競技の垣根を越えた競演!
シーズンもいよいよ大詰めを迎え、Bリーグのチャンピオンシップが開幕。リーグの頂点を目指して激しい戦いが繰り広げられる短期決戦を勝ち抜くためにはどんなことが必要なのか――。今回、ヤクルト・スワローズで日本一、MVPの実績を持つ川崎憲次郎氏と東芝(現川崎ブレイブサンダース)、リンク栃木(現宇都宮ブレックス)などで優勝経験を持つ伊藤俊亮氏の対談インタビューを実施。ポストシーズンを勝ち抜く秘訣を語ってもらった。
(聞き手=田中大貴 構成=吉川哲彦)
「1993年の日本シリーズは夢のマウンドだった」
――伊藤さん、いよいよBリーグのチャンピオンシップ(以下CS)が開幕しました。
伊藤:本当に楽しみです。コロナ禍の中、無観客開催の対戦もありますが、こういう状況でもいろんな方に届けられるものがあると思うので、みんなで頑張ってほしいですね。
――川崎さんはBリーグ、バスケットボールとの関わりはいかがですか?
川崎:何年か前のオールスターを観戦したことがあります。雰囲気はすごく良いですよね。臨場感がすごくありますね。
――それでは本題に入っていきたいと思いますが、Bリーグとプロ野球のポストシーズンについて似ているところと違いについて、お話をうかがいたいと思います。
伊藤:長いシーズンを戦った後にトーナメントが待っているのは同じだと思いますが、プロ野球に比べるとまだ試合数が少ないので、そこはプロ野球に追いつくべく頑張っていかないといけないと思います。
川崎:野球は試合数がたくさんありますからね。バスケットの場合はそんなに毎日毎日走れないですよね?
伊藤:Bリーグができる前からの流れで毎週土日に試合があって、今やっと平日にも試合が行われるようになってきているんですが、ケガのないように、疲弊しすぎないようにスケジューリングする体制をまだ整えられていないのが現状です。
――プロ野球のプレーオフとも言えるクライマックスシリーズ、セリーグ、パ・リーグの2位と3位チームで争われるファーストステージの勝利チームとセ・パ優勝チームで争われるファイナルステージは、リーグ優勝のチームに1勝のアドバンテージが与えられます。これはBリーグにはない仕組みですよね。
伊藤:ありません。レギュラーシーズンの結果が反映されていることはわかりやすいし、リーグ戦を戦ってきてそういう形で得られるものがあるのは良いなと思います。
川崎:短期決戦で1勝のアドバンテージがあるのは大きいですし、どれだけゲーム差が離れていても1勝なのはどうかなと思ってはいるんですが、アドバンテージがあるのは当たり前のことだなと思いますね。
――Bリーグファイナルを振り返ると、過去3回はレギュラーシーズンの成績下位のチームが勝って優勝しています。伊藤さんが所属した千葉も2シーズン続けて成績下位のアルバルク東京に敗れていますが、ファイナルにはやはり魔物がいるんでしょうか?
伊藤:リーグでどれだけ勝っても、ファイナルの勝ち方は全く別の勝ち方になってくる。千葉の場合はCSでホーム開催権を獲得するにはどれくらい勝たなきゃいけないのかということをやっていて、ファイナルまでは進めてもそこで勝つ準備ができていなかったというのが、私がいた時にはありました。
――短期決戦の中でラッキーボーイの出現というのもチームにとっては大きいと思うんですが、川崎さんはどうお考えですか?
川崎:突然出てくるんですよね。脇役だった人が急に出てきたり、お祭り男というか目立つ存在が出てくるんですよ。そういう時は絶対優勝しますね。不思議です。
――1993年の日本シリーズではMVPでしたが、あの時は「やってやったぞ!」という思いだったんですか?
川崎:僕にとってはあのシリーズは夢のマウンドだったんです。というのも、92年もヤクルトはリーグ優勝しているんですが、僕はケガで1年間戦列を離れていたんですよ。93年のシリーズ第4戦で野村(克也)監督が「行け」と言ってくれたうれしさと、前年度の悔しさが入り混じったマウンドだったんです。第7戦も投げさせてもらえて、勝たせてもらったので忘れられないですね。
――では最後に、ご自身がチームの優勝のためにやってきたこと、果たしてきたことを教えてください。
川崎:自分のためでもあるんだけど、でもやっぱりチームプレーなので、自分の存在をわきまえないとダメですよね。僕も93年はケガあがりで何の実績もない選手だったので、とにかくもうチームのために一生懸命働くんだと。それ以外は一切考えなかったですね。
――ちなみに勝負の時のルーティーンは何かありました?
川崎:はい。球場に行く時に同じ道を通るとか、同じ下着を穿くとか、たくさんありますよ。で、負けたら全部変えるんです。野球選手はゲン担ぎがめちゃめちゃあります。
伊藤:私も同じで、チームのために働けるかどうかだと思います。個人的にやっていたのはずっとエネルギーを出し続けること。声をかけ続けることでもいいし、そういう小さなことからやっていく。ルーティーンとかゲン担ぎもその一環だと思っていて、勝つために何をすればいいかとなった時に、「この間勝った時は何が原因で勝てたのか」と考えて、細かいことや一見関係ないことでもかき集めて、この一戦に絶対に勝つんだという気持ちでいられること。それが短期決戦や大事な一戦の勝利につながるんじゃないかと思います。
――身近な一つひとつのことが大事なんですね。お二方、今日はありがとうございました!
日本生命 B.LEAGUE FINALS 2020-21
GAME 1:5月29日(土)15:05
GAME 2:5月30日(日)15:00
GAME 3:6月1日(火)19:05
※2戦先勝方式、GAME 2で優勝決定の場合はGAME 3の実施なし
【試合会場】横浜アリーナ
▼ 川崎憲次郎
1971年、大分県生まれ。津久見高校から1988年ドラフト1位でヤクルトスワローズ入団。プロ1年目から一軍で活躍し、90年から2年連続2桁勝利を挙げた。93年の日本シリーズではMVPを獲得するなどの活躍で日本一に貢献。
98年には17勝を挙げて最多勝利投手と沢村賞を獲得した。2000年のシーズンオフに中日ドラゴンズにFA移籍したが、肩の故障のため1勝もできず、2004年限りで引退した。
現在は野球解説者として活躍している。また地方再生のプロデューサーとしても活動中。
▼ 伊藤俊亮
神奈川県立大和高校を経て、2002年中央大学卒業。
現役時代は強靭な肉体と204センチの長身に走力を兼ね備えたフィジカルプレイヤーとして日本代表でも長きに渡って活躍。2018年5月、千葉ジェッツでのシーズンを最後に16年間に渡る現役生活に幕を下ろした。引退後、千葉ジェッツのフロントスタッフとして職務に就いていたが2019年に退職。現在はその豊富な経験を生かし、バスケットボールの普及に努めている。