ニュース 2021.07.27. 22:45

日本が初戦で対戦!ドミニカ共和国ってどんなチーム?

無断転載禁止
カリビアンシリーズでプレーするドミニカ共和国のメルキー・カブレラ<写真=カリブ野球連盟>

名選手を輩出する故に…


 6月の世界最終予選でオリンピック(五輪)出場最後の椅子を奪ったのが、東京五輪の初戦で日本と対戦するドミニカ共和国(WBSCランキング7位)だ。

 意外なことに、五輪出場は1992年バルセロナ大会まで遡らなければならない。この時は出場8チームが総当たりで行う予選リーグで2勝5敗の6位に終わり、決勝トーナメントを前に敗退した。日本代表との一戦では、0対17という記録的な大敗でコールド負けを喫している。

 公開競技だった1984年ロサンゼルス大会まで遡っても、同大会では予選リーグ3戦全敗に終わり、これまでの五輪では出場2度で通算2勝8敗と、メジャーリーグに幾多の名選手を輩出しているカリブの野球大国の姿は見えてこない。

 その主な要因は、この国の野球の基本構造が「メジャーリーグの下請け工場」というべきものになっているから。つまり有望選手は、世界最高峰のプロリーグでの成功を夢見て若くしてプロへ進み、五輪への出場を指向していない。メジャーリーガーの参加が認められていない現在、五輪もまた、ドミニカ共和国の選手にとって他の国際大会同様、マイナーリーガーの見本市のひとつでしかない現状がある。

 ロースター24人のうち、メジャーリーグ経験者は過半数の13人。しかし、トップリーグでの実績が十分にあると言えるのは、ブルージェイズ時代に2度本塁打王に輝いているホセ・バティスタとジャイアンツ時代に打率リーグ1位(規定打席数に足りず、ドーピングのよる出場停止処分中ということもあり首位打者は辞退)となったメルキー・カブレラくらいなもの。

 その上、メンバー中8人がウインターリーグのみのプレー、バティスタは現在、夏も冬もプロリーグでプレーしておらず、現時点において、プロリーグでプレーしているのは15人というメンバー構成だ。「格」から言えば、侍ジャパンの相手ではない。

 最終予選で4割を超える打率を残し、五輪本番ではサードを守ると予想されていたディエゴ・ゴリスが大会直前にドーピング検査で陽性反応を示したため、メンバーの入れ替えがあったが、野手ではなく投手を補充したところに、このチームの弱点が見え隠れする。


投手陣はNPB組が中心に


 メジャーリーガーの参加がない中、国際大会では世界第2のプロリーグである日本のNPBでプレーする選手の存在が大きくなるのだが、投手陣を見てみると、先発は「日本組」が担う可能性が高い。

 メジャー経験はないものの、2018年から3年間、巨人の先発投手として通算17勝を挙げ、今シーズンも5勝1敗、防御率2.31という数字を残しているC.C.メルセデスが軸となることは間違いない。侍ジャパン相手の開幕戦の先発マウンドには、このメルセデスが上る。

 そして、彼と同じ巨人でプレーし、昨シーズンは8勝、今シーズンもここまで5勝を挙げているエンジェル・サンチェスも先発としての期待がかかる。加えて2015年から3シーズン中日でプレーし、計17勝を挙げたラウル・バルデスも先発陣の一角を占めるだろう。現在、彼は所属先のないフリーエージェントだが、42歳で迎えた昨冬のシーズンもウインターリーグの強豪、トロスの先発投手としてマウンドに立っていた。

 リリーフ陣には、ウインターリーグで「0.61」の防御率を残し、現在レッドソックスの2Aポートランドでリリーフを務めている24歳のプロスペクト、デニイ・レイエスがブルペンに控えている。クローザーには、メジャーでは1セーブしか挙げていないが、マイナーやメキシコ、ウインターリーグで通算187セーブを記録しているホセ・ディアスが収まるもだろう。

 しかし、現在はフリーエージェントではあるものの、ウインターリーグで防御率1.42の好成績を収め、カリビアンシリーズ出場も果たしているメジャー通算103試合のベテラン、ハン・マリネス、もしくは通算4シーズンのメジャーではクローザー経験はないものの、2014年にプレーした韓国リーグのキア・タイガースでは20セーブを記録した38歳のベテラン、ハイロ・アセンシオの起用もあり得そうだ。


中軸担う元メジャーリーガーに注目


 打線での注目は、やはり2人のビッグネームになる。

 メジャー通算15年で1496安打、344本塁打を積み上げたホセ・バウティスタは、2009年と2017年のWBCにも参加するなど、国際大会経験も豊富だ。今回も中軸を期待されるが、2018年を最後に表舞台から姿を消しているというブランクと、40歳という年齢が気がかり。ただし、ドミニカではアメリカでのプロ生活を終えた選手がプレーするローカルリーグが複数あり、体を動かす機会は多い。彼がどの程度、高いレベルでのプレーの順応性を取り戻しているかが、チームが目標に掲げるメダルへのカギとなる。

 そういう意味では、2019年まで15シーズンにわたってメジャーでプレー、通算144本塁打のメルキー・カブレラの方が怖い存在かもしれない。彼も無所属状態だが、ウインターリーグでは3割をマークしている。

 今年36歳になったが、メンバー入りした6月の世界最終予選の決勝戦では、ベネズエラに3点を先制された後、3回に追撃の2ランを放ち、チームを逆転勝利に導いた。バウティスタがロースター入りしたため、予選での指名打者から守備につくことも求められるだろうが、この冬に参加したカリビアンシリーズでも守備についているので問題はなさそうだ。

 世界最終予選の戦いぶりを見ると、2015年に巨人入りしたものの5試合の出場に終わり、腰痛のためシーズンの大半を二軍で送ったまま退団したフアン・フランシスコが打線のキーマンとなる。メジャーでのプレーは、2014年にブルージェイズで106試合に出場したのが最後だが、通算6シーズンで48本塁打を放った打力は健在で、世界最終予選では3試合で打率.385、5打点を挙げた。

 最終予選の成績を見れば、脇を固める存在のグスタボ・ヌニェスが最終予選で打率.417の高成績を残しており、オリンピック本番までこの調子を持ち越していれば得点力はグッと増すだろう。

 また、レッドソックスのマイナーでプレーするホアン・ミエセスはこの予選で2本塁打を放っており、その意味では今回のドミニカ打線はどこからでも点を取れる怖さはある。予選ではレフトのスタメンで出場していたミエセスはバティスタが加入した関係で控えに回る可能性もあるが、バティスタの調子次第では、スタメンに名を連ねる可能性もある。

 また、若干20歳ながらマリナーズのプロスペクトとして期待されているフリオ・ロドリゲスも粗さが目立つものの、調子にのせてしまうと厄介な存在だ。ベテラン勢では、36歳で現在はウィンターリーグでしかプレーしていないものの、メジャー12年で166盗塁を含むプロ通算576盗塁を残しているエミリオ・ボニファシオの足も侮れないかもしれない。

▼ 予想スタメン
1番(中)ボニファシオ
2番(右)ロドリゲス
3番(左)カブレラ
4番(指)バティスタ
5番(一)フランシスコ
6番(三)メヒア
7番(二)ヌニェス
8番(捕)ボールドウィン
9番(遊)グスマン

<投手>
15 C.C.メルセデス(27)※巨人
23 ラモン・ロソ(25)
28 フニオル・ガルシア(25)
31 ルイス・カスティージョ(26)
33 ハイロ・アセンシオ(38)
37 ハン・マリネス(32)
38 エンジェル・サンチェス(31)※巨人
39 ダリオ・アルバレス(32)
41 デニイ・レイエス(24)
56 ラウル・バルデス(41)※元中日
70 ホセ・ディアス(37)
79 ガブリエル・アリアス(32)

<捕手>
7 チャルリエ・バレリオ(30)
16 ロルダニ・ボールドウィン(25)

<内野手>
2 グスタボ・ヌニェス(33)
3 イエフリ・ペレス(30)
6 エリック・メヒア(26)
10 ヘイソン・グスマン(22)
34 フアン・フランシスコ(34)

<外野手>
14 メルキー・カブレラ(36)
18 フリオ・ロドリゲス(20)
19 ホセ・バティスタ(40)
36 ホアン・ミエセス(26)
64 エミリオ・ボニファシオ(36)

文=阿佐智(あさ・さとし)

ポスト シェア 送る

もっと読む

  • ALL
  • De
  • 西