ニュース 2021.07.06. 17:30

大谷翔平が挑むオールスターの地“クアーズ・フィールド”と日本人メジャーリーガーたちの縁

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米大リーグ、エンゼルスの大谷翔平。オールスター戦で投打の「二刀流」でのプレーも期待される(共同)=2021年7月2日 写真提供:共同通信社
話題のアスリートの隠された物語を探る「スポーツアナザーストーリー」。今回は、オールスターに投打二刀流での出場が決まった大谷翔平と、彼が挑むオールスターの「舞台」にまつわるエピソードを取り上げる。

エンゼルス大谷翔平の快進撃が止まりません。一時、本塁打ランキングでリーグトップと5本差に離されながら、週間MVPに輝く「6戦6発」やヤンキース戦での「2打席連続弾」などのハイペースで単独トップに。6月の月間MVPにも選出された勢いを受け、今度は松井秀喜に並ぶ日本人最多タイの31号と、快挙のニュースが並びます。

歴史的なシーズンを歩む大谷にとって、さらなる注目を集める舞台が来週やって来ます。史上初の「投打二刀流」での選出が決まったオールスターゲームと、日本人初出場となるホームランダービーへの参戦です。

今年(2021年)の開催地はロッキーズの本拠地コロラド州デンバー。標高1600メートル超の高地でボールが飛びやすく、「打者天国」と言われるクアーズ・フィールドが舞台です。
『ロッキー山脈の麓にあるデンバーは、海抜1610メートルの高地に位置していることから気圧が低く、空気抵抗が弱い。そのためクアーズ・フィールドでは、平地の球場に比べて9%ほど打球の飛距離が増すとされている。打者と投手のいずれが有利かを示す指標であるパーク・ファクターでは、90年代は常に120を超えていた。これは平均より20%以上も多く得点が多く入ることを示している。事実、98年のオールスターも31安打が乱れ飛び、13-8でアメリカン・リーグが勝利。合計21点は大会史上最多であった』

~『THE DIGEST』2021年6月22日配信記事 より

それだけに、ホームランダービーでは柵越え連発だけでなく、とんでもない飛距離の「ビッグフライ」への期待感も。さらにこの地は、日本人メジャーリーガーにとって実に縁起のいい球場であることも、大谷の活躍を後押ししてくれそうな予感を抱かせます。今回はそんな「クアーズ・フィールド日本人メジャー伝説」について振り返ります。

1996年の野茂英雄(ドジャース):自身初のノーヒットノーラン


“打者天国”クアーズ・フィールドで、球史でただ1人ノーヒットノーランを達成した偉人。それは本拠地ロッキーズの選手ではなく、日本人メジャーリーガーのパイオニア、野茂英雄(当時ドジャース)です。

野茂にとってメジャー2年目の1996年9月17日(現地時間。以下同)、3割打者を5人も擁する超強力ロッキーズ打線を110球で料理しての快挙達成でした。

この偉業がアメリカでも高く評価されているのは、“打者天国”の地での達成だったことに加え、試合前からの雨で開始時間が2時間以上遅れ、21時過ぎに始まったころには気温は5度にまで下がっていた……という投手にとってさらに不利な状況だったからです。

にも関わらず、達成直後の野茂のコメントはあまりにも淡白! ただ、そんなマイペースぶりこそが野茂らしさであり、極限状況でもノーノーを達成できた要因の1つなのでしょう。
『ノーヒットノーランより、勝てたことの方が僕にはうれしかった。なぜ、(まわりは)こんなに騒ぐんかなァという感じですね。何ででしょう? まぁ皆が喜んでくれているから、これでよかったんでしょうね』

~『Number 408号 1996 奇跡と真実』より(野茂英雄のコメント)

2007年の松坂大輔(レッドソックス):ワールドシリーズで日本人初先発


クアーズ・フィールドでの日本人初、といえば、レッドソックス時代の松坂大輔が演じた「ワールドシリーズ日本人初先発初勝利」も外せません。

2007年10月27日、ロッキーズとのワールドシリーズ第3戦に先発した松坂は5回1/3を投げて2失点。打ってもメジャー移籍後初安打となる2点タイムリーヒットを記録し、日本人初のワールドシリーズ勝利投手となったのです。

なお、ワールドシリーズでは過去、松坂以外にも上原浩治、前田健太など6人がのべ23試合に登板していますが、先発したのは松坂が1試合、そして2017年のダルビッシュ有(ドジャース)の2試合だけ。つまり、クアーズ・フィールドでのこの1勝は今のところ日本人投手唯一のワールドシリーズ勝利でもあります。

松坂の勝利。そしてチームメイトである岡島秀樹の活躍もあって、2007年のシリーズはレッドソックスが4連勝で世界一に。クアーズ・フィールドでつかんだ優勝トロフィーとともに、松坂はこんな言葉でメジャー初年度を振り返っています。
『大変な1年でした。苦しいと思ったことはありましたが、最後まで長く野球ができて良かったです。最後に勝者になれて、もう言うことはありません』

~『日刊スポーツ』2007年10月30日配信記事 より(松坂大輔のコメント)

一方、このときの対戦相手で、球団史上初めてワールドシリーズにコマを進めたロッキーズには松井稼頭央が在籍。クアーズ・フィールドでの第3戦は、「松坂大輔vs松井稼頭央」という元西武ライオンズ同僚対決としても話題に。松井は後輩・松坂相手に初回先頭打者安打を放つと、この試合で「ワールドシリーズ日本人初盗塁」を記録しています。

2016年のイチロー(マーリンズ):日本人初のメジャー3000本安打達成


2016年8月7日、当時マーリンズ所属のイチロー(当時42歳)が敵地コロラドで行われたロッキーズ戦の第4打席に三塁打を放ち、メジャー史上30人目の通算3000安打を達成しました。

当時のイチローは代打起用が増え、この日は「6番・センター」で8試合ぶりにスタメン出場。偉業まであと1本に迫りながらもなかなかその日が訪れず、めぐりめぐってクアーズ・フィールドでの達成となったのです。その待たされた分だけ、ファンや仲間たちの喜びもひとしおでした。
『この2週間強、ずいぶん犬みたいに年取ったんじゃないかと思うんですけど、あんなに達成した瞬間にチームメートたちが喜んでくれて、ファンの人たちが喜んでくれた。僕にとって3000という数字よりも僕が何かをすることで僕以外の人たちが喜んくれることが、今の僕にとって何より大事なことだということを再認識した瞬間でした』

~『Full-Count』2016年8月8日配信記事 3000本安打達成会見全文より(イチローのコメント)

日本人メジャーの先人たちが数々の金字塔を打ち立てて来たクアーズ・フィールドで、大谷翔平はどんな伝説を残してくれるのでしょうか。注目のオールスターホームランダービーは7月12日(日本時間13日)、そしてオールスター本戦は13日(日本時間14日)に開催されます。
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