オフは状況に応じた打撃練習に取り組む
「もっと頑張ってアピールしなくちゃなと思います」。
ロッテ・菅野剛士は、シーズンの約半分を終えてここまでをこのように振り返った。
昨季はシーズン自己最多の81試合に出場して、打率.260、2本塁打、20打点、出塁率.389をマークし、守っても外野で60試合、一塁で12試合に出場したが外野、一塁ともに無失策と、レギュラーに近い存在までにのぼりつめた。
20年シーズンに向けての自主トレでは「強いまっすぐを1球で仕留める練習をしていました」と話していたが、今年も「パ・リーグに多い強いピッチャーを打つのはもちろんなんですけど、試合に応じた状況判断しながらの打撃というのを考えながらやったりしました」と明かした。
状況に応じた打撃を練習に取り入れたのは、昨年一軍で経験したことが大きかったという。「アウトになるにしても、ランナーを進めたり、球数を放らせたりというところは求められている。そういうのをもっと磨けるように、武器になれるようにオフシーズン、キャンプで取り組みました」。
2月21日のDeNAとの練習試合では0-0の初回無死一塁の場面で、二ゴロで一塁走者の藤原恭大を二塁へ進めるなど、さっそく状況に応じた打撃を披露した。
開幕直後は存在感も…
開幕してからは2試合連続で無安打だったが、3月28日のソフトバンク戦では代打で岩嵜翔から一時逆転となる第1号2ランを放つと、本拠地・ZOZOマリン初戦となった3月30日の楽天戦ではスタメン復帰しマルチ安打をマーク。「アピールしなくてはいけないんですけど、試合に勝つことが最優先」。開幕直後低調だった打線のなかで、6試合連続安打を記録するなど一際存在感を放っていたのが菅野だった。
バットだけでなく、守っても3月26日のソフトバンク戦では中村晃が放ったファーストライナーをスライディングキャッチすれば、走っても4月1日の楽天戦で菅原が投じたボールを捕手の下妻が見失い、バックネット方向に転々としている間に二塁走者の菅野が一気にホームインした。
攻走守にアピールし、いよいよレギュラー定着するかと思われたが、連続試合安打がストップした4月4日の日本ハム戦以降は、なかなか“H”のランプを灯すことができなかった。
「競争なのでそこでヒットがでなかったら、自ずと試合の出場数も減ってくる。試合数が減ったから打てなかったというわけではなくて、単純にちょっと打てなくて焦っていた部分もある。良い結果に結ばなかったのかなと思います」。
4月25日に一軍登録を抹消され、二軍で再調整となった。降格後は5月9日の楽天との二軍戦で3四球、1死球と、4打席全てで出塁すれば、6月1日のDeNAとの二軍戦では3安打し、6月3日に再昇格を果たす。
再昇格後は代打で出場も
再昇格後は13試合に出場したが、そのうちスタメンでの出場は3試合。主に1打席で結果を求められる代打での出場が多かった。ちなみに6月は代打で打率.167(6-1)、1本塁打、1打点なのに対し、スタメンで出場したときは打率.333(9-3)と好成績だった。
『6番・レフト』で先発出場した6月8日のヤクルト戦では、第3打席、先発・奥川恭伸が1ボール2ストライクから投じた4球目の外角低めのスライダーをひろうように技ありのレフト前ヒットを放つと、6-3の7回無死一塁の第4打席、一塁走者の和田康士朗が初球に二盗、吉田大喜が投じた続く2球目のチェンジアップを一ゴロで和田を三塁へ進めた。続く安田尚憲が適時打を放ち、自主トレから意識してきた状況に応じた打撃が得点に結びついた。
その一方で代打では6月22日のソフトバンク戦で岩嵜から本塁打を放ったものの、3-3の8回二死満塁の場面で代打で登場した6月20の西武戦で、2ボール1ストライクから平良海馬が投じたややボール気味のストレートに手を出し一邪飛に打ち取られるなど、もったいない打撃が多かった。
代打での1打席とスタメンでの4打席では、打席内での考え方など違ってくるのだろうかーー。
菅野は「再昇格してからは代打でいくことが多かったので、代打でいくときはある程度ボールを読んだり、データを見たりして打とうという感じでした」と明かし、「基本代打は1打席なので、結果を出したいのはもちろんなんですけど、その気持ちが強すぎてよくない結果につながったというのはあります」と自己分析した。
7月1日に一軍登録抹消されてからは、「自分のやることは変わらず、試合のなかではファームとはいえ、“1打席目は初球からいこう”、代打で出ることもあるので、代打のときとかは強い意識を持ってやっています」とテーマを持って試合に臨んでいる。
菅野が一軍登録抹消された後、7月3日に昇格した同じ外野手の藤原恭大が打率.429、1本塁打、4打点の活躍を見せるなど、チームの5連勝に大きく貢献している。だが、菅野もまだまだ負けてはいられない。
「バッティングでアピールして、打って活躍したいというのが大きい。とはいえ、守備ももちろん、この間(のオリックス戦で)しょうもないミスをしてしまったので、走攻守で躍動できるようにチームの起爆剤であったり、勢いをもたらせるような存在になりたいです」。
前半戦は悔しい結果となっているが、どうシーズンを終えるかが重要だ。残りのシーズンでも、菅野の存在が必要になってくるときが訪れるはずだ。そのときに、どういう働きを見せるかがカギとなってくる。再び一軍の舞台で輝くため、今は二軍で爪を研ぐ。
取材・文=岩下雄太