左打者の被打率.167の田中靖洋
マリーンズのリリーフ陣は今季、開幕から右投手が中心に構成されている。
“勝利の方程式”のハーマン、唐川侑己、益田直也の3人は右投手で、現在一軍登録されているリリーフ陣も田中靖洋、小野郁、佐々木千隼、河村説人、土居豪人といずれも右投手だ。他球団を見渡しても、各球団1人はベンチに左のリリーフ陣が控えているなかで、右投手のみというのはパ・リーグではマリーンズだけだ。
左のリリーフが一軍に不在のなかで、左打者に抜群の強さを発揮しているのが田中だ。被打率を見ても右打者が.385(13-5)に対し、左打者には被打率.167(18-3)と抑え込む。今季ここまで12試合に登板しているが、そのほとんどがイニング途中からの登板で、なかでも“左打者”に打順が巡ってきたところでマウンドに上がる機会が多い。
3月26日のソフトバンクとの開幕戦は1-3の6回に先発・二木康太が、柳田悠岐に2ラン、グラシアルに二塁打を打たれ、左の中村晃に打順が回ってきたところで田中が登板。中村晃を初球のカットボールで一直、続くデスパイネを空振り三振、左の栗原陵矢をシュートで遊ゴロに打ち取った。
3月31日の楽天戦も0-0の6回に先発・岩下大輝が茂木栄五郎に先制の2点適時打を許し、左の鈴木大地に打順が巡ってきたところで、田中が登板した。田中は鈴木を2球目のストレートで遊ゴロに打ち取り火消し。
4月3日の日本ハム戦も先発・美馬学が先頭の浅間大基に中安、二死後、中島卓也を左安で一、三塁とピンチを作り、3回に適時三塁打などこの日2安打されている左打者の西川遥輝の打順のところで田中がマウンドへ。2球目に一塁走者の中島卓也に盗塁を決められたが、西川をインコースやや高めの135キロのカットボールで投手ゴロに打ちとり無失点。
4月21日の日本ハム戦も、0-4の6回から登板した2番手・東條大樹が一死から4者連続の四球で1点を失い、なお一死満塁の状況で登板し、左の近藤健介を135キロの落ち気味のカットボールで空振り三振、中田翔を1球で遊飛に仕留めた。
開幕してまだ1カ月ということもあり、対戦数は少ないが中村晃(ソフトバンク)、栗原陵矢(ソフトバンク)、森友哉(西武)、茂木栄五郎(楽天)、近藤健介(日本ハム)といった左打者を無安打に抑えている。
ファームで安定した左のリリーフは?
右投手が中心のリリーフ陣ではあるが、左のリリーフが1枚いるだけで起用法の幅は広がる。そういった意味でも、左のリリーフの台頭が待たれるところ。
ファームで安定した投球を見せているのが、高卒6年目の成田翔だ。今季ここまでファームで12試合に登板し、10イニングを投げて、防御率1.80。3月23日の日本ハムとの二軍戦で、難波侑平に一塁ベースに当たる二塁打を打たれてから、4月25日の西武との二軍戦で長谷川信哉にレフトへサヨナラ打を打たれるまで打者28人に対し1本も安打を許さなかったということもあった。
4月27日に行ったオンライン取材で成田は「左バッターを抑えないといけないと思っています。そのなかで角度のあるまっすぐ、遠く見えるようなスライダー、さらにインコースのシュートで食い込ませる。その3つを軸に投げています」と、左打者の被打率は.095(21-2)と完璧に近い投球内容だ。
「球速はそこまでこだわっていないんですけど、いかに打者が打ちにくそうなボールを投げるかを自分は考えている。角度だったり、コースを丁寧に投げられているかなと思います」と手応えを掴む。
左打者に対して抜群の安定感を誇る右の田中とともに、左投手も一軍のリリーフ陣に割って入るようなことがあれば、リリーフ陣のバリエーションが広がるはず。右のリリーフ陣の頑張りとともに、左のリリーフ陣の奮起にも期待したい。
文=岩下雄太