ショウアップナイター エピソード55
<エピソード21 ~あたかも気づいていないような表情で……その対応も“松井流”~>
~今年2021年、放送開始から「55周年」のシーズンを迎えたニッポン放送「ショウアップナイター」。これを記念し、中継だけでは届けきれない取材情報や解説陣の“ここだけの話”など、「55」のエピソードを紹介していく連載企画~
ショウアップナイター実況担当・洗川雄司アナウンサーが、ニューヨーク・ヤンキース時代の松井秀喜に救われた“窮地”について明かした。
今年2021年に55周年を迎えるニッポン放送ショウアップナイターは、「ショウアップナイタースペシャル」としてメジャーリーグ中継も実施してきている。その駐在のためにアメリカへ何度も赴任していた洗川雄司アナウンサーが、現・ニッポン放送ショウアップナイター55周年特別広報大使 松井秀喜氏とのヤンキース時代のエピソードを語った。
「私は入社2年目の2002年、メジャーリーグ中継のためシアトルマリナーズの大魔神・佐々木主浩さん、イチローさんを追ってシアトルに赴任しました。その数年後、今度はニューヨーク・ヤンキースの松井秀喜さんの中継・取材ということでニューヨークに赴任しました。
私が赴任したころの松井秀喜さんは手首の怪我があったり膝の怪我に苦しんだりと満足に試合に出られなかった時期でもありました。そんな中、松井さんはメジャー復帰にむけてマイナーリーグの1Aや2Aの試合に出場していましたので、私も普段のメジャーリーグの取材であれば、こういったマイナーリーグの球場を巡るということは無かったのですが、結果的にマイナーリーグの球場にも足を運ぶことができました。中でも一番記憶に残っているのが、マンハッタンの南にあるスタテンアイランドという島があるヤンキースの1Aの球場。この球場、バックネット裏に座るとセンター後方に自由の女神が見えるという素晴らしいロケーションの球場なんです。更に、記者席がある上に無線LANが通じているので取材環境としては非常に恵まれており、当時はもの凄くカルチャーショックを受けました。
そして迎えた9月12日のデビルレイズ戦、8番・DHで松井秀喜選手の名前がコールされると場内の観客からスタンディングオベーション! 松井選手の復帰をお客さんは温かく迎え入れました。結局この日の松井選手は4打数4安打の大活躍。試合後の取材で、チームメイトに対しては『僕は怪我では無くてちょっと休んでいただけだったから4安打も打てたんだよ』というジョークを飛ばしたんだというエピソードを明かしてくれました。また、『怪我から復帰しただけでここまでスタンディングオベーションで迎えられたという事は心に残っている』と話してくれました」
「そんな松井さんにご迷惑をお掛けしたエピソードをご紹介しましょう。エンゼルスの本拠地があるアナハイムへヤンキースが遠征したときのこと、私は試合終了後ホテルに戻ってパスポートが無い事に気がつきました。
『確か……左のズボンのポケットに入れていたはずのなに……パスポートがない!』
ホテルの部屋の中を探しても見当たらず、翌日の球場でも見当たらず、困り果てていました。その日の試合終了後の松井秀喜さんのインタビューの際、ふと松井秀喜さんの足元を見ると赤い手帳のようなものが見えました。見覚えがあるなぁとよく目を凝らしてみると、なんと日本のパスポート。もしかして私の物なのかなぁと思い、全ての取材が終わった後、松井選手に恐る恐る訪ねてみました。
『あの~、もしかして私のパスポートではないでしょうか?』
すると、松井さんはあたかも気が付いていなかったような表情で『ん? これ、お前の?』と言って手渡してくれたました」
「後で聞いてみたところ、試合前の取材時にヤンキースのベンチで私はパスポートを落としてしまったらしく、それを見つけたヤンキースのチームメイトが『日本のパスポートだが、松井の関係者のものか?』と言って手渡してくれたそうです。松井さんのお陰で私のパスポートは無事手元に戻ってきた、いまだから話せるとんでもない失態エピソードでした」