ぶっつけ本番、気になる千賀の状態
野球日本代表・侍ジャパンは24日に強化試合を行い、楽天に3-5で逆転負け。
7回からリリーフ登板した千賀滉大が8回に2点適時打を浴び、これが決勝点となった。
昨季は投手三冠に輝く活躍を見せた日本を代表する右腕であるが、今季のキャンプはリハビリ組からのスタート。
それでも4月には今季初登板にこぎつけたが、復帰戦の守備中に左足首を負傷して緊急降板。「左足首の靱帯損傷」という診断を受け、戦線離脱を強いられていた。
再び一軍のマウンドに戻ってきたのは7月6日のこと。しかし、そこで3回途中10失点KO。またも二軍に戻ることになり、その状態が不安視されていた。
迎えた24日、この日は7回から阪神・梅野隆太郎とのコンビで久々のマウンドへ。
いきなり先頭のディクソンに安打を浴び、犠打で一死二塁とピンチになったものの、黒川史陽は伝家の宝刀・フォークで空振りの三振。炭谷銀仁朗もフォークで右飛に斬って無失点で切り抜ける。
しかし、続投した8回も先頭の山﨑剛に安打を許し、ここも楽天サイドは犠打で送って一死二塁。オコエ瑠偉は一ゴロで二死となったものの、走者を三塁に進められると、連続四球で満塁に。
ここで打者一巡、ディクソンに2打席続けてセンター前に運ばれて2者が生還。なおも二死一・二塁から小郷裕哉に内野安打を浴びて再び満塁となったが、最後は黒川を内野フライに仕留めて2イニングを2点で終えた。
試合後にブルペンで“再確認”も
この日は2回を投げて42球、被安打は4、四球が2つに1奪三振で2失点。
試合後、オンライン取材に対応した右腕は「自分の現状を把握できた」と収穫を語る。
「良くも悪くも、投球の内容のなかで自分のことが改めて分かったこと。それが大きい」と千賀。
久しぶりの実戦のマウンド、そして日の丸を背負っての戦いを通じ、「改めて自分のまだまだな部分がしっかり分かった。力も入りましたし、ぐちゃぐちゃなところもあった」とし、「その中でも、今の僕でも活かし方はいろいろあるな、というのが見えた」点を収穫として挙げた。
また、いわゆる“ぶっつけ本番”となるが、「投げたり、一歩目のスタートだったりというところも不安なくやれているので、身体は順調に回復しています」と故障明けの身体に関する不安はないことを強調。
試合後にブルペンに入ったことも明かし、「40球ぐらいですかね。傾斜(マウンド)でやりたいことがあったので」。投げてみて気になった「フォーム全体のバランス」を調整したのだという。
結果を見れば、不安をぬぐい切れないまま最後の実戦を終えたようにも見えるが、本人は「今回の登板を反省しながら、自分のなかに課題をしっかりと置きながら、残り少ない時間をやっていくだけかなと思います」と前を向く。
自身の状態を試しながら、ふだんと違うボールの感触を確かめながら、そしてこの日はいつもと違う相棒・梅野とコミュニケーションを取りながら…。すべてが28日(水)からはじまる“本番”に向けた過程にすぎない。
「“自分ができること”っていうのを見つめ直しながらやっていきたい。マウンドに上がった時にゼロで抑える。それがチームにとって大事なことだと思うので、それができるようにしっかりと準備していく」
育成から這い上がり、チャンピオンチームのエースに登り詰めた男。国際舞台も2017年のWBCで経験済み。“やるべきこと”は分かっている。
金メダルを目指すうえで、欠かせない投手陣の柱の復調。次回の登板で周囲の不安を一蹴するような姿を見せてくれることに期待したい。
文=尾崎直也