立ち上がりはドタバタも…
阪神が前夜の大敗を引きずることなく、本拠地でキッチリとヤクルトにリベンジ。
嫌な流れを断ち切ったのは、高卒2年目・19歳の若き右腕だった。
この日の先発を託された西純矢は、岡山の創志学園高から2019年のドラフト1位で入団した虎の有望株。
今年は春のキャンプからたびたび一軍での実戦登板を任されるなど、矢野燿大監督をはじめ首脳陣から大きな期待をかけられていたが、層の厚い投手陣の中でなかなか一軍デビューのチャンスが巡って来ず。
それでも、ファームでローテーションの一角として回り、6試合・34イニングを投げて2勝1敗、防御率3.44と地道なアピールが実って、ついにプロとしての第一歩を踏みだした。
後に「緊張してどうなるかと思った」と振り返った通り、初回はいきなり先頭から二者連続で四球を与える最悪のスタート。
それでも、山田哲人と村上宗隆には開き直って直球を投げ込み、ともに3ボールまで持ち込まれながらも連続のフライアウト。二死を奪うと、5番のホセ・オスナに対してもフルカウントから最後は真っすぐ。145キロをズバッと決めて見逃し三振に仕留め、初回は33球を要しながら無失点で切り抜けた。
2回もいきなり青木宣親に四球を与えたが、ドミンゴ・サンタナをゲッツーに斬るなど、この回は3人で終了。
3回には9番からの打順を内野ゴロ3つで片付け、はじめての三者凡退を記録する。
4回も3番・山田哲人からの打順を3人で斬り、0-0のまま迎えた5回も二死から四球を許したが、最後はピッチャーの田口麗斗を内野ゴロに打ち取って5回を無失点。気が付けば無安打のまま、スコアボードに5つのゼロを並べてみせた。
するとその裏、先頭で打順を迎えたところで代打のコール。
無安打投球は続いていたものの、この日は5回・87球でマウンドを降りることが決まる。
プロ初登板・初勝利のためにはこのイニングで得点が入らなければ…という中、代打の原口文仁は三振に倒れたものの、トップに返って近本光司がライトポール際に叩き込む先制弾。
この一打によって、西純矢にプロ初勝利の権利が転がり込んだ。
後半は自慢のリリーフ陣が若き右腕のバトンを受け、同じくドラ1入団の馬場皐輔が2回を無安打・無失点に封じる好リリーフ。
2-0で迎えた8回は岩崎優が二死から3連打を浴びて1点を失ったものの、残った一・三塁のピンチは山田を中飛に打ち取り、なんとかリードは死守。
その裏、ジェリー・サンズが一発を放って点差を2点に戻すと、9回はクローザーのロベルト・スアレスが危なげなく締めて3-1の勝利。プロ初登板・初先発の西純矢に嬉しいプロ初勝利が舞い込んだ。
「投げっぷりが良いですよね」
ドキドキのプロ初登板・初先発で、5回を投げて4四球も無安打・無失点の快投。若き右腕の船出を、球界の大先輩たちはどのように見たか…。
19日放送のCSフジテレビONE『プロ野球ニュース』に出演した解説者の斎藤雅樹氏は、「一番良かったのは、ストライクが入らない中でも取りに行かなかったこと」と語る。
「初回は緊張感がこっちまで伝わってきた」と不安定な立ち上がりを振り返りつつ、「ストライクが入らない中でも、しっかりと攻めて投げきったことが凡打を生んだと思う」と解説。
さらに、「3回までは59球のうち変化球が8球で、それが4回・5回は28球を投げて変化球が19球だったんですよね。この辺はキャッチャーの梅野がうまくリードしてあげていたかなと」と、女房役のアシストも讃えた。
また、同じく解説の井端弘和氏も、「投げっぷりが良いですよね」と高評価。
無安打に抑えることができた要因については、「初対戦のバッターがほとんどだと思いますので、ヤクルト打線も受けていたかなと。1打席目で様子を見ていたところを、2打席目は配球を変えられてという。そういったところで抑えられたのかな」と分析。やはり捕手・梅野のリードと、それに応えて投げきった右腕の奮闘をポイントに挙げた。
☆協力:フジテレビONE『プロ野球ニュース2021』