野球とバスケの代表戦を熱論!
バスケットボール日本代表は男女ともに6月から東京オリンピックへ向けた国際強化試合を行う。女子は10日から、『三井不動産カップ2021』にてポルトガル代表と、男子は23日よりイラン代表と対戦する。今回はプロ野球界・バスケットボール界で日本代表として国際大会に出場経験のあるG.G.佐藤さん、五十嵐圭選手(新潟アルビレックスBB)の対談インタビューを実施。代表戦を戦う意義、国際大会の魅力を語ってもらった。
(聞き手=本田将一郎 構成=吉川哲彦)
経験したことがない緊張感
――6月からバスケの日本代表の国際強化試合が行われますが、まずG.G.佐藤さん、国内リーグと国際大会の空気の違いについてお伺いしたいんですが、いかがですか?
G.G.:日本代表に選ばれたのが2008年の北京五輪の時が初めてでイメージがつかなかったんですが、普段のシーズンからレギュラーを獲るために一生懸命やっていましたので、大丈夫かなと思っていたんです。でも、韓国やキューバ、アメリカと向かい合った時に、経験したことがない緊張感が間違いなくありましたね。言い訳になってしまいますが、僕ら野球選手は長期のリーグ戦を戦っていて、短期決戦に慣れていない部分がありますから、プロとして情けないんですが逆にアマチュア選手が出たほうが良かったのかなと思います。
――国際試合について、五十嵐選手はいかがですか?
五十嵐:自分が日本代表でプレーしていた時期はBリーグがまだなくて、海外のチームと試合をする機会も少なかったので、アウェーの雰囲気や対戦相手の特徴など、把握できていない部分がたくさんありました。そういったところから慣れていくのが大変だったことを覚えています。2006年の世界選手権は日本での開催で、それまでとは違った緊張感もありました。
――北京五輪代表として青木宣親さん、森野将彦さん、稲葉篤紀さんとともに外野手の4枠に選出された当時の心境を改めて聞かせていただけますか?(※2007年のアジア予選では上記の3人と和田一浩さんとサブローさんが代表メンバー)
G.G.:自分でいいの?と思いましたね。予選も行ってないので、申し訳ない気持ちのほうが強かったです。予選に出たメンバーから選ぶのが筋だとは思いました。
――「まさか」という驚きのほうが大きかった。
G.G.:僕はメンバーに選ばれると思っていなかったんですよね。追加で招集されたので、五輪に行くなんてことはこれっぽっちも思っていなかったんですよ。突然選ばれたのでイメージできなかったです。今回の東京五輪も新型コロナウイルスで急に誰かが出られなくなるケースがあるかもしれないので、選手全員が心の準備をしておいてほしいです。佐藤輝明選手(阪神)はこの間「五輪はTVで見ます」なんて言っていましたが、今の活躍を見ていると選ばれるかもしれない。他人事ではないと考えてもらいたいですね。
――野球の代表戦は国際試合が少ないことや、ストライクゾーンの違いなど、他の競技と比べて難しい部分があると思いますが、G.G.佐藤さんがプレー面で一番難しいと感じたことはどんなことですか?
G.G.:ストライクゾーンは審判の癖によって全然違うので、その審判の癖もわからないので難しいですね。ストライクゾーンが違うと意識するバッティングが崩れるので、あまり気にしないようにしていたが、やはり選球眼のいい選手や出塁率のいい選手を選んだほうがいいと思います。
――日の丸を背負って戦う重みは現地で感じられましたか?
G.G.:準決勝で韓国に負けた時に、韓国の選手がウイニングボールを捕った時にうずくまったんですよ。めちゃめちゃ喜んでいたんです。僕たちがそうなったら、たぶん同じ行動はしなかったと思うんです。韓国は僕たち以上の想いで向かってきていたんだなと、その瞬間にすごく感じました。
――韓国戦といえば8回の守備で落球がありました。あの場面はやはり重圧があったんでしょうか?
G.G.:その前にも平凡なゴロをエラーしているんです。普段なら捕れるはずのボールをミスするわけですからとんでもない場所だなと思いましたし、次にフライが来たら捕れる自信がなかったです。よく「飛んでくるなよ」って言いますが、そんな状態でした。
――五十嵐選手もやはり日の丸を背負う重圧はありましたか?
五十嵐:日の丸の重みも感じてはいましたが、プロ野球に比べるとバスケットボールは国内での認知度が低い状況で、世界と戦えるレベルにも達していなかったですし、失うものがなかった。逆に、これから世界基準になっていかないといけないという思いのほうが強かったです。挑戦者としての思い切りの良さというのは、当時の選手はみんなあったと思います。
勝利や金メダルを目指す意義
――世界との戦いで、世界との差を感じたところはありましたか?
G.G.:北京大会はオールプロで戦った大会だったんですが、星野監督は言いました、「金メダル以外はいらない」と。もちろん僕も金メダルを獲ろうと思って行ったんですが、「何故金メダルを獲らなきゃいけないのか」という話はなかったんです。その先の野球界の発展なのか、子どもたちに夢を与えるためなのか、そのへんの意図がわからなかった。なので、金メダルが潰えた瞬間に気持ちも切れてしまいましたし、次へ向かっていくチャレンジ精神もなくなった。そこに何か大義名分があればというのがあったので、今回のJAPANに関しても「何をもたらすことができるのか」というプラスアルファを、稲葉(篤紀)監督は選手に伝えていく必要があるのかなと感じてます。
――勝利や金メダルを目指す意義を明確にして、チーム内で共有することが目の前の相手に立ち向かう原動力になる勇気になるということですね。G.G.佐藤さんはムードメーカーでもあったと思うんですが、ご自身がチームでやってこられたことを教えてください。
G.G.:いや、国際大会でそんな盛り上げるとかできないですから(笑)。普段の力以上のものは出せないし、自分の持っている力の中でベストを尽くそうというところにフォーカスしようと思っていました。試合前もみんな本当に緊張しちゃって喋ってないですから(笑)。ペラペラ喋っていたのは里崎(智也)さんだけ。あの人たぶん心臓ないですよ(笑)。
――よくお立ち台で「キモティー!」というのをやっていらっしゃいましたが、北京ではそういうこともなかったですか(笑)。
G.G.:稲葉さんも新井(貴浩)さんも無言でしたし、そこで「キモティー」とか言い出したらヤバいです(笑)。金メダルを獲ったら言おうと思っていましたが、試合前は無理です。
――この6月からバスケット日本代表は国際試合を戦い、バスケットLIVEでも配信されます。G.G.佐藤さんはバスケットの試合はご覧になりますか?
G.G.:Wリーグの富士通にお友達がいたので現地に見に行ったこともありますし、仙台89ERSは応援していてこの間のプレーオフもバスケットLIVEで見ました!
――ありがとうございます。AKATSUKI FIVEの戦いを皆さんで応援していきましょう! 本日はありがとうございました!
▼ G.G.佐藤
佐藤隆彦。1978年千葉県市川市出身。桐蔭学園高等学校→法政大学→フィラデルフィア・フィリーズ1A→西武ライオンズ(現・埼玉西武)→フォルティチュード・ボローニャ1953(イタリア)→ロキテクノ(クラブチーム)→千葉ロッテマリーンズ
2008年、北京五輪前のリーグ戦で打率.309、本塁打21、打点62の活躍で北京オリンピック野球日本代表に選出される。北京五輪では予選リーグで5試合に先発出場。オランダで本塁打を放つなど勝利に貢献した。しかし、準決勝の対韓国戦では3失点に絡む2失策。アメリカとの3位決定戦でも落球の失策を犯すなど、「メダルを逃したA級戦犯」として大バッシングを受けた。
▼ 五十嵐圭
1980年、新潟県上越市出身。北陸高校で全国大会を経験、進学した中央大学で頭角を表し、日立サンロッカーズに入団。スピード豊かな司令塔として、当時日本代表のヘッドコーチに就任したジェリコ・パブリセヴィッチ氏の抜擢により代表に選出される。2003年FIBAアジア選手権、さらに06年、日本で開催されたFIBA世界選手権に出場した。Bリーグの誕生とともに、地元の新潟アルビレックスBBに移籍。41歳を迎えたが、20代当時から衰えないスピードとベテランらしいゲーム運びで、今でもクラブに欠かせない存在となっている。
女子日本代表…『三井不動産カップ2021』
・6月10日(木)19時00分~ vsポルトガル代表 @神奈川
・6月12日(土)15時00分〜 vsポルトガル代表 @神奈川
・6月13日(日)15時00分〜 vsポルトガル代表 @神奈川
男子日本代表…『国際強化試合2021』
・6月23日(水)19時00分〜 vsイラン代表 @宮城
・6月25日(金)19時35分〜 vsイラン代表 @岩手
・6月27日(日)15時00分〜 vsイラン代表 @岩手
バスケットLIVEで生配信