。
斉藤:うそぉ?
新垣:近鉄には二年間勝てなかったんです、いつも高村(祐)さんとの投げ合いに負けて。二年目の最後の方で「今日の先発は高村さんじゃない、ラッキー!」と思ったら先発が岩隈(久志)で(笑)。
斉藤:(笑)
新垣:「もう絶対勝てない!」って思ったんですけど、でもなぜか勝てたんですよね。
斉藤:京セラのブルペンは嫌やったな、あの消音のな? 球が走ってないみたいに感じるんよな。
新垣:そうでしたね。
斉藤:僕が苦手だったのは千葉マリンですね。
―― やっぱり風ですか?
斉藤:風よりもマウンドがあんまり好きじゃなかったんですよね。プレートの前のところにラバーが土の中に埋まってあるんですけど、それがすごく浅いんですよね。僕みたいにプレートに足をかけないピッチャーは滑るんです。あとはマウンドが少し低く感じたのと、風が強いときは変化球がいつもより大きく曲がってしまってそれがちょっと気持ちが悪かったり。あんまり好きな球場ではなかったですね。
―― 逆に得意な球場はどこでしたか?
新垣:西武ドームですね。
斉藤:へえ〜、あぁそう?
新垣:西武戦によく投げさせられたというのもあるんですけど、西武ドームのマウンドは好きでしたね。でも一番は今のPayPayドームでしたけど。
斉藤:ビジターだと、東京ドームが好きでしたね。
新垣:でもスピードガンがあんまり出なくないですか?
斉藤:出えへんけど、キャッチャーがすごく近くに感じられて好きやったなぁ。マウンドも高いし。京セラドームも好きな方でしたね。屋外だと楽天の球場(楽天生命パーク宮城)も好きでしたね。
お話はまだまだ尽きませんが、お時間がきてしまいましたので、今回はこの辺で。