ロキテクノ富山・飯塚亜希彦選手 [写真提供=プロアマ野球研究所]

◆ 首脳陣に元プロがズラリ

 休部や廃部、統合によって企業チーム数の減少が顕著な社会人野球。

 一方で、近年この舞台に新規参入するチームも決して少なくない。

 その一つが、北信越地区のロキテクノ富山だ。

 2012年にクラブチームとして始動。それから年々強化を進め、今年1月に日本野球連盟が認定する会社登録の企業チームとなった。

 藤田太陽監督(元阪神など)や水田圭介コーチ(元西武など)といった元NPB選手が首脳陣を務めており、昨季限りで中日を自由契約となった石川駿も今年から選手兼コーチとして加入している。そして、このチームでプロから注目を集めているのが、エースの飯塚亜希彦である。

▼ 飯塚亜希彦(ロキテクノ富山)
・投手
・182センチ/83キロ
・右投右打
・上越高→新潟医療福祉大

<主な球種と球速帯>
ストレート:143~148キロ
カーブ:115~118キロ
スライダー:126~128キロ
フォーク:130~133キロ

◆ 巨人三軍を相手に好投

 上越高時代は全国的に無名だったが、新潟県内では評判の右腕だった。

 新潟医療福祉大に進学後も早くからリーグ戦で登板。レベルの高いリーグの中で、なかなか上位進出は叶わなかったとはいえ、その素材の良さは注目を集めていた。

 ロキテクノ富山に進んだ後も1年目からエース格となり、昨年6月に行われた巨人三軍とのプロアマ交流戦でも3回を投げて被安打1、無失点と好投を見せている。

 そんな飯塚の実力を確かめるべく、5月28日に行われた社会人野球日本選手権の北信越地区予選に足を運んだ。

 相手の信越硬式野球クラブはクラブチームだが、元々は企業チームのNTT信越が前身であり、都市対抗や日本選手権の常連となっている北信越地区きっての有力チームである。

 試合はロキテクノ富山が幸先良く3点を先制したものの、5回には守備の乱れもあって逆転を許す。2点のビハインドとなり、これ以上の失点は許されない一死二塁の場面から、飯塚がマウンドに上がった。

 立ち上がりは少し変化球のコントロールが不安定だったが、何とか打者2人をともに遊ゴロに打ち取ると、6回からはエンジン全開で3者連続三振をマーク。

 その後も信越硬式野球クラブ打線を全く寄せ付けず、4回2/3をパーフェクトと圧巻のピッチングを見せた。試合は9回裏にロキテクノ富山が追いつき、最後は4番を打つ中井雄輝(愛知工業大)のサヨナラ3ランで劇的な逆転勝利をおさめている。

◆ 9球団スカウトの前でアピール

 フォームは左足を大きく2度上げる、いわゆる二段モーションが特徴的。少し重心の上下動があるのは気になるものの、とにかくフォームに躍動感があるのが長所だ。

 ややスリークォーター気味で投げ込み、ボールの角度はそれほどないが、テイクバックで早めに肘をたたみ、シャープに腕を振って投げ込むストレートは勢い十分だ。

 この日の最速は146キロだったが、見た目にはそれ以上の速さが感じられた。110キロ台のカーブで上手く緩急をつけられるのも、ストレートが速く見える要因となっている。

 一方、課題は決め球となる変化球。スライダー、フォークともにしっかり腕を振って投げられているが、どちらも少し変化が早いように見えた。もう少し打者の近くで変化するようになれば、もっと空振りを多く奪えるようになるだろう。

 また、この日はパーフェクトピッチングだったため、走者を背負っての投球は見ることができなかった。二段モーションのフォームだけに、クイックでどこまで球威を保てるかと言うのも気になるところだ。

 課題はあれど、ストレートの勢いや全体的なコントロールなどは社会人球界の中でも上位のレベルにある。この日のスタンドには9球団のスカウトが集結するなど、絶好のアピールになったことは間違いない。

 秋のドラフト会議に向けて引き続き、注目していきたい投手である。

☆記事提供:プロアマ野球研究所


BASEBALL KINGの配信番組にも出演している西尾典文を主任研究員とし、ドラフト情報を中心にプロ野球、アマチュア野球に関する記事を配信する野球専門ニュースサイト。ドラフト候補に関する各種データも充実している。

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西尾典文

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